「マンガ、アニメ、ゲームにおいて、日本は世界のトップクラス。リーダー的存在だ」とすっかりいい気になっていた。「もはや世界から学ぶことなど何もない。むしろ世界が日本に学ぶ時が来た」
そんな驕り高ぶって浮ついた気分のところにドカンと一発喰らったのが、本書Understanding Comicsである。ここまで洞察力・分析力のあるマンガ論は、マンガ先進国日本でも読んだことはなかった。
――岡田斗司夫
漫画という表現。どんな仕組みで、意味を伝え、お話を物語っているんだろう?マンガの面白さは、その表現の仕組みから生まれてるはず。
なのに、マンガ作品を論じると、あらすじやキャラクター紹介になったり、時代状況からの解読になったりがち。マンガ自体になかなか到達できない。
絵を論じても、絵画を論じるみたいで、マンガの独自性をうまくつかめない。
マンガの原理って何だろう?
マンガをあまり読まない人が、大人になってから読もうとすると、とても苦労するという。不思議だなと思う。
だけど、自分がどうやってマンガをすらすら読めているのか、そのメカニズムを意識することができない。言葉を話すのと同じように、子供の頃から慣れ親しんで、体に染み付いている。かえって客観的に見ることができないんです。
夏目房之介さんの本など読むと、マンガの原理論みたいなものが、すごく重要だし、面白いものだとわかってくる。
個々のマンガ作品を語る場合でも、マンガの仕組みを見ていかないと、作品の核心をとらえられない。
マンガを描くにしても、新しい表現の可能性を探る上で、原理を考えるのはきっと有効。手塚治虫だって、そうやってきたはず。
このような研究の成果は、きっと日本で達成されるという予想に反して、アメリカから「マンガ学」(原題 Understanding Comics -The Invisible Art-)という決定的な本が出現しました。
この本自体が、マンガで書かれています。
たいへんな名著です。教科書として長く読まれていくべき本ともいえそう。
マンガの原理について、根本教義は説かれてしまいましたw あとは、各論、あるいは個々の作品について語ればいいと思えるほど。
じつは、この本(日本語訳)、98年の出版。意外と知られてないんじゃないでしょうか。もっと知られていい本だと思うんですが。
マンガに興味がなくても、面白く読めると思います。メディア論ニホン論としてもすぐれてます。表現一般に関わる問題も、じつに鮮やかな手並みで扱われてて、ほれぼれ。
マンガが読める、ということは、人間の認知能力と深く関係してるはず。でも、どんなふうにかがよくわからない。その点がとてもわかりやすく解説されています。
マンガの表現はじつに多種多様ですが、そこから基本的な原理を見出す手際のよさ。それを発展させて、マンガ全体・表現行為全体を、未来の可能性まで含めてとらえてしまう。

左のようなでたらめの絵でも、目をつけるとたちまち顔に見えてくる。
ニンゲンの認知力が、初めから備えてる機能。



でたらめな三つの絵も、並置すると、そこに何らかの「つながり」を見出そうとする、ヒトの認識。
こうした素朴な事実から出発して、シンプルだけど斬新な見方を次々に提示。いろんな領域にざくざく踏み込み、やがて、壮大なスケールの話にまで到達します。
高度な話なのに、すごくわかりやすいです。理論的な話なのに、全体の構成は物語のようになってて、読後感は感動的!
●Understanding Comics(英語版・原著)
■scottmccloud.com…作者のホームページ。マンガも読めます。
読みたくなりました!
ご存知かもしれませんが、今年の3月にICC(NTTインターコミュニケーション・センター)で「まんがの文法を知るために」というシンポジウムが行なわれました。いままで漫画家や編集者が、おそらく読者はこう読んでいるであろうと考えて、経験則でやっていたコマ割りなんかを、被験者にいくつかの漫画を読んでもらって、その目線の動きをデータ化して実証してみようという試みでした。とりあえず、経験則は正しかったという結論。もっとも、夏目房之介さんいわく、データ量があまりに少なすぎるんで、これだけでは全然充分じゃないとのことですが。。。
このシンポジウムのなかで、認知モデルを研究されている学者さんが、夏目さんの用意した少女漫画(名前を失念)を読んで、「さっぱり、わからなかった」と発言されていたのが印象に残ってます(^^
Posted by:この本、ほんとにうまく書けてるんですよ。
房之介さんは、きっと、この本にすごく嫉妬してるにちがいないと思いますw
マンガをどのようにして読んでるか。
ほんとに、興味深い問題です。
読んでる当人が、どんなふうにして読んでるか、あんまりわかってません。
描く側の立場でも、読者がどんなふうに読んでるかがよくわからないんで、せっかく実験的なことしても、わかってもらえてるのか、心もとないらしいです。
読み方の個人差もきっとあるだろうと思うんですが、それがどの程度のものなのかさえ想像もつかない。
マンガは読者層がめちゃくちゃ広いので、いろんな読まれ方がしてるし、またそこに共通の読まれ方もあるはずなのですが、誰もその実体を知らない。
>少女漫画(名前を失念)を読んで、「さっぱり、わからなかった」と発言されていたのが印象に残ってます(^^
冬野さほ、かなぁw
一部の少女漫画の視線誘導は、ほとんど暗号と化しております。読むというより、解読。
たんに読む順番がわからないというより、絵と絵のつながりや隔たり方がつかめない。それが、連続して、リズムをなしていて、そのリズムをつかむことが、その作品を「読む」ということなんですが、そこまで到達するのは、はるかな道のりです。Rejoyce(笑