AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 九十九夜 第89夜 「見えない町」

九十九夜 第89夜 「見えない町」

written by overQ
July 18, 2005

花まんま今日は、直木賞作家の人の本を買おうと、本屋さんへ行きました。
直木賞の人は、朱川湊人。
40過ぎの作家ですが、デビューは最近で、まだ四冊くらいしか本がないみたい。でも、直木賞候補はこれで二回目だったとか。ジャンルはホラーらしい。もとは出版社勤務だそうです。

私は、この人を全然知らなかったのです。七生子さんが、あらすじつきの書評を書いておられたのを読んで、面白そうだわさ、読んでみたいと思って、本屋に行ったのです。ちょうど暑いし、ホラーも読みたかったのです。

都市伝説セピア朱川湊人。
シュカワミナト、と読む。私は読めませんでしたorz
というか、名前自体うろおぼえなまま、本屋に行ったのです。…だって、直木賞だもの。平積みされてるに決まってるから。

ところが。
ないです。いろんな本が平積みされてるけど、直木賞ないです。前々回の直木賞の奥田英朗の新作はあれども、シュカワないです。ショックです。
売り切れ? いや、たぶん、ちがう。七生子さんも「地味」と書いておられました。ツハラほどではないにしても、地味だから、本屋さんに在庫もなかったか。こころなしか、津原泰水と名前の字面が似てなくもない、朱川湊人。

近所の中くらいの本屋さんです。
店員さんに訊ねようかとも思ったのですが、名前がわからん(´ヘ`;)
「こないだ直木賞をとった人」
と質問するのはどうか。しかし、店員さんはバイトの人らしく、こう切り返されると、困る。
「ええと、名前なんでしたっけ?」

こうして、やむを得ず、ほかの店に向かいました。四軒回って、どこにもなし。
もっとデカい書店に行けば、あったんでしょうが…。

結局、図書館に。
図書館は、もう借りられてるだろうと思って、行かなかったのです。
でも、図書館には新聞があるから、過去新聞で直木賞の記事を探せば、名前がわかる。
こうして、ようやく朱川湊人にたどりつき、シュかアカかアケかだろうと棚を探して…見つけました。
つまり、誰にも、借りられてませんでした(;・∀・)

そんな暑い夕暮れを過ごした一日。

今宵の九十九夜は、「見えない町」。
これって、もしかして、既出かも…(汗 検索していちおう確かめたけど、なんかデジャヴを感じる。
どれがすでにアップしたやつだったか、わからなくなっている始末な私。やっぱり90というのは多いですわ。過去ログが、ゴミ屋敷化していく…。

見えるかにゃ

見えない町

人体欠視症というらしい。
人の姿が見えない。
いつも無人の街を歩いている。
大勢の人がいるはずだが
私には見えない。

病気になってから
好んで人通りの多い
…はずの…
場所を歩くようになった。
以前はにぎやかなところは
苦手だったのに。
いや、それは今も、同じだ。
街は静かだ。
私ひとりのものだ。



テレビは見るが
声が聞こえない。
文字も欠視するので
言葉は自分の頭の中で
いつもぐるぐるめぐるだけ。
ニュースとドラマの区別がつかない。
事実なのかフィクションなのか。
本当にあったことともたとえ話のようだし
なかったことも真理のようだ。
科学は魔法めいてくるし
歴史は神話の中に溶け込んでしまう。

日常生活に支障はない。
憶えてないだけで私はちゃんと
ふつうに暮らしているらしいのだ。
町で人とぶつからないのは
人を認識しよけているから。
病院にも通っているはずで
人体欠視症という語も
そこで憶えたにちがいない。
脳が記憶をでたらめに編集している。
もう一人の私がいて
多くの出来事を隠している。
…そんな知見も
医者から得たものかもしれない。

あるいは、ときどき
こんなことも考える。
私は本当にひとりきりなのだと。
人類はよんどころない事情で
すでに滅んでおり
私一人が生き残っている。
町にひとけがないのも当然だ。
私はさみしさをまぎらわすため
人体欠視症なる妄想を
つむぎだしているのだ、と。

