帰ってきたよ、津原泰水まつり! 今回のバナーは水色だ!
というわけで、やすみんの新作「アクアポリスQ」、ようやく読みました。
それは未来の日本。
〈空虚〉と呼ばれる出来事を境に、世界は一変した。
空から何かがやって来たという。人々は志をうしない、希薄化した。彼らはもう日本人ではないかもしれない。
〈希薄者=ペール〉と呼ばれる。そのうつろな胸に〈ルーラ〉が憑依する。
憑依されると、世界に無関心だった希薄者が一変し、怪物と化す。〈モンスタレーション〉。それは精神だけでなく、肉体にも及ぶ。
日本は怪物が跋扈する世界となった。混乱のうち、日本政府に取って代わり、〈統治府〉がこの国を支配する。
「こころざしある国」を取り戻すべく、量子コンピュータ〈ACE=切り札〉の下す政策。
怪物化を防ぐというサプリメントの配布。SSSと呼ばれる教育機関の設置。〈空虚〉後15年。
怪物化は沈静し、表面上は安定を取り戻しつつある日本。
混乱期に水没したQ市。
その海上に作られたアクアポリス。五芒星の形をした海上都市。タイチは、Q市で生まれ育った少年。
学校で巨大な黒牛を目撃した同級生カンナとともに、事件に巻き込まれていく。
アクアポリス設計者にして、蘆屋道満の血族と名乗る謎の女J。
憑依に操られず、逆にこれを手なずけるという〈空虚者=エンプティ〉の存在。
そして、Q市の忌まわしい過去へと、タイチの冒険はみちびかれていく。。
あらすじ…というか、この物語の世界設定はそんな感じです。
作品だけ読んでも、ちょっとわかりにくいかもしれないですが、背景に大掛かりな設定をもっている。じつはこれ、単独の作品ではないらしいのです。
同じ世界観を共有した、複数作家による自由な共作空間、
の一部。
津原さんはその中心メンバーのひとり。プロデューサーみたいなもんらしいです。
アクアポリスQ公式サイトには津原氏署名入りで、シェアワールド(世界観共有)の宣言が述べられてます。
津原さん以外では、山田正紀、牧野修、森奈津子、瀬名秀明、吉川良太郎が参加。
徳間書店「SF Japan Vol.10 2004 WINTER」が、憑依都市プロジェクト特集号。この号が伝説とならんことを。
ラブクラフトの著作から、クトゥルー神話のさまざまな作品が生まれたように、Q市にまつわる物語を、誰もが自由に創作することができる、というもの。
+
Q市。
四割が水没した都市で、その海上にアクアポリスというハイテク都市が作られている。
ワイヤーで繋留され、波による揺らぎをスーパーコンピュータで制御している…という設定。
不安定な土台の上に作られた、仮象の都市。
この設定は、「少年トレチア」と同じもの。
トレチアの舞台は、東京郊外のベッドタウンに建つ高層住宅群「緋沼サテライト」。
沼地を埋め立てた土地で、ナマズならぬ怪魚マカラのふるえが、子どもたちのあいだに「噂=都市伝説」という形で侵入し、やがて町を崩壊にみちびく。
不安定な土台の上でかろうじてバランスを保つ、塔のようなハイテク都市。
心の底では「崩壊」を待望している。
…津原作品の比喩になってる気が(;・∀・)
「アクアポリスQ」も、海上にただよう都市を舞台にし、異界の侵入を目撃した少年少女が、物語を紡いでいきます。
「トレチア」とは大きく異なる後半が用意されています。
一方で、この設定は現在の日本を象徴しようとしているし(空虚=平成)、また作家主導(手動?)のプロジェクトを立ち上げ、荒波に打たれてることもあいまって、今回はアグレッシブです…ツハラ的に。
+
たいへん面白い世界設定なんです。
SFとしてもホラーとしても、謎を追うサスペンスも、また社会批判もあるし、ヴィジュアル的な面白味もある。
しかし、SFやホラーのジャンル物として読もうとすると、人を当惑させる何かズレがあるんだ、いつものように。
ど真ん中かと思ってバットを振ると、そこに球はない、消える魔球。
どのような読者がこれを迎え撃つべきなのか、出版社も当惑するにちがいない。
フツーの作家ならもっと長いものを書くのではないでしょうか。
しかし、ツハラはちがう。飛躍の多い文章で、あやうい綱の上をスキップしていく。
口絵の寺田亨以上に、はじける一瞬のみを描出、要点しかおさえない。
ひとつひとつの結束点をしっかり解きほぐすと、きっと面白いのですが、読者はそんなに長々と作品を噛みしめないように思えます。
私たちの醜いアヒルの子である津原泰水。彼は自分が白鳥であることを知らない。
短い作品なのに、どの登場人物もきわめて明確に描かれています。
その人の人となりとなるヒネリやネジレが、さっと一筆書きできるツハラの表現力。
彼が自分の指から流れる血で、作品を書いている、ということ。
もっとたくさんの作品を書いてくれるといいのになあ(虐
[AZ::Blogで取り上げた津原作品]
・赤い竪琴
・蘆屋家の崩壊
・ペニス
・妖都
・少年トレチア
・夢三十夜
・午前の幽霊
おすすめは、「赤い竪琴」「綺譚集」「蘆屋家の崩壊」。
赤、黄、青の三冊。
「竪琴」は何か文学賞をとるべきものなんだと思うけど、ジャンルが不明確なヤスミンなので、誰も候補に取り上げてくれないです。
無冠がヤスミンの栄冠なのか。
文芸ジャンルの網目からどうしても洩れてしまうヤスミン。自分でプロジェクトを立ち上げて、自作を売り込まねばならない作家(そのプロジェクトも、アクアポリスのように、業界の荒波にもまれている。つまり、タイチは、自作を守ろうとするヤスミン自身なのだ)。
「ペニス」「少年トレチア」は見かけより難解。なにより作者がもてあましてる(;・∀・)
うわー!!
