歯が、痛い…わけではないのですが、なんか、痛くなりそうな気配がある。そこはかとなく。
歯が痛くなるときって、たいがい体調が悪いとき。
カルシウムの代謝と関係してるのでしょうか。それとも、神経の問題でしょうか。口内細菌の構成が変化するのでしょうか。
というわけで、早く寝なければ(笑)
久しぶりの九十九夜ですが、今夜のは「奈落」。
やっぱり歯が痛くなりそうな気が…。
奈落
町は世界の終わりにあった。
市街の向こうは奈落に続く断崖である。
道はすべてそこで途絶え
川は滝になって深遠に落ちていた。
ときどき崩落があり
世界は少しずつ狭まっていた。世界の涯てに住む人の多くは
けっしてもともと
このような辺縁に
住むつもりはなかった。
崩落が続いた結果
その住処が世界の終わりとなったのだ。しかし一部のものらは
恐れや勇気から
奈落の闇に誘われるように
集まってきもした。
末端の危うげな土地にこぞって住み
事の次第もわきまえもせず
深遠を覗き込んだ。
いちどその無限の闇を目にすれば
闇はそのものの名を銘記するという。
崩落はその記述にそって
順次進んでいくのだった。
老いたものたちは
世界が深淵を知らない時代を
懐かしんだ。
その頃
世界のあらゆる地点は
中央であった。
世界は無限に広がる希望であるか
あるいは球体の内面にあって
円満に閉じているのだった。しかし当時もすでに
一部のものは
世界に涯てのあることを
知っていたという。
いくつもの山と海を越えた先に
断崖絶壁があって
その向こうには黒々と
無限の闇が口を開いていると。
このことは秘中の秘として
多くの人々から隠されていた。
それでも世界の秘密は
そこはかとなく漏れ出て
生涯を旅に費やし
世界の涯てにたどり着くものはいて
あとを絶つことがなかった。世界の終わりにある町は
とても静かであった。
ときどき崩落の轟音が鳴り響く。
それが去れば遠く耳鳴りのように
奈落に落ちていく人々の叫びが聞こえた。
絶望とも歓喜とも聞こえ
そのことについて話すものは少なかった。
崩落がしばらくやんだ
月のない静かな夜には
ずうっと以前に奈落へと
沈んでいった人々の
残響がこだましてくることがあった。
奈落は無限に深い無限の闇。
いったん落ちれば
どこにも落着することなく
ただ落下し続けるのではないか。
世界の涯ての
果てしない闇。
叫びはもうただの悲鳴ではなく
恐怖というものに底がないことを
示しているのではないか。
世界の涯ての町に住むものたちは
それについて語ることはない。
ただじっと耳を済ませて
自分の心に広がる闇を見据えるだけ。あるものは世界の端は
広がっているという。
あるものは世界の端は
狭まっているという。
翼を持つものたちは
すでに気づいていた。
世界の終わりはすでに
輪の形をなした奇蹟となり
世界を完全に包囲している。
残された世界は
もう闇の中を落下し始めていて
翼を持つものですら
重力のさだめを見失って
飛行と落下の区別がつかない。
時と生をよろこびと感じる本性のものにさえ
ふいに恐怖の影が忍び寄る。
崩落のとどろきは
いたるところから
聞こえるようになっていた。