28日はマイルスの13回忌だったということで、今回のお題は、「Milesを聴け!」
マイルス・デイビスは、音楽スタイルがじつに多様に変化していった人。
だから、ファンと一口にいっても、どのあたりのマイルスをよく聴くかは、人によってずいぶんちがってると思います。
また、長く聴いてる方はきっと、好きなマイルス・よく聴くマイルスに、変遷があるにちがいない。
逆に、あまり聴かない、聴いても楽しくない(笑)マイルスも、人それぞれあったりするかも…(;・∀・)
私にとって、かつてはあまり聴かなかった、聴いても全然わからなかったのは、いわゆるエレクトリック・マイルスの後期の作品。
Get Up With It(1972)
Dark Magus(1974)
Agharta(1975)
Pangaea(1975)
といったあたり(厳密には、それぞれにもちがいがあるけど)。
でも、あるとき、クルマの中とか文章を書いてるときとか料理を作ってるときとか、ほかの作業をしてるときのBGMとして、これらの作品を聞くようにしたんです。
そしたら、意外と、気持ちよくて(w
むずかしいこと考えず、深く感情移入もせず、わりと漫然と聞き流してみたら、なぜか異様に心地よかった。
これらの曲を理解してるとか、特に深い感銘をおぼえているとかいうのとはちがうのですが、今は意外とこれらの作品が好き☆
「好き☆」とかいうような曲調でもないんですが(笑)、「好き☆」なんです。
こうやって、苦手なマイルスをすべて克服し、全マイルスが心地よく響くようになったとき、真のマイルスファンになれるのであろうか…そんなことありえるのか…旅は続く。。
最近、自伝と照らし合わせてみて、この時期のマイルスが、何をやろうとしていたのか、「理屈」は知るようになりました。
漫然と聴くと、なぜ気持ちよく聴けるかも、少しわかりかけたか…。
以下は、かなりマニアックな話となります。自分のためのメモのつもり。
前衛作曲家シュトックハウゼンの影響のこと。
1969年、マイルスは、「In A Silent Way」、そして「Bitches Brew」という記念碑的作品を発表。
その後、より若い聴衆に聴いてもらおうと、「Big Fan」(1969)、そして「On The Corner」(1972)
を作る。
しかし、実際に大ヒットしたのは、ハンコックの「ヘッドハンターズ」。
マイルスは、レコード会社がちゃんと宣伝しなかったからだと、むかつく。
女性問題で警察沙汰もあり、ランボルギーニで事故を起こし、コカインの使用量も増え、体調が悪化して言った時期。
生活面・健康面での問題とはべつに、音楽的には、シュトックハウゼンにのめり込む。
シュトックハウゼンは、ドイツの作曲家。戦後ヨーロッパ音楽の主導者。超難解な前衛音楽家。
ふつうの意味での音楽の概念を、完全に崩壊させた人。私には紹介する知識も能力ないです。
→松岡正剛氏の解説。
車の事故で休んでいる間に、シュトックハウゼンの音楽に対するコンセプトを、さらに勉強した。
で、ひとつのプロセスとしてのパフォーマンスというアイデアに、どんどん引かれていった。
それまでも連続して輪をなすように作曲してきていたが、シュトックハウゼンを通じて、八小節から八小節へといった類の演奏は、もう二度とやらないということを確認した。
歌や曲を完結させるんじゃなく、どこまでも連続させたかった。
当時はオレがあまりにも多くのこと、新しいことをやろうとしすぎていると感じている連中もいた。そいつらは、現状にとどまって成長をやめ、新しいことに手を出すべきでないと考えていた。
だが、オレはそういうわけにはいかなかった。シュトックハウゼンを通じて、音楽が削除と付加の過程であると学んだ。
ドラムスとリズムが最高に強調されて、ソロはあまり重視しない、分厚いアフリカ―アメリカ的なグルーブ、重みのあるアフリカ的なスタイルにバンドはまとまっていった。ジミ・ヘンドリクスと仲良くなって、ギターがブルースの真髄まで近づけるとわかって以来、俺はそんなサウンドを求めていた。
曲のひとつのコードだけで通して、ちょっとした簡単なリズムを全員がマスターするようにした。コードを決めて、そのバリエーションやクロスリズムを活用し、五分間もたすようにする。例えばアル・フォスターが四拍子で叩くと、エムトゥーメは八分の六か四分の七で演奏し、ギターはまた異なった拍子か、まったくちがったリズムを演奏するという具合。たった一つのコードから、こんあふうにとても複雑なことをやっていた。
