AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 不能者たちの愛――ガンダム大人読み・その2

不能者たちの愛――ガンダム大人読み・その2

written by overQ
August 24, 2004


ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ!
あれはぁ、いいものだ…       マ・クベ(声・塩沢兼人)

マみなさん、ジーク・ジオン!

上のセリフは、マ・クベ大佐がガンダムに敗北し、爆死しながら語った名言(迷言)。
ガンダム全編の中でも特に有名なセリフです。

マ・クベ
ジオン公国突撃機動軍第7師団、マ・クベ大佐。
キシリア配下で、中央アジアから大量の鉱物資源をジオン公国に送る。
死の間際まで、ツボにこだわる愚かな男。
…しかし、そうなのだろうか。
なぜ、マ・クベは、死の間際においてまで、ツボにこだわったのか。

マ・クベにとっての、ツボは、上司キシリアへの愛の証しでした。
ツボ。中国・南宋の白磁とおぼしきツボ。
ツボは、多分に、精神分析的な興味を誘う存在。
それを、上司である、女に贈るということ。

壷を贈る、という形でしか、愛を示せない男。
不能者。
マ・クベは、不能者であった、と考えてみる。

上司はザビ家の長女キシリア。そもそも身分がちがっていた。
軍隊における関係でも、社会的な関係においても、肉体的な愛情はありえない。
しかし、キシリアとマ・クベには、ある共通点があり、非常に微妙な奇妙な関係、愛と呼ぶにはあまりのか細く悲痛な関係が生まれます。

キシリアキシリア・ザビ24歳
ザビ家の長女。
ザビ家の兄弟、ギレン、ドズル、キシリア、ガルマ。
まったく似ていない兄弟たち。異母弟。
富野喜幸監督や作画の安彦良和がどのような考えで、こんな似てない顔の兄弟キャラクターを設定したのかはわかりませんw
しかし、この顔のちがいからは、「異母弟」というメッセージを読み取ってしまいますよね、ふつう。

ギレンrドズルガルマ

異母弟かどうかはともかく、性格・資質においては、ずいぶんちがう兄弟たち。
長兄ギレンは、父デギン公から「ヒトラーの尻尾」とまで呼ばれる、姑息な策士。人望に欠ける。
次男ドズルは愚直な将で、前線で武勲を上げることはできても、国をまとめる能はない。
三男ガルマは、みなにかわいがられて育てられたおぼっちゃま。
しかし、キシリアには、人の上に立つ才覚のすべてがそなわっていた
…ただ、彼女は、女だった。

こうして、ザビ家の中で、女であることを禁じられ、またみずからも女である自己を禁じる、キシリア・ザビ(24歳)。
おそらくは、デギン・ザビ公がもっとも寵愛した女を母とし、期待を背負った娘。
…いや、娘であってはならなかったのです。
彼女は父デギンの期待にこたえようとした。男であろうとした。(イデオンのハルル・アジバ参照。富野が創造した最高のキャラ)
こうして、彼女もまた、社会的な不能者となった。(より精密にいうなら、キシリアは、愛する父デギンが、ダイクン暗殺の首謀者と知ったとき、人間としての喜びをみずからに絶った…)

キシリアが、マ・クベという部下と、どのように知り合ったのかはわかりません。
また、マ・クベに「男性」としての魅力を感じることはなかったはず。
ただ、マ・クベは、一点において、他の男と違っていた。
マ・クベは、キシリアを女として見ていた。

このことが、キシリアの、深く押し込めたはずの「女」を微妙に刺激する。
キシリアは、自分に惚れる男を、体よく利用すればよいと計算しながら、それだけではない感情が勘定の底にうごめくのを感じたにちがいない。
マ・クベは、こうして、キシリアのいちばんの腹心となる。
実際的な愛の交渉はけっしてない。
しかし、マ・クベは白磁の壷を贈り、キシリアはそれを嫌がることなく受け容れる…。

なんとも、か細く、みじめな愛です。
オデッサで追い詰められたマ・クベは、条約で禁じられている核ミサイルを、やすやすと使います。
ミサイル。
男根のあからさまな象徴
キシリア様のため。
それもガンダムによって、一刀両断されてしまうのですが…( ;´Д`)

やがて、キシリアが、急速にシャア・アズナブルに接近することに危機を感じたマ・クベは、それまでのマ・クベではついぞ考えられなった行動に出ます。
みずからモビルスーツに乗り込み、ガンダムと直接対決。
ガンダムのパイロットが最強のニュータイプかもしれないことは、すでにジオンにも知られ始めています。
ガンダムに戦いをいどむなど、まったく無謀なこと。にもかかわらず、マ・クベはいどむ。
男を見せようと意気込むのです。

ライバルは「赤い彗星」シャア。
美男、天才、モビルスーツの最高のパイロット、司令官としても卓越した存在。
そして、キシリアとの間には、なにやら秘密な関係がありそうな(それは、じつは、愛ではなく、親殺しのカタキという関係なのですが、マ・クベにはわからない)。

そして、マ・クベは、案の定、ガンダムに破れ、愛機ギャンとともに爆死。
炎に包まれながら、マ・クベは、キシリアに最後のメッセージを届けます。
あの壷はいいものだ…

  +

…不能者、という主題。
これは、しかし、その後の富野作品で(あるいは、日本のアニメ・マンガのなかで)、もっと別な展開を見せていきます。
すなわち、最強の戦士は、みずからの破壊性を禁じるため、自主的に去勢する、という主題。憲法九条の精神。裏返しのキシリア。
ガンダムでは、この主題は、逆シャアを経て、ターンAに明白に現れます。
ガンダム以外で言うなら、すでに鉄腕アトムの最終話にこの主題が萌芽し、下半身を失って眠るデビルマン、死と再生を繰り返す孫悟空、そしてあの「るろうに剣心」(逆刃刀!)によって、はるか彼方にまで推し進められます…。

…ああ、また、マニアックな妄想を、書いてしまった。。ort(声・井上真樹夫)



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コメント

久し振りに見ました、ガルマ様(笑)。

Posted by: Saladin : August 25, 2004 10:40 AM

Saldinさん、こんばんは。
ガンダムねたは、じつはまだまだあるんで、これからも断続的にやっていきますw
イデオンとかターンAとかのことも書く予定。
よろしくお願いします

にしても、四兄弟の絵を並べると、なにか達成感がw

Posted by: Site icon overQ : August 25, 2004 8:28 PM

是非、ガルマ様の前髪クルクルと、ブライトさんマザコン疑惑について語っていただきたいです(笑)。
ブライトって、アムロよりマザコンっぽいと思うんですよ(偏見)。
次も楽しみにしております。

Posted by: Saladin : August 25, 2004 10:03 PM
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