AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 相米慎二「お引越し」

相米慎二「お引越し」

written by overQ
October 3, 2004

お引越し思えば、映画作品を個別に取り上げたことが一度も無いような気がします。
で、今日は、相米慎二監督の「お引越し」のことを。
LINさんが、ココログに「お引越し」されたんで、ふとこの作品を思い出しました。

中途半端に古い映画です。1993年。田畑智子11歳のデビュー作。母・桜田淳子、父・中居貴一。

「お引越し」は、両親の離婚という現実と戦い、破れ、それを受け入れる少女の成長の記録。
見てる人、少ないようです(笑)
信じてもらえないかもしれないけど、この映画、とてつもない傑作です。
ホームドラマから始まり、ちょっとこの設定では考えられないような場所まで、連れて行ってくれます。帰って来れないくらい、遠くまでw
ほのぼのとしたところから出発して、壮絶な少女の大人への門出に到達します。

知名度の低さ、「お引越し」という題名が、よくなかったんでしょうか。
「お葬式」とか「夜逃げ屋本舗」とかのヒット映画の、柳の下のドジョウを狙ったみたいな、ぞんざいな題名。
さらには、作品の構造がちょっと特殊かも。のんきなホームドラマ、最大でせいぜい「笑って泣ける家族コメディ」を期待してると、えらい目にあいます。
たしかに、良質のホームドラマとして物語は始まり、展開していくのです。
前半は、とても巧みに作られ、奇跡的なショットが連発するホームコメディ。笑えます、泣けます、うまいなぁとうならせます。
しかし、この水準で推移し、適当な場所に着地してくれることを望んでも、その願いはかなえられません。
この映画は21世紀に通じていたのです
後半で、映画は、映画としか言いようのない方法で、ほとんど荘厳なレベルにたどり着きます。心の準備のないまま、フェリーニを見せられるような。しかも、21世紀に向けて開かれたフェリーニを。
この映画を見て、むしろ「甘い生活」がわかったりするかもしれませんw

「お引越し」の、もうひとつの見所は、京都の町
京都在住者が見ると、実にしっくり来る、「ふつうの京都」が描かれています。
旅行者が見た京都じゃなくて、住んでる人の目で見るような京都。
「ふつうの場所」がいっぱい出てきて、在住者にとっては、かゆいところに手が届く感じ。
「おお、ここですか」というような場所ばかり。
祇園祭だって、オフィスビルの中から撮ります。この日常性。平日のときは、仕事してますもん。

この映画と同時期、北野武「ソナチネ」、クリント・イーストウッド「許されざる者」など、激しく暴力的な傑作映画が上映されています。
しかし、「お引越し」こそが、じつはいちばん過酷で激しく、そしていちばん静かな映画だったのではないかと、今になれば思えます。
相米監督は、ただ、ただ、少女の心に耳をすませただけ。少女自身さえ、気づいていないような、成長の軌跡を、みごとに映像化しました。
埋もれてしまうにはあまりに惜しい、この傑作。オススメです。



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時刻: October 23, 2004 12:21 AM
コメント

>ホームドラマから始まり、ちょっとこの設定では考えられないような場所まで、連れて行ってくれます。帰って来れないくらい、遠くまでw

いやあほんと同意です、帰って来れませんよね(笑)田畑智子の演技、演技っていうかたぶんほんとにあんな子だったんでしょうが、とにかくそれに驚かされた覚えがあります。

たしか最後の方で「おめでとうございまーす!」(だったかな)って叫ぶシーンがあったと思うのですが、あれとエヴァンゲリオンのラストの方がどうつながりがあるのかをozerQさんに解き明かしてもらいたいと常々思っております(笑)

Posted by: だい : October 4, 2004 12:06 AM

お引越し!懐かしい!
「お引越し」の映画を撮っておられてる時、私は大津市(滋賀県)の瀬田の唐橋の近くに住んでました。

ロケのお祭りは、瀬田の建部大社(日本武尊を奉った)船幸祭です。ロケで桜田淳子さんも中井貴一さんにも会いました〜〜。お祭のエキストラっていうのか、その他大勢になってます。(偶然ですが)
めちゃくちゃ、懐かしかったので・・。
近くのロイヤルオークホテルなんかでもロケがありました〜〜。

