AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 六十六夜 第34夜 「しあわせの闇の鳥」

六十六夜 第34夜 「しあわせの闇の鳥」

written by overQ
August 31, 2004

小学校に入学した春。
近所にペットショップができました。
犬や猫のような大きな動物ではなく、小動物や魚などを扱います。
金魚、鯉、熱帯魚、カメ、アロワナ、昆虫、ワニ、藻、電気ウナギなどがいました。
何かわからないものもたくさん。
光るもの、うなるもの。闇を好むもの。

木製の箱で売られているものもいました。
ガラスや檻ではなく、全方向が閉ざされた木製の箱。
中に何が入っているのか。いつも気になっていましたが、よくわかりませんでした。
すごくいっぱい積まれていることもあり、少なくなっていることも。
よく売れていたのかもしれません。

あの箱、何が入っていたのか。

ペットショップができた建物は、元はアパートで、小学にあがるまで、いちばん仲の良かった友だちが住んでいました。
ペットショップができると同時に、引っ越していきました。
当然、ペットショップができたから引っ越したのですが、子供だったんで、こんな単純な因果関係にも気づきませんでした。

中学にあがったとき、この友人と再び同級生に。
しかし、もう、元のようには、仲良くなれなかった。
子供時代の親和力は、あの木箱に入れられて、誰かに買われていったのか。

六十六夜、弟34夜。「しあわせの闇の鳥」。二百十日。

長き影
しあわせの闇の鳥

だまされやすいのか、
疑い深いのか。

近所のペット屋で
しあわせの鳥を買った。
「幸福を確約するわけではない」
と店の主人は言った。
「しかし、少なくとも
不幸になるのは食い止めてくれる」

飼い方は難しくない。
気をつける点はひとつだけ。
鳥は光に弱い。
闇の中で飼わねばならない。



鳥は暗箱に入れられていた。
中の様子は見えない。
「鳥の姿を見ることはできない」
そうペット屋の主人は言った。
闇の中で飼うほかない。
観賞用とはちがうのだ。

餌や水は専用の投入口から流しこむ。
掃除はそろりと底板を引き出し
水洗いして元にもどす。

チュンチュンチュン。
しあわせの鳥はスズメのように鳴く。
「ように」ではなく
スズメではないのか。
疑いはつのる。
ペット屋の主人は
しあわせの鳥だという。
姿を見ることもできないのに
どうして信用できるのか。

「幸せを犠牲にする気なら」
と主人は言う。
「鳥の姿を見てかまわない」
脅しのようなセリフ。
だまされている。
とり立てて幸福と呼べることなど
何もなかった。
「それは不幸を食い止めているだけだから」

辛抱強いのか
臆病なのか。

ともかく五年飼った。
いちども姿を見たことはない。
チュンチュンチュン。
あいかわらず
スズメの声で鳴く。
1999年をはさんでの
五年間であった。
臆病風に吹かれたのも
迷信深い性格から。
疑り深いが
辛抱強い。

しかし、それももうこれまで。
21世紀である。
新世紀ももう幕開けて久しい。
古い迷信は打破しよう。
鳥だって光ある世界に
解き放たれたいにちがいない。

頑丈に作られた暗箱をこじ開ける。
バールのようなもので
みしみし板をはがす。
中が見えてきた。
意外にもまぶしい。
チュンチュンチュン。
鳥が鳴いている。
スズメだ。
一匹ではない。
何羽も何羽も。
電線に止まっている。
三々五々と路上に群れる。

町があった。
箱の中に町があった。
スズメがいるのも当然だ。
よく見知った町。
通いなれた道。
なじみの商店街。
鳥を買った店。
光に満ちたこの町が
箱をこじ開けた途端
見る見る闇に覆われていく。

そうだったのだ。
しあわせはここに守られていた。
外で大きな音がして
空が割れた。
闇が侵入してくる。
太陽は落下し砕けた。
壊れたプリンのように
そこここに散乱した。
破片は急速に光を失っていく。
とりかえしのつかないことだ。
悲鳴が聞こえ始める。
闇とともに何かが
侵入している。
すぐそばまで来ている。
禁制によって押さえ込まれていた
私自身のイドの怪物。幸福。




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コメント

ひゃあああ。
はじまりましたね。
ありがとうございます。
ぐぅっと、overQワールドへひきずりこまれ、
いきなりな展開に驚愕しています、
イドの怪物・・・
箱のお話は、いろいろな見方ができて楽しいです。
すごいですぅううう。

Posted by: pico : August 31, 2004 10:49 PM

わっpicoさん、こんばんは〜。
と、overQさんちで、巨匠お二人にご挨拶!(^o^)丿


しあわせの闇の鳥・・・題名からして、もう吸い込まれそうになりました!!
最初、だまされて買わされたんだ、可哀想・・と思って・・・。
次には・・「裸の王様」みたいに、無いのにだれも無いのをを認められないのかと思い。

ところが・・そんなもんじゃない!!
世界が崩れ落ちた瞬間は、ホントに怖かったです。
overQさんの世界は底なし沼みたいです。こわっ!

Posted by: Site icon ワルツ : September 1, 2004 12:51 AM

picoさん、ワルツさん、こんばんは。
毎度たいへんありがとうございます。

今回は、たぶん、ホラーっぽいのが多めです。
夏に始める予定だったんで。
秋になりつつありますが(汗

ホラーと、あとは法螺話ですw
何がホラーで、何が法螺か、自分でもよくわかってないんですけどね。

稚拙な作品ばかりで人さまに読んでいただくのは冷や汗物なんですが、いろいろ取りそろえて、あの手この手で目くらまし、煙に巻こうと思っております(獏
迷宮彷徨、よろしくお願いいたします

Posted by: Site icon overQ : September 1, 2004 6:25 PM
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