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トミノ式移動作劇術(2)――ガンダム大人読み・4

written by overQ
November 3, 2004

ジーク・ジオン!前のエントリーに引き続き、ガンダム話。
BSアニメ夜話での岡田斗司夫さんの「深読み」です。

ザビ家の長兄ギレン。
ガンダム全話中で、ギレンの演説シーンが、三回出てきます。
・最初は、テレビ中継もされ、ジオン国民の前での大演説。(第12話「ジオンの脅威」)
・二回目は、「綺羅星のごとく居並ぶ高官達の前で」(第37話「テキサスの攻防」)
・三回目は、前線の兵士たちの前で。(第42話「宇宙要塞ア・バオア・クー」)
演説の調子は同じなのですが、聴衆がちがっている。
国民→高官たち→前線兵士、とだんだん規模が縮小。ジオンが追い詰められ、疲弊していくのにシンクロしている。富野喜幸が、大河ドラマを描く、心憎い手法。

また、岡田氏は、シャアについても。
復讐を果たすため、シャアことキャスバル兄さんは、友人だったはずのガルマを策にはめ、殺す。
左遷され、酒場で、ストレートを一気飲みするシャア。

「ジオン公国の掲げる人類一人一人の自由の為の戦いを神が見捨てる訳はない。私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ。なぜだ?」
テレビから流れるギレンの仰々しい演説に答えるように、シャアがつぶやく。
「坊やだからさ」
坊やだからさこの言葉は、疑うことを知らないお坊ちゃまのガルマに向けられたものであると同時に、自分自身に向けられたもの

福井晴敏によれば、シャアの名セリフはたいてい、自己確認のための独り言です。
もし父がデギン・ザビの裏切りに遭わなければ、シャアがまさにガルマと同じような「お坊ちゃま」になっていたにちがいない。もう一人の自分を殺してしまったシャア。
手向けだ最終話で、キシリアを殺害するシャア。母殺しのような。そのときのつぶやき、

ガルマ、私の手向けだ。姉上と仲良く暮らすがいい

シャアは、ずっとガルマのことを考え続けて、内心忸怩たるものがあったのだ、シャア、いいおとこと、潤む目で岡田氏。

もはや、製作者の演出意図など、はるかに踏み越えてます。
思い過ごし思い入れは病的精密に鍛えられ、妄想性整合性が与えられています。まさに深読み・大人読み(゚ー゚*)v

ガンダムに限らず、富野アニメで特徴的なのは、「移動」かもしれません。

侵略型ロボットアニメでよくあるのは、「侵略される」というもの。
マジンガーZからエヴァンゲリオンまで、主人公のロボットは「基地=中心」にいます。敵は、外からやって来て、都市を侵略する。

ところが、ガンダムは、移動する。転々と移動する。
移動した各所で、完結したエピソードが語られ、一話が作られる、ということも多い。

この由来は、富野喜幸のいわゆる「絵コンテ千本切り」にあるのかもしれません。
富野さんは一時期、いろんなアニメの絵コンテを描きまくるということをやっていて、それが誇張され、伝説化されて、富野の千本切りと呼ばれいるとか。
侍ジャイアンツ、ハイジ、ラスカル、アン、ペリーヌなど、いろんなところで、富野さんの名前が見えます(ガンダムでは、富野さんは、絵コンテ・斧谷稔というペンネームを使っています)。

移動型いろんなところで、いろんなアニメの、個別な一話ずつの絵コンテを描きまくった、富野喜幸。
このやり方を、ひとつの大河ドラマでも踏襲してみてはどうか。
主人公たちは、一話ごと、数話ごとに、別な世界に移動し、別な物語を生きる。しかし、それらは少しずつ関連して、主人公たちの運命を形作っていく。
絵コンテマンだった富野氏自身が、いろんなアニメの断片エピソードを描きながら、作家として成長していったように、主人公たちも、断続するストーリーのあいだを横断しながら、大人になっていく

トミノ式移動作劇術。
これはとても画期的で、また応用範囲の広いものかも。
一ヶ所にとどまらない。各所を横断していく。それが、「成長」の条件。
富野アニメの特徴は、従来の善玉悪玉式の勧善懲悪ものを壊してしまった点にある、といわれます。
すでに、アトムの青騎士をやったときから、この傾向は出てました。
勧善懲悪をやるためには、主人公が中心にいて、そこに向かって外から敵が攻め込んでくる、という形が必要。
でも、トミノ式移動作劇術では、主人公は移動していく。中心はない。だから、「外」もないし、敵もない。
富野作品は、地図を書くことができ、その上を物語はジグザグに移動していきます。

