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津原泰水「妖都」

written by overQ
June 18, 2005

津原泰水まつり

妖都「妖都」は、非常に美しい本。金子國義・装幀、京極夏彦・デザイン。97年に出版。作者自身、「歴史的名装丁」と呼んでいます。
裏表紙には、各作家からの絶賛の嵐。

「この傑作のためならば、どんな賛辞も惜しくはない」綾辻行人
「世紀末はその肖像を描きうる、稀なる幻視者と遂に出会えた」井上雅彦
「ホラーという様式を限りなく美しく踏襲しながら、既成の枠を突き抜けて新しいステージに飛翔していtった」小野不由美
「ついに本格ホラーの超新星が現われた」菊地秀行

少女小説家、津原やすみ(以下、やすみん☆)が、ホラー作家・津原泰水として生まれ変わった瞬間でした。

やすみん☆は、八年間で三十冊あまりの少女小説を出版。このジャンルではなかなか人気だったそうです。
私が目にしたのは、「恋愛国の恋愛姫」(93年)だけですが、

あたしは密かに恋愛姫と呼ばれてる。
あたし自身から、そう呼ばれている。
恋愛国の恋愛姫。
恋愛城の窓辺で頬づえついて。
ハッピーエンドを待っている。

と、たいへんこっぱずかしいシロモノですた。

面白いことに、やすみん☆は、この時点ですでに「古くさい」感じがある、と読者に思われてたらしい。
それは、この作品(「あたしのエイリアン」シリーズ)が、80年代を舞台にしているから。作者自身あとがきで、そう説明しています。

少女小説家をやめてしまったのは、あるいはこのことと関係があるかもしれません。
90年代後半、彼が思っていたような少女小説が成り立たなくなった。少女は、変質してしまった。あるいは、自分自身が。

「妖都」は、東京を舞台とし、少女たちが主要な登場人物。
変質していく魔都・東京が、主人公だといっていい作品。東京が、裏側で、べつな東京に侵食される。それは、路地裏のような、東京の末端から始まるが、同時に市場や権力の中心部にも、侵攻していく。

不思議なことに、あらすじを書くと、さほど面白くないのです(汗
賛辞を寄せてる作家四人も、内容についてはいっこうに触れていません。はじめての人は、どんな作品か、よくわからないですね(w
でも、実際に読んでみると、極上のエンターテイメント・ホラー。
(しかし、装丁はアートすぎて、これがまた内容を裏切るのですが(;・∀・) 金子國義のせいで、エンタメ作品としての売れ行きは落ちてるかも。このあとも、ツハラ全作品に、装丁と内容のギャップ問題がつきまといます。内容が一般的なイメージに還元しにくいのかもしれないです。)

ゾンビでも霊でもなく、名前もつけられない存在が、荒れ狂います。それは、幻想よりも非現実的でありながら、悪意においては、現実よりも現実的。
つまり、そのようなものが、90年代の東京であり、少女たちを侵食するもの。
津原は、少女を見限ったわけではなく、むしろ少女をフォローするために、少女小説家をやめたのかもしれません。

「女性」少女小説家であった津原(ほんとは男性)は、ここでは両性具有の物語を書きました。
自己複製の劣化とか、商業音楽のこととか、面白そうな主題はあるのですが、作中、必ずしも深く追求してはいません(のちのツハラ作品で、形を変えて出てきます)。

東南アジアの神話を下敷きにした物語は、じつは最後までまっとうされなかったかもしれませんが(笑)、文章(とくに会話)が面白く、並べられる材料も興味深い。巧妙というより、パワフルです。

ホラーの中核をになうよう期待された津原泰水。
しかし、この後、独特のジグザグな飛躍をみせ、人々を当惑させるのです。。



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