Kは、長いあいだ、国道から村に通じる木橋の上に立って、あてどない虚空を見上げていた。――フランツ・カフカ「城」隅のほうからフリーダが、なかば寝ぼけた声で、「Kを眠らせてあげて!この人の邪魔をしないで!」と叫んだ。
――フランツ・カフカ「城」
カフカの長編で、主人公はKと呼ばれています。kafka というのはカラスのこと。だから、カフカのKは、カラスのカー。ドイツ語のKをいちばん見事に発音するのは、日本のカラスだそうです。エジプトでは魂のこと。
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昨夜は中島らもさんがなくなって、たいへん驚きました。享年52歳。途中でぽっきり折れちゃった気がして、無念さで怒りがわいた。いつも、この人にはまだもっと面白いことができる、と信じさせてくれるところがありました。しかも、もしそれを実現しなくても、それはそれでかっこいいと思わせるところが。でも、あの死に方だと、なんだか、そういうのは全部、幻だったと言われたみたいで、とても、悲しかったんです。五十すぎても、この人には夭折という言葉が使える。
カー様ことカフカは40歳で死にました。結核でした。
作品のほとんどは、未完成の草稿。数冊の薄い本を出版したけど、ほとんど無名。
死ぬときはいろいろ考えたと思います。
結核だし若かったので、ゆっくり死んだ。弱気になるだけじゃなく、恐怖も諦観も余裕も絶望も虚無も、何通りも経験しながら死んでいった。生きることの半分は死ぬことだった。
作品には圧倒的な自信もあり、まったく無価値だとも思っていたようです。
死ぬ間際、草稿ノートを友人に託し、燃やしてくれと頼みました。
その真意をめぐって、さまざまな推理がなされています。本気なのか、自信の裏返しなのか。
友人マックス・ブロートは、カフカの遺志に反して、草稿を整理編集し、出版しました。ブロートがそうすることを、カフカは知っていたとも言われています。
カフカは死後の名声を知っていたかもしれません。業病で若死にすることも、作品の中で先取りしていました。
予言が当たることを知っていましたが、予言には何の根拠もない、馬鹿げたものだとも知っていた。
カフカには肖像写真がたくさんあります。赤ん坊の頃から死ぬ間際まで。
たいへん不思議なのですが、写真の中のカー様は、子どもの時から40歳まで、いつも同じ顔。
若くもないし、年もとらない。あいまいに笑ってたりもする。
芸術家の肖像写真は、なぜか印象に残りますが、カフカもその一人。「変身」しか読んだことがないけどカフカの顔は知ってる、なんて人、けっこう多いかもしれません。
写真ではあいまいに笑ってることの多いカフカですが、一枚だけ、かなり全力で笑ってる写真もあります。
海辺で写された一枚。村上春樹の「海辺のカフカ」が出たとき、最初はこの写真を思い出しました。
変な写真なんです。
カー様は、浜辺で、中年男性といっしょに、笑いながら写っています。ちなみにカー様はホモセクシャルではありません。
このおじさんは誰?
いかにも親しげに、前世からの知り合いのように気心の知れたふうに写っています。
でも、このオジサン、どうやらカフカが浜辺で知り合った人で、その場だけ、それっきり何の関係もない人のようなのです。
見知らぬ他人とこそ、心から打ち解けるカフカ。
いつも謎めいてますが、肖像写真でもカー様は謎。ドゥルーズという学者は、カフカは地政学に関して、ふつうの遠近法が当てはまらない、といいました。どうやら人間関係についてもそうだったみたい。
有朋自遠方来。
カー様の方式なら、ブッシュとオサマ、イスラエルとパレスチナが握手できるかもしれません。
...そこでゴダール食堂ですよ。
私の中で過負荷(誤変換だけどおもしろいのでこのまま)と同じ位置に立っている人は、
ベンヤミンですね。
なんていうか、空気感が似ている気がします。
うまくいえないのですが。
そうです、この浜辺はゴダール食堂から続いてます。。
ベンヤミン!
