実相寺作品といえば、まず思い浮かぶのは、やっぱり円谷特撮物。ウルトラマン、ウルトラセブン、そして怪奇大作戦での、突出した天才ぶりです。
★狙われた街
ジャミラやスカイドン、あるいは怪奇大作戦のあの岸田森(怪獣と同列か)…すごいものはいくらでもあるのですが、一作となると、ウルトラセブン第8話「狙われた街」。
メトロン星人とちゃぶ台です(笑)
かっこいい演出、最近ではスタイリッシュとか言われるそうですが、「狙われた街」の常軌を逸したクールさ。
当時はテレビも小さくて、きっと白黒も多かったにちがいないから、この演出のすごさがほんとに理解されるのは、ビデオが出始めてからと思われます。あるいは、今、DVDになって、はじめて。
演出の特徴は、まずカットのつなぎの鮮やかさ。
運動神経がいいというか、急激からゆったり、遠かったり近かったり、静かと思えばノイズ、クラッシックの断章から誰かの聞く遠いラジオ、それらのコントラストのタイミングが小気味いい。
★画面を切り取る
そして、遮蔽物!
カメラの前にはなにかと邪魔するものがあって、肝心のドラマはいつも画面端っこの、変な形の空間に追いやられます(笑)
右は、フルハシ隊員(のち毒蝮三太夫)が、毒物にやられて大暴れの図。
目をうつろにしての大熱演ですが、画面が狭い狭い。机が邪魔して、空間が四分の一もないです。
この手のショットは、ほかにもいっぱい出てきて、画面はいろんなものにさえぎられます。そして、端っこの変な形のところで、役者さんたちは演技します。
たぶん、昔の小さいテレビだと、何がなんだかわからんはずです。
実相寺監督は、円谷プロでは、いわば三男坊のような立場にあったそうです。好きなこと、やってみなはれ、と放任されてたらしい。だから、何をしても許される!
そして、なんと言っても衝撃的なのは、ウルトラホーク1号コクピット。
上から俯瞰するのですが、通風孔ごしです(;・∀・)v
というか、そもそも通風孔など、ウルトラホークにあるのか? 何のために、わざわざここから写さねばならないのか??
かつ、0.5秒もない一瞬のショットですから。子供には、何がなにやらわかりますまい。
キリヤマ隊長も、まるで隠し撮りされているようです。すでに、この頃から、屋根裏の散歩者撮りが。。
画面を変な形で切り取る…実相寺演出の方法です。
なぜ、そんなことをするのか…わかりません。監督に聞いてください。
わからないけど、画面がぜったい四角くなければならないわけでもないです。かっこよければ、それでいい。目に気持ちよければ、それが映画。それがケレン。シチズン・ケイン。
★逆光の芸術
遮蔽物のほかにも、極端な逆光で、画面は黒部分に切り抜かれます。
みなさんが会議している図ですが、幾何学模様の抽象画みたいになってます。異様です。
ここでは、四人アタマになってますが、もうちょっとカメラが寄って、二人アタマやら一人アタマに切り替わりもして、デザイン性はますますアップ。
映像で奏でる音楽のような、小気味いいテンポで、画面が切り替わる。
そして、誰これ。
まっ黒で、顔、わかりません。演技も美形も何もないです。うかうかしていると、写ってるのが人間であることさえわかりません。背後の障子のサンといっしょになり、幾何学模様を形成しています。人間じゃなくてもよいのです。
この手の逆光は、アンヌと諸星ダンに多用されがちな気もします。
演技が下手だからなのか。アップに耐えないからなのか。役者は不信感を募らせる可能性が。
でも、かっこいいんだ、これが。それで、ゆるされる。
★ちゃぶ台と宇宙人
「狙われた街」で、いちばん有名なのは、ちゃぶ台のシーン。
ちゃぶ台をはさんで、メトロン星人(侵略者)と諸星ダン(ウルトラセブン)が、畳にあぐらでご対面。
撮影中はスタッフが笑い転げていたそうです。
場末のおんぼろアパートの一室。湿っぽい畳の上で、宇宙人たちがざっくばらんに(?)、地球侵略の是非について語り合います。
小津映画のように、カメラ位置が低いのもポイント。
さらに、背後にはちゃんと冷蔵庫もあり、冷蔵庫の上には水差しもあり、たいへん所帯じみております。メトロンさんの地味な日常が彷彿と。好物はチキンラーメンの気がします。
これって、たぶん、当時の過激派のアジトのイメージが反映してるんでしょうね。安アパートの一室が、じつは地球侵略本部だという設定。
そして、最後の戦闘シーン。夕暮れ。
メトロン星人が非常に美しい。ウルトラセブンの怪獣や宇宙人、ロボットは、デザインが秀逸(成田亨・池谷仙克)ですが、メトロン星人も屈指の美形キグルミ。
戦闘の最初のショットが、いきなりメトロン星人さかさま。
ドブ川の水面にうつった、夕暮色のメトロン星人。泡がブクブク浮いてる汚い水路なのに、なぜだか異様に美しい。ウォン・カーウァイもびっくりの、きたない=きれいが、すでにここに。
奇矯なものへの愛情が、色彩となりフォルムとなる。エヴァにも強烈に影響しています。奇矯さゆえに滅んでいくものが、いとおしくてしょうがない…というのが、実相寺監督の世界観のように思えます。