Posted by: Site icon ワルツ : October 4, 2004 12:48 AM

ご紹介ありがとうございます。
それこそ「夜逃げ屋本舗」は見ましたが、これは見てません。
最近、ブログの更新に追われ、ビデオを見る時間もないありさまでしたが
今回の引っ越しでのんびりできると思うので是非、見てみたいです。
桜田淳子がびみょーに苦手だったりするのですが・・・(笑)

Posted by: LIN : October 4, 2004 11:12 AM

甘い生活ですか!?
そいつはみなくてわっ。
また、楽しみが増えました。

ソナチネは、たけし監督の中でも、好きな。
というより、目がさめるような思いでみた
とても印象深い映画です。
それよりもすごいのですね。
どんどん期待はふくらみます。

そして、田畑智子さん。
カノックスの向田邦子シリーズにレギュラー出演してますよね。
子供なのか大人なのかわからない。
笑っていても哀しい瞳の色をもつ不思議な女の子。
デビュー作品なのですね。
益々もって、楽しみです。

ワルツさんも、探さなくっちゃ♪

overQさん、ありがとうございます。

Posted by: pico : October 4, 2004 12:33 PM

>だいさん。

この映画、端っこへ、端っこへ、カメラも物語も寄っていく傾向があります。
父や母とツーショットの時でさえ、親は見切れて、子どものほうにカメラが寄って行く。
祇園祭でも、大文字焼きでも、カメラは出来事の真ん中には出て行かず、端っこのほうで推移します。
まあ、祭りで映画撮影はあまりにも邪魔で(笑)、こう撮るよりほかはなかったんでしょうが。大文字焼きも「妙」がメインなのが、たいへん妙です。

京都を撮る映画としてスポンサーがついたはずだのに、滋賀県に行っちゃうのも面白い(笑)
ここでも祭りに踏み込むことはなく、端っこへ端っこへ寄っていき、森の中に入ってしまいます。

結局、端っこ主義が極北に達して、汀というか渚というか、海と大地の境に出てしまう。
すると、中心をもたない放浪者として彼方へはじけるか、自分の本質を切り捨ててでも何とか戻ってくるかしか、もう道はない。
たぶん、この境界点に達するところが、エヴァの最後のほうと、共通なんじゃないでしょうか。
なぎさ・水際のイメージで一致するのも、すごく面白いです。

Posted by: Site icon overQ : October 4, 2004 6:03 PM

>ワルツさん。
おお、ワルツさん、写ってるかもしれないんですね!
いいですねぇ、楽しそうw
桜田淳子・中井貴一のツーショットは、なにか特別な暗いオーラを感じます(笑)

お祭りのシーンは、ほんとのお祭りの日に撮ってるんでしょうか。
撮影隊、かなり邪魔者扱いされたのではw
それとも、わざわざ祭り再現してもらったでしょうか。
それは、それで、迷惑な…。

この映画では、主人公の少女が、人の波と反対に動くのがポイント。
人が寄って行く真ん中のほうに行かず、端へ端へとはずれていく。
祇園祭も大文字焼きのシーンもそうなっています。
物語としても、少女がはずれて行く。。

ロイヤルオークホテルは、丁寧に見ると、映画の中では「離婚後の嫌な世界」を象徴するものとして登場します。
私がホテルの支配人なら、かなりむかついたかも(笑)
しかし、あんまり当たらない映画だったんで、きっとあまり気づかれなかったにちがいない。。(悲