ベンヤミンはカフカの最初の発見者。
街をさ迷い歩く二人の独身者。
ショーウィンドウと人ごみの中で、瞑想におちいる遊歩者。
歩きながら眠る人、眠りながら目覚める人。。
書いたものも似てますよね。
開かれたまま閉じられない本。
断片をあつめてるうち、変な場所と変な場所がつながって、収拾がつかなくなる。
どこからも入れるけど、入っちゃうと出られない…。
三年くらい前、図書館で、パサージュ論と池内訳カフカを開いて、よく途方にくれていました。。
開くのは簡単ですが、閉じ方が見つからなくて、いまだに開かれたままの放置プレイかもしれませぬ。。
ne_sanさん。
ふと思いついたのですが、JMさんが音楽でやってるみたいなトラバ企画、本や映画でもあればなあと思うんです。
とはいえ、誰が音頭をとるかが大問題。
人が立ててくれた企画には乗りやすいが、仕切る役はすごくたいへんそうです。JMさんはやっぱりすごい…。
で、仕切り役を交代でどんどん回していくのがよいかも…とか考えてます。どないでしょうか。
まだ思いついただけですが(逃げ腰ぎみに)。
overQ様、こんにちは。
カフカの写真が沢山見られて嬉しいです。
子供の頃から、緊張感のある顔が好きです☆
妹2人、ガス室で死んじゃったんだっけ・・・とシンミリ。
その昔、寺山修司の英雄伝?だったか読んだ時、
カフカのコーナーの小見出し、
「人間は血がつまった袋である」に惹かれて以来、
気になる作家です。本は短いのしか読んでないですが…。
でも、これって、カフカが言った言葉なのかどうか・・・?
いまだに謎なのでした。。。
ayaranさん、私は今、背中を蚊(ダニ?)に喰われて、たいへん苦しんでおります。
寺山修司の本は、「ポケットに名言を」だと思います。
でも、書を捨て町に出なければならないんで、どうすればよいか、大変困りますね。裸で町に出ろということかもしれません。
裸で町に出たら、背中の虫さされに、十字のしるし、つけてくれる人が現われるかな。
Posted by:はわわわ。
overQ様の美しいレスポンスにウットリでございます。
わしが十字してあげます。ぇぇ。(謎
それにしても、ここの色合い、とても素敵ですネ!!
Posted by:十字刻印ありがとうございます。
背中の、じつに微妙なところ刺されまして、掻いてるうちに三回くらい腕つりました。夏は生存にとって過酷な季節ですね。
カフカの言葉は、「なぜ人間は血の詰まったただの袋ではないのか」らしいんです。
しかし、これがカフカのどの作品から引用されたのか、調べてるんですが、ぜんぜんわかりませぬ。
ネットで調べると、この言葉自体はいっぱい出てくるんですが、原典がどれかがわかりません。みなさん孫引きらしい(泣
面白いんで、もうちょいと調べてみますわ。判明したらご報告します。
おおっー。overQ様、調べてくださったのですね。
わしの長年の謎が解ける日が、、、こんな形で来よう、としているとは!!
ありがとうございます。
ayaranさん。現在、探索中です。
目星をつけたところからは発見されず、不思議と難航しております(w
やっぱり、カフカって、引用されても謎めいてます。
「城」の測量士Kのように、なかなか出典に近づけないのです。。
overQ さん、はじめまして。Ecolonomy@アホルダーと申します。いつも楽しく読んでます。
今回、自分のサイトでチラリと紹介させてもらったのですが、トラバが2つも送られてしまいました。申し訳ありません。
それにしてもこのカフカの写真、とてもお洒落ですよね。昔の方はやはり気合を入れて写真を撮ったのでしょうか。
Posted by: Ecolonomy : August 26, 2004 7:37 PMEcolonomyさん、こんばんは。
ご紹介いただいて、ありがとうございます!
ブログのデザイン、あまり自信ないんで、誉めていただいて恐縮してます(w
カフカは1925年に亡くなってますが、まだ古い時代の肖像写真の雰囲気がありますね。
フィルム感度が悪くて、じっとしてなくてはならなかった時代の、絵画的な構図の写真。
海辺の写真は、スナップショットなんで、当時としては最新の機材ですよね、きっと。
それで、カフカもうれしそうなのかも。
>ご紹介いただいて、ありがとうございます!
どういたしまして。こちらこそありがとうございます。
あまりに素敵なデザインで一目ぼれしてしまいました。
>それで、カフカもうれしそうなのかも。
浜辺の雰囲気がリラックスさせたのかもしれませんね。