富野作品は、終わり方がいつも微妙です(笑) 終わりのほうが来ると、急に話の展開が早くなるw 番組制作上の都合もあるんでしょうが。
あるいは移動はずっと続くので、終わりを形作れないものなのかもしれません。
スピンアウトとでもいうか、主人公たちが死ぬ(ザンボット)、狂う(カミーユ)、向こう側へいく(イデオン)、というのも多い結末。
移動に決着をつけようとすると、加速して離脱してしまうしかないのでしょうか。



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コメント

overQさん、こんにちは。「ガンダム占い」のblogさんを見つけたんで、お知らせします。(笑)
http://www.goisu.net/cgi-bin/uranai/uranai.cgi?menu=d002
占ってみたんですが、私は、「ギレン・ザビ」だそうです。
でも、ガンダムを知らないので、説明は読んだんですが、あんまし分かりません。(笑)
ジオン軍の大将にて、公王の長男。35歳。性格はしっかりしてるそうです。(ちょっと私とは違う・・(^_^;)
悪モンみたいですが、それは全然かまいません。(笑)
彼の台詞の中の「せっかく減った人口です。これ以上増やさずに優良な人種だけを残します」
には、笑いました。

overQさんもよければやってみてくださいね。でも、「誰だったよ・・」と言われても私には皆目分かりません。(爆)

Posted by: Site icon ワルツ : November 8, 2004 3:07 PM

ギレン・ザビは、ちょうどこの記事の最初に出てる、写真の人です。演説が大好き。35歳に見えませんね。
最期は妹に射殺されますw
ワルツさんも妹には気をつけてください(縛

ちなみに、私は、スレッガーでした。
他人の恋人を誘惑して、すぐ戦死しちゃう人です(笑)

Posted by: Site icon overQ : November 8, 2004 10:35 PM

はじめまして。LINさのブログでこちらを知り、おじゃましました。古い記事へのコメントで失礼します。
どのカテゴリーの記事も大変面白く読ませてもらっていますが、ガンダム大人読みには特にひかれました。私もアニメ夜話のガンダムの回を見ましたが、出演者の「大人読み」はなかなか面白かったです。
福井晴敏>村上春樹の弟、というようなルックスにしゃべり方。
思わず吹き出しました。ああ、確かに似てるかも。フルマラソンでもして体を引き締めたら更に似そうな気もします。
ビデオにとったガンダム劇場版も久しぶりに見ました。色々感ずるところはあったのですが、子供の頃、疑問に思っていたミライのもてっぷりは今でも疑問のままです。
それでは、長々と失礼しました。

Posted by: Site icon kyokyom : September 5, 2005 12:28 AM

こんにちは、こちらこそはじめまして。
古い記事にコメントいただくのは、とてもうれしいです!

福井さんは、先日もBSの劇場版三本立ての際、拝見しましたが、あのしゃべり方は…アムロですね。
きっと若い頃、アムロ・レイと自己同一化するような妄想にふけっていたにちがいない(;・∀・)

アムロたちは、戦争を兵隊の一人として経験する。
それはけっして志願してでなく、生き抜くため仕方なく、ほとんど偶然の積み重ねから、ムリヤリに。
戦争の罪深さはわかっているけど、戦争を外から眺める人に、「戦争反対!」と頭ごなしに言われると、それはそれで心の中に思いがわだかまるものがある…。

福井晴敏の作品も、戦争を外からではなく、内側の視点から考えていく…考える以上に体感していく…そういうところが、面白さになっているなあ、と思いました。
ガンダムの遺産を受け継ぐ人なんだなぁ、と。

Posted by: Site icon overQ : September 5, 2005 9:53 AM

こんばんは、お言葉に甘えて再びおじゃまします。
僕は福井さんの小説は未読なのですが、overQさんのコメントを読んでとても読みたくなっております。
ガンダムを見ていたある世代の人間にとってはアムロにシンクロしてしまうという人は多かったのかもしれませんね。とは言え、福井さんは別格でしょうか。
それにしても大人になって見るガンダムは、どうもジオンの方により目がいくようになってしまいます。ザビ家の人間達の性格の描き分けなんかにも感心してしまいました。子供の頃はドズルとデビンの顔を見て、ジオンは悪役だと決めこんでいたのですが。
上で話題にされていたガンダム占い、遅ればせながら私もやってみました。
「マチルダ」でした。なんだか少し嬉しいです。

Posted by: Site icon kyokyom : September 6, 2005 9:18 PM

こんばんは!

福井晴敏、三冊読んでるんですが、どれも面白かったです。
まず思ったのは、まじめな人…ということ。
それでいて、いろんな視点から事態を眺めることができて、作品の面白さになっていると思いました。

ターンAガンダムを小説化した「月に繭 地には果実」もよかったです。
ターンAは好きな富野作品のひとつなので、登場人物の内面が細かく描かれてて、とても面白く読めました。
福井さんは、このノベライズで、小説の書き方をつかんだ、といってるそうです☆

Posted by: Site icon overQ : September 8, 2005 7:09 PM
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