AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 「七人の侍」の麦秋

「七人の侍」の麦秋

written by overQ
August 24, 2005

七人の侍ここ数ヶ月、そこはかとなく、麦秋にとり憑かれています。

麦秋
麦の秋とは書くけれど、実際の季節は初夏。麦畑が黄金色に色づく頃の季語。
ほかの命が、これから盛りを迎えるという時期、麦だけが独り、収穫のときを迎える。
早すぎる死。夭折。英雄の伝説。

麦秋黒澤明監督「七人の侍」も、麦秋物(?)であることに気づきました。

たいへん有名な映画ですが、古いので(1954年)、見たことない方も多いかもしれません。
ある村が野武士に襲撃されそうになる。農民たちは、サムライを雇って、村を防衛することを思いつく…というお話。
七人の侍が集まり、野武士と戦います。

「七人の侍」は麦秋から始まり、稲の田植えで終わる映画です。

野武士集団は高みから村を見下ろし、麦が収穫されるのを待つ。
第一部は、百姓が町に出て、めぼしいサムライを集めるエピソードです。つよいサムライとは何かをめぐって、おもしろいシーンが続きます。
百姓は、サムライをやとうため、結局コメしか持ってない。しかも、麦秋のこの時期、残り少なくなった米なので、サムライには銀シャリを喰わせるけど、自分たちはアワ・ヒエを食べる、という状況。これが、たくみに第三者から指摘され、サムライの思いに火をつけます。

休憩です第二部の冒頭は、麦を刈るシーン。
そう。二部構成です、七人の侍。途中で、「休憩時間」が入ります。
「アラビアのロレンス」なんかもそうですが、なんだか楽しいです。「演出」として、機能する可能性もありそう。最近のシネコンだと、観客の管理が難しいので、嫌がられるかもしれませんが。

三船と左朴全第二部は、いよいよ決戦。
その冒頭が麦刈りです。
早すぎる死、英雄の伝説…が微妙に暗示されてないでしょうか。
野武士と戦って、「本当の意味で強い」サムライたちが、死ぬかもしれないことが、ひそかに予告されている。
ミフネ演じる菊千代が、とりわけ麦(刈り)とリンクして描かれているのも、なかなか味わい深いです。地に足が着いてない動作も素晴らしい。

もう何度も見てる作品だけど、麦秋の象徴性、今回、はじめて気づきました。
これまで、麦秋というものを知らなかったので、見てても全然意識できてませんでした(;・∀・)
それに白黒映画なので、麦秋の持つ黄金色の悲壮感、見えなかったです。

田植え歌さて、戦いすんで。
映画の最後は、田植えのシーン。
野武士との戦いで死んだサムライたちの墓と、田植え歌で盛り上がる農民が、交互に描かれます。
麦=英雄の時期は過ぎ、稲=農民の時代が始まる。農民たち(稲)がこれから盛りを迎える季節、サムライたち(麦)はサクリファイスとなってすでに死んでしまった
また、それが七人のサムライたちの希望した未来でもあったのでした。

墓は四基しかし…悲しい。

農民の娘と恋に落ちた若いサムライは、生き残る。でも、娘といっしょになるわけではないのでした。
娘は、同じ百姓の男…妻を野武士に奪われた男と結ばれることが、田植え歌の掛け合いで暗示されます。

また、百姓出身でありながら、サムライになろうとした、両義的なトリックスター菊千代(三船敏郎)は、戦いの中で死んでいる。それが、サムライ…ということなのか。

力のあるもの(それは「知的に」そうであるインテリでもいい)が、高みから見下ろして、力ないものに対して「よきにはからう」。
それに異議を唱え、「しもじも」のうちに入ろうとするけれど、サムライは所詮サムライ。「しもじも」もまた、それなりにしたたかであり、利用されるだけ。
「あいだ」に立とうとするものの悲劇喜劇としてのサクリファイス
そういうことが問題として、当時の、とくに左翼的な知識人にはあったんじゃないでしょうか。ドストエフスキー的、といってもいいけど。ヴ・ナロード。
…そんな時代の思潮も反映してるのかもしれません。

ともあれ、今見ても、何度見ても、素直に面白く、深読みもできる、生きた古典「七人の侍」。
麦と稲の対照的な描き方で、サムライと農民の生き方を象徴…たぶん、クロサワの意図的な演出と思うのです。(というか、基本的な読み方で、気づいてなかったのは、私だけ?)
麦秋の象徴性は、宮崎アニメにも現われます。金色の野に降り立つべし。クロサワから伝播したものかどうかは、ちょっとわからないですが。

◆「七人の侍」
監督●黒澤明
製作●本木荘二郎
脚本●黒澤 明/橋本 忍/小国英雄
撮影●中井朝一
出演●三船敏郎/志村 喬/稲葉義男/宮口精二
千秋 実/加東大介/木村 功/津島恵子 ほか
配給●東宝 (C)2002 TOHO CO.,LTD.

七人の侍
七人の侍

黒澤明 東宝DVD オフィシャルホームページ



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コメント

 「七人の侍」をDVDで見て、その音声の復元に驚きました。それまで2度見ていたのですが、音がひどい状態だったので。
 志村喬の役所がやはり素晴らしいですね。侍として美しくありながら、侍の惨めさを知り尽くしている人。
 「戦隊物」の要素なんかもあって、本当に面白い映画ですね、これは。

Posted by: LSTY : August 24, 2005 10:45 AM

DVD、すごい技術で復元したようですね。
DVDの公式サイトにも、とうとうと説明が述べてありました(笑)

意外と見たことないって人も多いらしい「七人の侍」。
有名すぎて、引くみたいですw
あと、長いし白黒だし。
テレビでもそんなにはやってないんですよね。

志村喬のおでこの鉄のやつ、欲しいですヽ(´ー`)ノ

Posted by: Site icon overQ : August 25, 2005 6:24 PM
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