AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 三十三夜 第26夜 「病床一万尺」

三十三夜 第26夜 「病床一万尺」

written by overQ
June 2, 2004

前からの続きの話になりますが…
今日、友だちに、丸太町今出川の話をしようすると、
ああ、それ、聞いたことある
と言われました。

何ですとー??
どこで聞いたのじゃー?

たしかに郵便局のバイト同士で、面白がって、この話をしたことはあります。
でも、すでに一部では都市伝説化しているというのは、いくらなんでも…。
しかし、友人は、誰に聞いたか思い出せないし、聞いたことがあるような気はするが、思いちがいかもしれないという、あいまいな返事。
むむう。。

都市伝説の起源は、はっきりしているものもある(「死体洗いのバイト」の元ネタが大江健三郎「死者の奢り」のように)。
でも、起源のわからないものも多いらしい。
さっき見たサイトでは、「口裂け女」は1979年に岐阜から広まったが、原型はわからない、とのこと。また、ポマードが嫌いとか、ツイスト「燃えろいい女」を六回歌うと現われるとかいう尾ひれも、どの時点で付け加わったのか。では、世良正則は口裂け女と何度くらい会ったのか。江戸時代にも類話があるけど、関係は不明。

都市伝説の起源。
スタンド・アローン・コンプレックス説、というのは、どうでしょうか。
孤立した場所から、同時多発的に発生する。同じような話なんだけど、相互に影響されたわけではない。それぞれが、オリジナルとして、発生しているのに、つき合わせてみると、似たような内容を持つ、と。笑い男事件みたいに。
孤立集合体。これがいちばん気味が悪いかもしれません。
多くの人が個別に同じことを思いつく…ということは、でも、案外、時代の中でよくあることなのかも。共同幻想っていうやつですか。

丸太町今出川。平行する通りの交わる場所。
アイデアは、ほかの人が思いついたとしても、ぜんぜん不思議じゃないですが。
ただ、京都には平行する通りの組み合わせはいっぱいあるのに、あえて丸太町+今出川で一致していたら…なんか不気味です。実在を疑えなくなる。

今日の三十三夜は「病床一万尺」。正岡子規「病牀六尺」とアルプス一万尺のキメラみたいな題名でございます。またネコちゃんのイラストと内容がまったく無関係でございます<(_ _)>

cover
病床一万尺

病室には大きな窓があった。
晴れた日には遠くの山と
大きな青い空が見えた。
近くの電線には
いろんな鳥が来てとまる。
眺めるだけでも
飽きることがなかった。
目を閉じると鳥の心になれた。
電線から病室を眺めている。
飛び立つと総合病院の
弓形の建物が俯瞰できた。
屋上で車椅子の老人が
看護士に何かを話しかけている。
私という鳥の名前を知りたいらしい。
私はカリョウビン。
遠い南天からやってきました。
天高く上昇し見渡すと
地平線は緩やかな弧を描く。
体の力を抜き
風に流されてみる。
私を中心に世界が
スローモーションのロンドを舞う。
回転しながら目を開くと
病床は一万尺にも感じられた。



廊下のほうが騒がしい。
定期検診の巡回だ。
どすどす足音が近づいてきて
部屋の前で立ち止まる。
荒々しくドアが開けられ
鬼たちが入ってくる。
どす黒い金棒を床に突き立て
すさまじい振動で
私には眠ったふりも許されない。
頭頂に突き出した角は
ねばねばした液でぬれている。
いやな体臭が部屋に満ちる。
検診と称して
鬼たちは金棒を振りおろし
私の手足をめちゃくちゃに打ち砕く。
骨と血がはじけとび
しぶきが壁を赤く染める。
背中に少し生えかけた翼の芽を
無造作にもぎ取りバケツに捨てる。

天使の病だった。
地獄では業病と恐れられる。
角の代わりに私の頭上には
銀色に光るリングが浮かび出た。
鬼たちはこれを直視できない。
私は病院に送られ
毎日つらい治療を受けている。
病状は一向に改善しない。
鳥になる夢をいくつも見た。
禁じられた夢だった。
上昇するものは不吉だった。
つながれてはいたが
私は浮かんだ。
窓はないのに
私には空を見ることができた。
子供の顔をもつ鳥たちが
いくらでも集まってきた。
もう誰もとめることはできない。
私は天使なのだ。
鬼の殻を脱皮し
元いた場所に帰るのだ。

私は飛んだ。
夜だった。
山を一跨ぎする巨人のように
そびえたつ鉄塔の群れ。
巨大な送電線は
暗い稲妻を発しながら
人の罪を運んでくる。
工場は業火で赤々と光っていた。
山が鳴るような
とんでもない音が響いてくる。
夜は太陽のない世界。
昇っても昇っても
高みに達することがない。
見ると足首には
長い鎖がつながれている。
鬼たちが地上で大笑いしている。
凧のように引っぱり
上昇する私を
きりきり舞いさせる。
星ひとつない空と思っていたら
黒雲に覆われていたのだ。
人の罪を焼いて出た
胸糞悪い煤煙。
一息吸い込むだけで
私は気を失い
同時に飛翔の能力は消えはてる。

気がつくとまた
地下の病室にいた。
私は目を閉じ
窓を開いた。
白いカーテンがふわりとふくらみ
いい風が入ってくる。
快晴だ。
あたたかくて
大気は澄んでいる。
また鳥になる夢を見た。
もう病気でもかまわない。
鬼たちは私を愛したが
私は鬼を愛することはできない。
地獄は私のすまいではない。
天があることは証明されていない。

私は飛ぶ。



technorati
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.overcube.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/136

このリストは、次のエントリーを参照しています: '三十三夜 第26夜 「病床一万尺」' , AZ::Blog はんなりと、あずき色☆.

関連エントリー