AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 九十九夜 第77夜 「猥曲集」

九十九夜 第77夜 「猥曲集」

written by overQ
June 14, 2005


津原泰水まつり
津原泰水まつりは、読んだことのある方はもちろん、読んだことのない方にも、参加していただきたい企画。
ツハラ処女なあなたに、ツハラ読みませんか、ツハラ読め、な企画なのです(;・∀・)

過去記事で津原ネタのある方、よろしければトラックバック・ピーブル「津原泰水まつり」にTBを送ってみてくださいませ。
未読の方を誘惑するフェロモンとなるにちがいないです。

そうですよ、フェロモン。
ツハラは、外に発散するフェロモンがあんまりなくて、内側に入ってはじめて、異様な誘惑者であることがわかります。
本の装丁は大物も起用されているのですが、そのわりに中身を連想させるものじゃない、と岩猿を得ません。
商売的にはじつに不利なタイプなのです(´ヘ`;)

恋愛国の恋愛姫・津原やすみ著さて、ツハラがかつては、少女小説家として活躍してた話、昨日書きました。
そして、私は本日、少女小説家津原やすみの作品、入手いたしました。
このジャンルで、二十冊近く書いてるようです。いや、もっとあるのかもしれません。けっこう人気作家です。

私が入手したブツは、その名も「恋愛国の恋愛姫」。
いや。そう。
私が赤くなることないのですが、「恋愛国の恋愛姫」。
四ページ読みましたが…失神しました。

津原泰水名義の作品だけ読まれた方は、この前世紀の遺物を目にして、気をうしなわ猿を得ないでしょう。

あたしは密かに恋愛姫と呼ばれてる。
あたし自身から、そう呼ばれている。
恋愛国の恋愛姫。
恋愛城の窓辺で頬づえついて。
ハッピーエンドを待っている。
今日は、ツハラ作品の会話のリアルさ・精密さについて、書こうと思ったのです。この人こそが、21世紀の作家であることを証明したくて。
でも、この表紙の前で、どんなに力説しても、説得力ないです。ぜんぜん、ないです。

なんて、紹介しにくい作家なんだ。
これでまた、未読者の皆様には、おおいなる誤解を抱かせたにちがいない。。


というわけで、今夜の九十九夜は、「猥曲集」。

輪・異曲集

猥曲集

1.男だけの島

男だけの島に
女の形をしたモノが
流れ着く。
誰もがそれは何かと
ののしるように叫ぶ。
しかし心の中では
これが何か知っている。
よく知っている。
なぜだろう。
はじめて見るものなのに。
なぜすでに知っているのか。
原始共産主義者だった
男たちの胸のうちに
にわかに所有の観念が芽生える。
煩悶と猜疑の前に立ちすくみ
門の扉を押し開かぬ男たちの前で
女の形をしたモノは
ゆっくりと腐乱していった。
その匂いをかぎながら
男たちは未来についての
夢想にふけった。
男だけの島は
その夢想において
ユートピアであった。

2.恨み歌(とその反歌)

恨み歌。
吸い出すと
中に詰まっている
何か白く甘いものが
口中に広がるものと
思っていたのに。
そうではなかった。
そうではなかった。

反歌。
そこじゃない。
何度言えばわかるんだろう。
そこじゃないのに。


3.戦場綺譚

戦争に行った夫は
下半身だけになって帰ってきた。
それが本当に夫かどうか。
たしかめるすべはひとつ。
そして、その夜
彼女は確信した。
これは夫だ。
前よりも
もっと夫。

それはもう、馬か
虎のようであって
むやみやたらであり
どれほど酷使しても
おとろえを知らなかった。
戦争も悪くないと
彼女は考えた。
ほほえみかけると
夫は黙ってそれに答えた。
男は寡黙なほうがいい。
何事も実行で示すのだ。

彼女はふと思う。
夫の上半身は今も戦場で
戦い続けているのだろうかと。
はじめに言葉があった。
夫は言葉の人。
みずから放った言葉を
忠実に実現しようとするせいで
いつもがんじがらめ。
夫の言葉はいつも
空疎な希望で
彼女はそれに沈黙をもって
答えるしかなかった。
そして夫には妻の沈黙を
微笑と受け取る愚鈍があった。
ああこの男は自分が何を
語っているのか知らないのだ。
微笑みの裏側で彼女は
男を愛について侮蔑する名で呼んだ。

こうして戦争が始まった。

男は高らかに宣戦布告したが
戦争を仕組んだのは女。
勝利も初めから明白。
下半身は押さえてあるのだ。
男たちは頭と口先だけ。
地に足が着いてない。
女はできるだけ
戦争を長引かせた。
もう終わらないかもしれない。
終わりを求めるのは男だけ。
女はずっと終わらないのがいい。

男と女の戦場では
勝利がよじれて敗北とつながる。
女がよじれて男につながる。
何をうれしそうに
雄叫びを上げているのかしら。
馬鹿にしてるつもりが
うらやんでることもある。
うらんでるつもりが
励ましていることも。
ねじれてねじれて結びつく。
切り裂いてみても
もうどこまでもどこまでも
つながりあいつなぎあう鎖が残るだけ。