音楽ってやつは、とても数学的なんだ。
オレは、こうしたことすべての上や下や中を通り抜けるように吹き、キーボードもベースも、どこか別な空間で演奏するようにする。だから誰もが、他のメンバーがやってることに、ちゃんと注意してなくちゃならなかった。
ピートは、オレが欲しかったヘンドリクスやマディ・ウォーターズみたいなサウンドを、ドミニクはアフリカ的なリズムを出していた。もし全員そのまま続けていたら、もっとすばらしいバンドになっただろう。だが、うまくはいかなかった。オレの健康状態が思わしくなかったからだ。
音の構成の話に終始してることに注目。
合奏というか、それぞれの楽器のサウンドの独立・対立など、相互の管理の話ばかり。
サウンドの中身を情緒的に語る言葉がない。
「ここにどんな思いが込められているか」「何を聞き取るか」というような方向とは、まったく違った次元の発想に基づいている。
カインド・オブ・ブルーと同じ聴き方ではまったく歯が立たないばかりか、Bitches Brewとさえちがっている。
また、ある目標を目指して高まっていくような、起承転結を持った音楽でない点も注意。
シンフォニックではなく、ポリフォニックに。
演奏の話ではなく、ほとんど倫理や、生き方の問題のようにすら読める。。
深く考え込まず、感情移入もせず、自分自身の作業にとらわれながら、並列的に存在し、なお相互に「気にしあう」ありかた。。
オーネット・コールマンが言っていた、それぞれに独立して演奏される三種類か四種類のことがあるという意見が本当で、バッハもそんな作曲法をしていたことがわかった。
それはすごくファンキーで、すばらしくなりえるものだった。
overQさん、こんにちは。
livedoorが夜になるとめちゃくちゃ重くなって、自分のblogも見られない状態です。(泣)
1970年代以降のマイルスは、拒否していたこともあり、今回のoverQさんのレビューはとても嬉しく興味深いものでした。
シュトックハウゼンとマイルスの結びつきは何となく知っていたのですが、今回のoverQさんの説明を受けて、とてもよく分かりました。(感謝!)
電子音楽は、二手に分かれている様に思います。
◎一方は、恐るべき忠実さでアナログ世界を具現化する道。(シンフォニー等の演奏)
◎もう一方は、音楽の3要素「リズム・メロディー・ハーモニー」からの脱却。音楽の記号化。
どちらもここまで来てしまうと、何もこれを音楽と呼ばなくてもいいのではないかとさえ思います。
太古、呪術、祈りから出発した音楽は、長い年月を経て、行き着くところまでいって、また元に戻っていったのでは?と思ってしまいます。
マイルスの追求した音楽がどこまでもどこまでも高みへと上り過ぎて、手の届かない所に行ってしまったという思いがします。
>overQさんの
>「むずかしいこと考えず、深く感情移入もせず、わりと漫然と聞き流してみたら、なぜか異様に心地よかった。」と。
そんな幸せな胸中に私も浸りたいです。聴かなかったこの時代のマイルスを出してきて聴いてみようかな・・・と思いました!!
TB企画のお陰で、overQさんの素晴らしいレビューを読ませてもらえて幸せです。ありがとうございます。
日々進化していき、どうもつかみ所がありません。
シュットクハウゼンとマイルスの
シュトックハウゼンは菊地成孔(ジャズサックスプレイヤー)が
『歌舞伎町のミッドナイトフットボール』に書いていたので
気になっていました。
なるほど、こういう音でしたか!
勉強になりました。
それにしてもoverQさんって絵は上手いし文章は天才的だし、
広範囲にわたって知識は豊富だし、ハイジには詳しいし、
妬ましいほどの才能ですね。
私も精進したいと思いました。(といいつつ、根がぐうたらなんで無理っぽい)
overQさん、LINさんのところでもお願いしてきたのですが。
overQさんのお知恵も拝借したく思い参りました。
私が最初にマイルスを知ったのは、シンディーローパーとのタイムアフタータイムでした。
あとは、マイルスのベストアルバムや、
マイルストリビュートを聴くといった邪道ぶり・・・
まだまだ到底その深みには辿りつきません。
初心者としてのおすすめは何がよろしいのでしょうか?
