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トミノ式移動作劇術(1)――ガンダム大人読み・3

written by overQ
November 2, 2004

先週やってたBSアニメ夜話。28日はついに「機動戦士ガンダム」が取り上げられてました。

司会の岡田斗司夫さんはもちろん、ゲストの皆さんも、ガンダムを何度も何度も見て、自分の成長に合わせあれこれ思いを重ねた結果、本気の「大人読み」に到達されているようで、おとなげないたいへん面白かったです。

斬新な見解をいくつかメモっておくと。

アムロ、振り向くな、アムロまず、第17話「アムロ脱走」。
「ガンダムの操縦者をアムロではなく、リュウにする」
という、ブライトとミライの話を偶然聞いてしまったアムロ。
ホワイトベースを脱走します。ガンダムに乗ってw
こういう「ボクのことわかって」風の男は嫌い、という小谷真理(SFファンタジー評論家)の発言もあり。
さて、ガンダムに乗って家出しちゃうアムロ。そのシーン、背景がまっ黒。星ひとつ出てない。
これが、衝動的に家出してしまって、あてどないアムロの不安な気持ちをよく表している、と(岡田斗司夫説)。

地面でしたまっ黒の背景。
演出効果としてやったのか、どうか。
じつは、このカットのあとで、もう一回、逃走するガンダムのカットが出てきます。
ちょっとだけ角度がちがってて、上のほうに地平線が見えます。つまり、背景は空ではなく、夜の大地。だから、まっ黒だった。
じゃあ、最初のカットで、黒一面にしたのは、演出かどうか
…うーん。わからん。何ともいえん。演出家の発言など、こまかくチェックしてると、わかるかもしれませんが。

ともあれ、ガンダムでは、こういうことがママあるような気が。
読み手のほうが、成長しすぎたんです、きっと。深読み、大人読み。製作者らの意図をはるかに超えた、しかし明らかに「そう読んだほうが面白い」という読みが成立している。
ほんとに愛された作品にしか、起こり得ない現象ですヽ(´ー`)ノ

今回、ゲストでいちばん飛ばしてたのは、福井晴敏(作家)さん。『亡国のイージス』のあの福井さんです。

ひょっとすると、テレビ初登場でしょうか。
かなり、緊張されてましたが、ガンダム読みはすばらしかった。
村上春樹の弟、というようなルックスにしゃべり方。とつとつと。深く刻んでいくような話し方。
ターンAのノヴェライズも書いてる福井氏。

泣けます、このシーンゲストそれぞれの好きなシーンを選ぶ、という趣向だったんです。
で、福井氏→ミハル。
ミハルですかー!(第28話「大西洋血に染めて」)

幼い弟妹のため、アルバイトみたいな形で、スパイとして送り込まれたミハル。

ミハル: この仕事が終わったら、戦争のないところに行こうな、三人で。
幼い妹: 姉ちゃん、かあちゃんのにおいがする。
カイが、そんなミハルを、スパイと知りつつ、ホワイトベースの自室にかくまう。そして、ほのかな恋仲に。ミハルは、「見張る」です(脱力

そのミハルの最期のシーン。
海上を飛行しする機体から、ミサイルを手動で発射させるミハル。ミサイルは見事に命中しますが、ミハルは爆風で飛ばされる。
カイは、操縦席にいて、そのことに気づかない。
ミハルは、空中に飛ばされ、死んでいく。その瞬間、髪の毛が空に広がる。空の青を背景に、まるで水死するオフェーリアのように、一瞬、女になる

オフェーリアあまりに無残な、無意味な死。
作戦として何の意味もないし、戦局への影響もまったくない。誰も誉めないし、気づかれもしない。
戦場での死とは、大半が、こういうものだ、と福井氏は力説。
と、同時に、セクシーだったと。こんな無残な場面に、性的なものを感じるのは、まったく倒錯的なんだけど、子供心にも、このシーンは官能的だった、と。
ミハルといえば、それまでのシーンでは、そばかすで、化粧もせず、幼い弟たちのため必死で働くばかり。髪は後ろで留めて、女性として、正直、何の魅力もなかった。
それが、死の瞬間、生の束縛から解き放たれ、「女」になる。髪が広がり、風に流れる。

福井氏もこれが製作者の演出意図として成立したのか、偶然そうなったのかわからないようでした。
でも、とにかく、そう読める。そう読んだほうが、はるかに物語は深い。
とんでもない作品としての機動戦士ガンダムは、こうしてファンによって発掘されていく。
黒背景のシーンも、ミハルの最期のシーンも、ほんの二三秒の世界です。
記憶の中で、反復され、増幅され、改変され、意味づけられ、動かしがたいものに鍛えあがられていったにちがいないのです。

…ちょっと長くなったんで、いったんここで切ります。もう一回、このエントリーは続きます。



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