メビウス化した戦場には
子どもたちが残される。
双子でありひとりは憤怒
ひとりは歓喜と名づけられた。
穴が排泄のためのひとつしかない
無垢な下半身を共有する二人。
互いを面と向かって見詰め合うことは
けっしてないという。
あるいは常に対面していて
自分と同じ顔を眺めながら
愛と憎悪について
日々やむことのない
泡のような言葉を吐きつづけるとか。
その泡粒がたまってやがて大海が生まれ
二人はたがいの下半身が海底で
結ばれあっていることも知らないまま
遠く波のまにまにただよって
悲しい歌を歌うとも。
またあきもせず戦い続けるとも。
云々。


4.八月の破片

八月。
天から落ちてきた無数の肉塊。
それらは
神の断片であると
判明した。
ところが世界中から
くまなく諸断片をかき集め
組み合わせてみても
どうしても一体とならない。
何かが抜け落ちている。
探し忘れたものがあるのか。
それとももとより
神はそのような片端物だったか。
似姿に作られたというヒトにはあって
神にないもの。
それがないせいで
神はヒトよりずっと
神々しく見えた。
また滑稽にも見えたのである。
八月の空は高い。



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コメント

こんばんは。
早速TBさせていただきました!
一番乗りでしたん。

津原泰水さんのHPを以前見たとき、作家活動のところにたしか「少女小説」の記載があったような・・・。
題名まではちょっと覚えてなかったんですが、まさかこんなこっぱずかしい題名だったなんてっ。
パソコンの前でもだえてしまいました。('A`;)オウ

Posted by: moji茶 : June 14, 2005 11:21 PM

今日は、津原風でしょうか?
昨日、のぞいてみたら、まだ誰もTBしてなかったので、
これは急がねば!と思い、綺憚集をとりよせ、
さきほど、読了し、ぼーっとしてるところです。
津原処女脱出!v
いやよいやよも好きのうち。
といった所でしょうか。笑
虫干ししてから、感想にならない感想などアップいたしますね。

今宵の猥曲集。
昔の恋人と、口頭リレー小説で、こんな感じのものを作ったとこがあります。
今日のシンクロニシティにもびっくり。
あ、いや、こんなに整然としたものではありませんが。
overQさん、みてたんでしょうか?どきどき。

Posted by: pico : June 14, 2005 11:52 PM

「恋愛国の恋愛姫」、想像してたよりも強烈…
うちのサイトの常連さんに、「あたしのエイリアン」シリーズの
ファンだったという方がいらっしゃるんです。
「あたしのエイリアン」でも凄いな、違うなと思ってたんですが
「恋愛国の恋愛姫」ですかー…
しかもこの可愛らしい表紙と、可愛らしい文章。
4ページで失神するのも分かります。(笑)

あとがきはありましたか?
X文庫のあとがきって、ものすごくきゃぴきゃぴしてますよね。
小野不由実さんも。(笑)
どんな文章で、どんなことを書いてるんだろう…と
それが実は一番気になります。(笑)

Posted by: Site icon 四季 : June 15, 2005 7:20 AM

★moji茶さん。

やすみん時代のツハラ、すごいです、イタイです。
八年間で、少女小説、三十冊以上書いたみたいです。
このジャンルでナンバーワンになろうとしたのかもしれません。
やめたのは、萌えつきた…せいでしょうか(;・∀・)
人気もあったようで、あとがきは、ファンとの手紙のやりとり欄になってて、
まるで掲示板のようでしたヽ(´ー`)ノ

Posted by: Site icon overQ : June 15, 2005 11:08 PM

★picoさん。

一冊目の津原、いかがだったでしょう。
意外と、なんてことない、と思われたかも。変わってるけど、予想の範囲内ではある、というような。
ふっふっふ。
ここからが罠の始まりなのです。

二冊目に、そっと「赤い竪琴」をおすすめしておきます。
何も言いますまい。
「なんじゃこりゃあ〜」となるのは、じつはここからなのです。。

Posted by: Site icon overQ : June 15, 2005 11:16 PM

★四季さん。

「恋愛国の恋愛姫」。
あとがきは、12ページもありました。
ファンとの濃密なやりとりで、掲示板状態です。
前作のあとがきからの続きになってて、ファン以外立ち入り禁止みたいになっています☆

どうしたら作家になれますかとか、ファンクラブをつくってもいいですかとか、
そういう質問にていねいに答えています。
女性作家ということにしてたらしいので(笑)、妙にテンション高いです。
この仕事はさすがに、三十過ぎたらつらかったにちがいないです。

Posted by: Site icon overQ : June 15, 2005 11:24 PM

どうも。
ツハラ・ヴァージンですが、何か。
ワイキョク集面白かったんですが、
ツハラの漫画の表紙を前にして、
困惑を隠せません。
処女の恥じらいってやつかすぃら?

Posted by: Site icon ne_san : June 16, 2005 2:26 AM

★ne_sanさん。

こちらこそ、どうも。

始まりの言葉って、なんというか、語調を整えるためにも必要な気分になりますが、
いつも「こんばんは」ばかりでもよくない気がして、
最近、悩みます。

ツハラの過去、イタイです。
五年後、同じツハラに、金子國義が表紙絵を提供しています。
よくなってるのか、悪くなってるのか、わかりませんが。。

Posted by: Site icon overQ : June 16, 2005 11:07 PM
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