前置き長くなりました。(やっと、本題)
ただいま、デトロイト出身、または、デトロイトにゆかりのあるビッグバンドジャスアーティストを探しています。
イベントと招聘しようと思っているのですが・・
いろいろぐぐってはみたのですが、どうにも実感がわかなくて。
おりしも、マイルスもデトロイト出身とのこと。
あまりマニアックでなくエンターティメントでいけるアーティストっていらっしゃるのでしょうか・・
私的には、マシューハーバート&エゴラッピンをやりたいのですが・・・
そういうわけにもいかなくて。
どうか、ご指導、願えたらと思います。
overQさんのblogをおかりして恐縮ですが、
ワルツさんも、LINさんも、どなたか、的確なアドバイスを!
どうぞよろしくお願いいたします。
>picoさんへ、
overQさん、横レスすみません。
私は、マイルスが、モダンからモードへ移る前の
『ラウンド・アバウト・ミッドナイト+4』
なんか初めに聴くのが分かりやすいんじゃないかな・・と思いますが。
まだ、モダンジャズの形をとってるから、
テーマ→アドリブ回し→テーマ再生
という形もしっかりしてるし。
でも、モダンにちょっと飽き飽きしてた頃で、新しい実験的なモードの雰囲気もかもし出してる・・(笑)
曲目も標題の「ラウンド・ミッドナイト」や「オール・オブ・ユー」「バイ・バイ・ブラックバード」とバラエティーに富んで飽きさせない。マイルスのミュートを使ったトランペットもいいです。ジョンコルトレーンのサックスもレッドガーランドの粋なピアノも。
とりあえず、聴きやすい!!
↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005ATI0/qid=1096545850/sr=1-19/ref=sr_1_2_19/249-3299420-7458727
もう1枚、絶対聴きやすいのは、
キャノンボールアダレイ(as)のリーダーアルバムになってるけど、実際はマイルスのもの、
『 サムシン・エルス』
枯葉はマイルスのミュートをつけたトランペットが最高。枯葉といえば、これを指すくらい名演です。
↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000228WGU/qid=1096546600/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/249-3299420-7458727
overQさんちなのに、いっぱい書いてすみません。
Posted by:すみません。picoさんのきいてらっしゃるデトロイト出身のデトロイトビックバンドじゃなかったです。
早とちりしてしまいました。ごめんなさい。
overQさんもすみません。許してね。
Posted by:>picoさん。
ここはどうでしょうか。日本人のバンドです。エゴラッピンに近い感じ。
The Old southern Jug Blowers
http://www.rocoz.com/old-southern/
20年代のジャズ、ジャズじゃなくて、ジャグと呼ばれてた時代のものをやってるらしいです。
デトロイトなのか、ニューオーリンズ系なのかは、ちょっとわからないですがw
話によると、メンバーの人数が多すぎて、長期のツアーとか回るのは難しいらしいですが、一発勝負ならいけるんでは。
まずまず、エンタメ性もある…はず(汗
力作の解説ありがとうございます。Milesがその辺のJazzmenと違い構築、構成力の人だった事が良く判りますね。
>あまり聴かない、聴いても楽しくない(笑)マイルスも、人それぞれあったりするかも…
これは仕方ないですねー。なんせ幅が広すぎますから。
しかしこの4枚をBGMに料理しながら聴き流すってタダ者ではないですね。めっちゃCoolだと思いますよ:P
◆ワルツさん。
livedoorも、jugemも、なんか、このところ、えらいことなってますね( ;´Д`)
さて、シュトックハウゼンとマイルス。
すごい組み合わせですw
シュトックハウゼンは…なかなか困りますよね(笑)
音楽というより、セミとかコオロギとか、トイレを流したときの音とかが、ライバルのような存在です…って、怒られるか…。
文学や美術では、19世紀末から20世紀始めに訪れたモダニズムの、ある種の思潮。シュールレアリスム、未来派…ダダなんて、パンクも真っ青の、まったく破壊的なものでした。
音楽では、録音技術が発達するのを待って、遅れて現われた感じです。
音だけ聞いてると、破壊ばっかりが目立ちますが(笑)、シュトックハウゼン、音を作る側、作曲家や演奏者にとってはやっぱり決定的に大きな存在のようですね。
ロックに押され、ポピュラーミュージックの王座を奪われつつあったマイルスにとっては、あるいは、すがるべき権威であったとも、意地悪な見方が出来そうな…。
>太古、呪術、祈りから出発した音楽は、長い年月を経て、行き着くところまでいって、また元に戻っていった
ほんと、その通りですよね。いちばん頭でっかちな部分でそうなっていったのが、不思議だし、興味深くもあります。
>overQさんもすみません。許してね。
お気になさらず…
ワルツさん
しっかり、メモりました!!!