Posted by: Site icon overQ : October 4, 2004 6:16 PM

>LINさん。

この映画を見たとき、最初、桜田淳子かよーとツッコミを入れてしまいました。
かなり意表をついた起用です。

ところが…この桜田淳子、いいんですよ。
この年齢の女性のひとつのタイプとして、ひじょうにリアルに描かれます。

でも、具体的なことって、何ひとつ、描かない。
離婚の原因もよくわからないし、この女性の職業もよくわかならない。
「家」が誰の持ち家なのかも説明されないし、夫とどうであったかも全然わからない。

それにもかかわらず、非常にリアルなんです。
映画として、巧みだとしか言いようがないですね。
集中力と投げやりさが共存するのが、なんともリアルで、桜田淳子です(笑)

この映画、フツーの映画として見ていると、後半がついていけなくなります(笑)
後半、暴走して、フェリーニとなるので、びっくりです。
心構えがないと、キツネにつままれたようになりますが、冷静に考えると、この映画の構造はスゴいものです。
日常にひそむ荘厳さを描く、ひとつの手法になっていると思います。

Posted by: Site icon overQ : October 4, 2004 6:30 PM

>picoさん。

この映画、少女が、はずれて行く…。
カメラも端へ端へとはずれて行く、物語も中心を見失ってどんどんはずれて、いちばん端っこまで到達します。

「お引越し」という題名から、こじんまりしたホームコメディを予想してると、後半、置いていかれます(笑)
だいさんは、エヴァンゲリオンのラストを連想されたようです。
こんなところまで来ちゃっていいのかという、宗教的な荘厳な場所に逝っちゃいますw

田畑智子はやっぱりこの映画がベストでしょう。
まだ11歳で、夏休みをつぶしてこの映画を撮ったそうです。今とかなりちがいます。
監督にめちゃめちゃにしごかれたらしく、どんどん顔が変わっていくのが、見所。
最後のほうは、もう放心状態だったかもしれません。

タバトモ、相米慎二が生み出したといってもいいのですが、相米さんさっさとなくなっちゃったんで、きっと困ってると思います。
工藤夕貴とか斉藤由貴とか、相米監督が育てた少女女優はいますが、田畑智子は別格に相米度が高いw
映画というものの恐ろしさもちょっと感じます。

Posted by: Site icon overQ : October 4, 2004 6:46 PM

>自分に。

もっと簡潔に書けないのかしら…

Posted by: Site icon overQ : October 4, 2004 6:48 PM

お祭りのシーンは、普通にお祭りの中で撮影されてました。みんなが、「ほらほらあそこで撮ってるよ・・・って感じでした。笑)」
私は、ここらにいるんだけどな・・・て感じです。(笑)
お祭りの中でお稚児さんのシーンも出てきますが、近所の子供たちなんですよ。
それに・・・、
「こんなホテルが建っちゃった」(ロイヤルオークホテル)って、きついですよね。
実際のロイヤルオークホテルは、南欧をイメージした、中庭のあるホテルでとても美しいホテルです。(リゾートホテル)
映画では、田畑智子ちゃんがホテルから瀬田の唐橋まで走ってたけど、結構距離あるし、到底走れません。(笑)
ちなみにびわこ毎日マラソンのコースにもなってます。(^.^)/~~~

Posted by: Site icon ワルツ : October 4, 2004 9:04 PM

やっぱり、祭りの撮影、隅っこのほうで、こそこそやってたんですねw
それが、この映画の主題でもあるわけですが。。

走る、田畑智子!
最初のあたりも、出町のあたりから、北山のあたりまで、走りに走る、田畑智子、11歳。

映画では、チャプリンもエノケンも阪妻も、初期のスターはみんな走りに走ります。
長距離走をワンショットで写しきるのが、映画の主要な目的かと思わせるほどです。
結果的には、その手のシーンは、「突破」や「越境」など、エネルギーに満ちた、どんどん変化していくものを象徴するものになってます。

相米監督は、長回しで有名な人なんですが、長回しの究極は、「走ること」だったのかもしれません。
それにしても、撮影では、死ぬほど走らされたにちがいないです。
よく見ると、タバトモ、だんだんやせて逝きますw

Posted by: Site icon overQ : October 4, 2004 10:59 PM
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