証拠はある。
生きた人は見えない私も
死体は見えるのだ。
最近になって町で
死体を見かけることが増えた。
爆発もあり建物が崩れ
血のにおいがする。
戦争が起きているのかもしれない。
わからない。
テレビはそんな映像を映し出すが
それはずっと昔からそうだった。

死体とも呼べないような肉片が
あちこちに散らばる瓦礫の町を
それでも私は好んで歩く。
ときどきは戦いさえするようになった。
気がつくと自動小銃を構え
崩壊したイタリアレストランに向かって
射撃を繰り返している。
なにものかが撃ち帰してもくる。
姿は見えない。
何と戦っているのか。
わからない。
敵なのか。何なのか。
何の目的で町を破壊しているのだろう。
存在するのだろうか。
ともかく私は自分の身を守るため
撃つ。
果たしてそれが防衛に
なっているかさえ不明だが。

夜、眠るとき
夢に落ちるまでの間
善や悪の問題について
考えることにしている。
病気になる前
それはたしかに
重要なことだった。
今では
問題の意味さえ
わからなくなった。
善悪の区別がないだけでなく
その二つとも
初めからなかったように思える。
ないものについて考えることはできない。
それで熟睡できるのだ。

※「人体欠視症」は、川端康成の未完の遺作「たんぽぽ」に出てくる、心の病です。




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コメント

七生子です、こんにちは。
この夏一番の暑ささったのに…大変でしたね。
お疲れさまでした〜。
もしかして朱川湊人さんの直木賞受賞で一番大変だったのは、
出版社の方かもしれません。
現在、重版中らしいです^^;>『都市伝説セピア』。
『花まんま』の装画、地味なんですが…表題作を読み終えると
「なるほど!」と納得できるかと思います〜。

Posted by: 七生子 : July 19, 2005 10:58 AM

“臨時出張所を設置しましたのおしらせ”
のタイトルをみてきてみたのですが、
おしらせは、みあたらず。
私だけ、みえないのでしょうか。
みえていたものがみえないのと、
みえていなかったものをみようとするのとは、違うのですね。
ラストの一文が、こわいです。

実は私、最初、津原さんを、津原湊人だと思っていました。
本を購入した時点でやっときづいたんでした。
朱川さんの本、わがやの近くの本屋4件も、おいてありませんでしたよ。
出版社さん、大変ですね。

Posted by: pico : July 19, 2005 3:10 PM

★七生子さん。

こんばんは!
今、「都市伝説セピア」を読んでます。三つほど読みましたが、なかなか面白いです。一話目のアイスマンが、なつかし怖くて、よかったです☆

きっと、もともと刷ってあった部数が少なかったんですね。
平積みしたくても、出版元にもないということでしょうか(笑)
すでに二回目の直木賞候補だというのに、なかなかきびしいものが。
映画とかドラマになるとかしないと、なかなか作品の質だけでは、注目されにくいってことで、
それは新人の場合は、やむをえないのでしょうねぇ。。

四冊しかないので、朱川さん、全部読もうと思っています。
ホラーらしい、いい作品で、安心して読めます(笑)
図書館で借りられるし( ;∀;)

Posted by: Site icon overQ : July 19, 2005 7:52 PM

★picoさん。

ご迷惑おかけしております(´ー`)
コメント欄の調子が悪かったので、ちょっと臨時でほかのブログサービスに移動しようかと思ったのですが、
しばらくコードをいじっているうちに、直りました(笑)
むかしのテレビみたいです。叩いて、直す。

朱川作品、レアです!
もともとの出版部数が少ないんですね。大型書店が平積みしてしまうと、もう出版元にも在庫がない。
それで、中規模の書店では、平積みはおろか、本自体がないということのようです。

ほかの直木賞候補の人だと、すでに作品もいっぱいあり、映画やドラマにもなってて、刷り部数もはじめから多いのでしょうが、
朱川さんは、まだ著作四冊で、知名度が非常に低いッ。

でも、作品はとても安定してて、ホラーの王道。まだまだよくなりそうな気配も濃厚です。
まあ、40過ぎてるので、年の功があります。
逆に、猛烈に応援したくなりましたヽ(´ー`)ノ

Posted by: Site icon overQ : July 19, 2005 8:01 PM
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