ありがとーーーーーーーございます。
そして、overQさんも。
ご紹介してくださってありがとうございます。
デモ、ききました。よいですね〜。好
でも、私の質問の仕方悪かったのでした。すみません。
エゴラッピンより、もっとエンタメで、
できれば海外から招聘するといった方たち。
予算は、7千万ぐらいはでるもようなのです。
例の万博のいっかんなのです。。。
開催地がデトロイトと姉妹提携を組んでいてそのからみで。こういうことになってます。
本当にすみません。ありがとうございました。よろよろ。
◆LINさん。
シュトックハウゼンを聞いてから、トイレに行って、水を流すと、シャーッという音が、シュトックハウゼンの曲のように聞こえました(核爆
いろいろおほめいただき、たいへん恐縮です(滝汗
絵は、いつもそうとう苦労して書いております。いろんなソフトを使って描く技法を開発したのですが、センスも熟練も無くて…(´ヘ`;)
文章はだいぶ年季を積んできたんですが、技術が立つと中身がなくなり、言いたい中身のあるときは表現が見つからず…難しいもんです。
知識は…年の功ですね。きっぱり断言できます。年寄りはみな、トリビアの泉…
思えば、自慢できそうなのは、ピンクレディーが踊れることだけですか。。
Posted by:◆JMさん。
またまた、長々と書いてしまい、恐縮です…しかも、大半は、マイルス自伝からの引用…(汗
シュトックハウゼンとマイルス。
ネットで調べてると、松岡正剛氏がこの点に注目してて、やっぱり重要なのかなと思ったりw
In A Silent Way録音のときのハンコックの話も、書こうと思ったんですが、長くなるのではしょりました。
体育館みたいなでっかいスタジオで、それぞれの演奏者が離れた場所に配置され、マイルスが各ミュージシャンの間をゆっくりと歩き回る。
耳打ちするように指示を与えていくが、マイルスが何を言ってるのかは、当のミュージシャンにしかわからず、ほかのメンバーは非常に気になって、実につらい思いをした…という話。
サウンドを空間的に配置する、というのが、音響空間だけではなく、物理空間においても実践されてたこと。。やりすぎ。。w
Posted by:◆picoさん。
なるほど、もっと、思いっきりメジャーどころでいいわけですね。
7000万か…私が出たいw
old southernさんは、友だちの友だちなので、ちょっと売り込んでみました(笑)
デトロイト、ビッグバンド、集客力大。
うーん。新しいものを聞いてないので、私にはなかなか思いつかんです。
JMさんのところなど、音楽系のブログでないと、情報は集まらないかなぁ。。
こんばんわ。TBありがとうございます。解説抜きで「だって好きなんだもん」という私のエントリに比べ、なんて大作なんでしょう。そしてわかりやすいです。私でも理解できました。
あれ?よく見かけるoverQさんて、ここの管理人さんだったんですか??あきゃー、ごめんなさい。はじめまして、きみ駒です。(遅いっちゅーねん)
70年代以降のマイルス、私もあまり聴かないのですが、料理してる時に今度かけてみます。
きみ駒さん、こんにちは。
LINさんとこやワルツさんとこや、いろんなところでお会いしておりますね。
最近さとったのですが、ハンドルネームとブログの名前は、きみ駒さんところみたいに、最初につけるとき、同じようなものにすべきですよね。わかりやすいもの。
いまさら気づいても、全然手遅れですが(笑)
私も、じつは、どなたがどのブログ様だったか、けっこう混乱します(爆
ブログも、名前ではなく、デザインでおぼえてるところも多くて、デザインが変わると、どこだったのかわからなくなったり…w
最近、ひそかに、ハンドルネーム―ブログ名リストを作りました。
overQさんのエントリと皆さんのコメントが指標になっていてとても勉強になりました。
シュトックハウゼンのあとにマイルスを聴き始めたので、僕はだいぶ見当違いの思い込みがあると思います。一度年代順に聴いてみようかと思い始めました。
yamatatzさん、こんばんは。
自伝によるとマイルス・デイビスがシュトックハウゼンを熱心に研究し始めたのは、「On The Corner」の前あたり。
ただ、それ以前に、マイルスが経てきた音楽的な変遷、彼なりのファンクの解釈が、シュトックハウゼンと近い位置まで、彼を運んできていたようです。
マイルスとシュトックハウゼンという組み合わせ。
たいへん刺激的ですが、かなり難しい問題をふくんでて、私にはちょっと手が届かず、引用ばっかりになってしまいました(w