気がつけば、21世紀になって、もう五年目。
そろそろ、子供のころ空想してた未来のはずなんだけど…。
光線銃も、空飛ぶクルマも、アトムやドラえもんみたいなロボットもいない。透明なチューブでつながれた空中都市もありませぬ。
かわりに、テロ事件、環境問題、ケータイやネットなど見知らぬ未来が、現在となっています。
どこへ行ったんだろう、未来。
戦後、日本の少年少女は、手塚治虫のマンガに未来を見た、といいます。
しかし、実際には、手塚が描いた「未来」は過去の記憶だったことが、近年明らかにされています。
宝塚の新しい物好きの夫妻に育まれた子供は、過去を保存していた。終戦の解放感の中で、戦争や恐慌より以前のモダニズムの記憶を、マンガの上に取り戻そうとしたのでした。
トキワ荘につどった若者たちが手塚マンガの中に見ていた「未来」は、過去の姿だったわけです。
手塚の初期の代表作「メトロポリス」。
起源をたどれば、フリッツ・ラング監督の同名映画があります(1926年)。
巨大な摩天楼を縦横につなぐ透明チューブ。空中を走るクルマ。人間そっくりのロボット。
「メトロポリス」は、世界的に大当たりしたドイツ映画でした。日本では、戦前すでに、マンガ化もされていたそうです。
「ロストワールド」はアーサー・コナン・ドイルの空想小説。「来るべき世界」は、H・G・ウェルズ。ともに戦前、映画化されています。(「ロスト・ワールド」1925年、「来るべき世界」1936年)
手塚初期の代表的な三作品は、すべて戦前のSF映画に起源を持ちます。
手塚はこれらSF映画の古典を、実際見るか、話に聞くかしていたのでしょう。
終戦を迎えた日本で、いちばん伝えたかったメッセージは、彼が少年期に見た「未来」のことだった。
手塚治虫は昭和3年(1928年)生まれ。
翌年は世界恐慌。軍靴の響きが近づく中で、手塚治虫は少年期を過ごした。
日本にモダニズムの華が咲いたのは、大正から昭和初年代の、ほんのひととき。治少年とってはすでに「失われた世界」だったはず。
モダニズムを保管していたのは、手塚治の父・手塚粲(ゆたか)です。父とその所蔵品から、治少年は「来るべき世界」を感じ取っていた。
手塚粲は住友金属に勤めるサラリーマン。治が5歳のとき、宝塚という当時最もモダンな町に引っ越します。阪急の創業者・小林一三は、宝塚を文化都市として建設しました。
粲の趣味は、写真。結婚前は、マンガも描いていたそうです。
おかげで、家には、戦前の漫画家たちの本がずらり。映画も映画館に出かけるだけでなく、自宅で上映会をしたりもしたようです。
アマチュア写真家・手塚粲は、丹平写真倶楽部に属していました。丹下段平拳闘倶楽部ではありません。
このクラブ、日本の写真史では非常に重要な存在だそうです。戦前では最高のアマチュアカメラマンと評される安井仲治がリーダー。
シュールレアリスムや抽象絵画の影響を受けた前衛写真から出発し、やがて社会的な傾向を強めます。
日本に一時滞在していた亡命ユダヤ人の写真を撮りました。杉原千畝の「命のビザ」によって逃れてきたユダヤ人たちです。
モダニズムは恐慌と大戦の中で、その翼をもがれ、地上に目を向けざるを得なかった。
後年の「アドルフに告ぐ」を思い起こします。手塚治虫のマンガに父・粲が出てくることは、ほとんどないと思いますが、むしろ手塚マンガ全体の土台として、影響は深いのかもしれません。
■他者へのまなざし…手塚粲の写真が一枚あります。
■「大阪人」2002年10月号…丹平寫眞倶楽部特集。手塚眞さんが、祖父・粲について語っています。
■George McManus…少年時代の手塚が模写した漫画家。当時、日本の新聞にマクマナスのマンガが掲載されていたらしい。
■漫画家・杉浦幸雄さん…戦前、マンガもモダニズムだったことがよくわかります。
すっかり、見逃していました。
杉原千畝さんに関するお仕事、年末にしました。
たくさんの資料を読みましたが、
手塚氏と間接的につながっているとは、驚きです。
写真、みてみたいです。(もう目にしてるのかも。ですね)
手塚作品、すべて読んでるわけではないのですが、
「アドルフに告ぐ」「火の鳥」「ねこまんが」
が、好きです。
アドルフ〜、当時は、衝撃的でした。
また、読みたくなりました。
最近すっかり戦前ブームなんですヽ(´ー`)ノ
杉原千畝のような人もいて、
戦前日本も単純に軍国主義の一枚岩でない、というのは、
なかなか難しい問題ですね。
また、戦前の文化はすごく豊かで前衛的で面白いんですが、
安易に再評価すると、他のいろんなものまでよみがえらせてしまうところもあり、考え込みます。
「戦争があった」という事実を消すわけにはいきませんから。当たり前ですが。
手塚治虫のお父さんについては、じつはもう少し調べたかったのですが、
ネット上ではあまり情報がなく、また精華大で調べてみるつもりです。
手塚は自伝的なマンガもけっこう書いてるんですが、
その中でお父さんがどう描かれていたかいなかったかなど。。
アドルフはなつかしいです。
出版されたばかりの頃読んで、それ以来まったく読んでないです。
最近はドイツでもヒトラーの再評価(?)が話題になってて、アドルフも思えばタイムリーですね。
週末に読んでみようっと。
アトムのアニメ化に乗り出す以前の手塚治虫の絵が、すごくかわいくて、私は好きです。
やっぱり、戦前の香りがそこにあって、魅了されるみたいです( ・∀・)