ウルトラセブン第8話「狙われた街」
放映日・昭和42年11月19日
監督・実相寺昭雄
脚本・金城哲夫
特殊技術・大木淳
円谷プロ/TBS 1967年
[そのほかの実相寺作品から]
最近、どんどんDVD化されてる、実相寺作品。
●怪奇大作戦第25話「京都買います」…これでしょう。失われゆく日本への偏愛という、「哥」などに見られる実相寺映画のモチーフも。
京都在住者は、知ってるところが出てくるのも楽しいです。東福寺とか、黒谷さんとか。
そして、怪奇大作戦といえば、岸田森。シリーズを通じて、ジャケットの羽織かたや、タバコを手と口でもてあそぶしぐさを、いつもかっこよく工夫してます。細身の男性は練習して真似すると、もてます(笑) 実相寺+岸田の力作は、「歌麿・夢と知りせば」。
●「D坂の殺人事件」…乱歩作品を映画化したものでも、屈指の名作。実相寺監督はもう一作、「屋根裏の散歩者」も映像化。「屋根裏」を見てから、「D坂」を見るとよいです。なぜなら、明智を演じる嶋田久作が、見事に明智小五郎の成長を演じ分けているから。この明智解釈はすごい。なぜかDVDがまだです。
●「波の盆」…1983年文化庁芸術祭大賞を受賞したTVドラマ。監督・実相寺昭雄、脚本・倉本聰、主演・笠智衆という不思議な組み合わせで描く、ハワイ移民の物語。笠智衆、英語もしゃべりますだ。
●ウルトラQ〜 dark fantasy 〜 第24話「ヒトガタ」 第25話「闇」
…昨年放送されてた、ウルトラQの新シリーズ。実相寺監督も2作を担当。実相寺色が濃くて、なかなか面白かったです。
Moo-TblogのKOuです。
むちゃくちゃかっこいいじゃないですか!!!
すげーーーー!!すげーーーー!!!
日活ロマンポルノといい、日本の映画界は、なんでこうもまた、変化球なところでしか才能が発揮されないんでしょうかねぇ…。(理由はわかるような気がするけど、あえて言わない。)
Posted by:KOuさん、こんばんは。
かっこいいでしょ、狙われた街ヽ(´ー`)ノ
実相寺監督の作品の中でも、いちばん鮮やかに切れてる作品と思います。
ジャズのすごいアドリブみたいに、感覚だけで思想も何もはるかに超えた地平に突き抜ける感じがします。
ウルトラセブンじゃなければ、もっと広く映画ファンにも見られるのかもしれませんね(笑)
でも、やっぱりここからしか、こういうものは出て来れなかった気もしたり。
実相寺監督は、それでも、生き残ったのが、すごいです。まだまだ現役監督!
特撮ファンが支えたんですよね。芸術映画だけでは、こうはならなかった。
可哀相な怪獣をいとおしむことではじめた実相寺監督のキャリア。
特撮ファンはそれを見逃さなかった。えいぞうのかっこよさだけじゃないことを気づいてたように思います。
実相寺監督のキャリアには、人生の妙味があるなあって思いました。
overQさん、大変ごぶさたしております。
このエントリーを拝見して、
早速「狙われた街」を見てみました。
実相寺監督初心者の僕にとって、
やはり圧倒的な映像美が心に残りました。
ウルトラホーク通気口?からの俯瞰ショットなど、
overQさんがチェックしていた場面以外にも、
すばらしい画面/色彩構成によるシーンが溢れていますよね。
それは、約25分間、まばたきを忘れてしまうほどのものでした。
“セブンとメトロン星人の戦闘シーンの短さ"が
この回の「濃度の高さ」を物語っている気がします。
いやー、イイものを紹介してもらって感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございます!
★nodocaさん。
こちらこそ、ご無沙汰しております(;^。^)
「狙われた街」は、やっぱりマスターピースですよねぇ。
最初の材木置き場から、猛烈なショットの連続で、クラクラ来ます(笑)
でも、当時のテレビだと、小さいし写り悪いし、まだ白黒も多かったので、
何が映ってるのかわからなかったかも。
そう考えると、この作品のすごさって、今、DVDが出現して、はじめて見出されつつある可能性も。
音楽やサウンドの使い方も、ほんとに斬新で、
ヘッドフォンで聴いて、はじめて面白味がわかるようなところもあります。
実相寺昭雄は、このあと、ウルトラセブン12話「遊星より愛をこめて」も監督します。
ところが、この作品、原爆をネタにした宇宙人が出てくるということで、クレームがつき、
ビデオにもDVDにもなってないです。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Theater/8207/ultra7_12story.htm
実相寺監督の履歴を見ると、ときどきこんな「事件」があって、ほされた経験も何度かあるようです。
最初期の仕事である、ウルトラマンのジャミラや怪獣墓場のお話が、
今から見返すと、監督の人生を予見していたようで、なかなか感慨深いものがあります。