そうだったんですか!シェアワールド。
道理で読んでいたときの物足りなさが腑に落ちました。世界のすべてを書ききろうという気が最初からさらさらないんですねっ!(笑)
でもって、overQさんのあらすじを読んでやっと、この世界のあらましがわかりましたよ〜(ダメじゃん!)。
たいへん参考になりました。
他の作家の方々の作品が出版されるのが楽しみです♪
世界は分かち合えるのです。シェアワールド。
がんばってるみたいです、やすみん☆
もう何というか、42歳、厄年。
この企画、あるいは出版社には嫌がられてるんではないでしょうか。
なんか紆余曲折ありそうです(´ヘ`;)
面白いのになあ…WEB2.0なのに。。
設定がわかってから読むと、アクアポリスQ、巧みに書かれた作品とわかる。
この企画に参入する他の作家や、新規参入者のことも配慮しつつ、
非常に巧妙に描かれています。
めっさ、たいへんそうです(笑)
結局、やすみん、自分でこの世界のこと、全部描かねばならなくなるのではないか…ふと、そんな予感も。。
こんにちは。トラバありがとうございました。
私にとっては初津原泰水作品で、
何がなんだかわかんないなあ〜というまま終ったんですけど、
ここの解説をみて、やっと何かが見えてきました。
もう一回読んでみようかなあ。
ありがとうございました。
感謝です m(__)m
overQさん、どうもありがとうございます〜。
まったくちょろいもさんと同意見。
overQさんのエントリを読んで、そうだったのか!と腑に落ちました。
これから少しづつ、「憑依都市 The Haunted」が創り上げられていくのですね。
参加メンバーに大好きな作家の名前を多数発見して喜んでます。
これからどんな作品が発表されていくのか。
プロジェクトの行く末が楽しみです。不安もありますが(笑)。
以前にも津原さんが中心となった企画ものを成功させていますから、
一人で全部背負うなんて羽目には、ならないと思うんですが。うーん。
そう言い切れない過去(某レーベルを潰した)を思い出して、ブルーになってしまいました〜。
もしものことを考えて「SFJapan」のその特集号は
入手しておいた方が良さそうですね(苦笑)。
「アクアポリスQ」、なんとそういう作品でしたか。
ちょろいもさんや七生子さんの感想を拝見していて
今回は今ひとつなのか…?と思ってたんですけど
そんな背景があったとはびっくりです。
てか、それは本のあとがきで説明するべき事柄なのでは…(笑)
読むのがずんずんと楽しみになってきました。
私も近いうちに読もうっと!
★ゆうきさん。
はじめまして、こんにちは!
津原泰水はいろんな作品を書く人で、一冊一冊がぜんぜんちがっています。
特徴を紹介するのが難しい作家さん(笑)
「アクアポリスQ」は、憑依都市の設定を知ってないと、あまりに素っ気なさすぎて、とっかかりが見つからないですね(;・∀・)
津原作品、おすすめは「赤い竪琴」「綺譚集」「蘆屋家の崩壊」。
どれも、別人の作品のように、おそろしく違っています☆
★七生子さん。
「憑依都市」企画、とても面白そうですよね☆
でも、2004年に立ち上げたプロジェクトで、
ようやく今年一冊目が登場ということで、
なかなか難航が予想されます(;・∀・)
プロアマ問わずなんで、同人マンガの人なんかが、
きれいな絵で詩的なのを作ってくれたりすると言いなと思ったりもします。
「アクアポリスQ」、本のどこにも憑依都市のことが書いてなくて、
やっぱり出版社からは好意的には見られてないのかと勘ぐったり(笑)
せっかく寺田亨に絵を描いてもらってるのに、なぜか地味な表紙だし。
たぶん売れ行きの面で、だいぶ損してるはず。
寺田亨の元絵ってカラーのはずなんですが、どんな色だったんだろう。。見たい。。
★四季さん。
「アクアポリスQ」、裏事情がわかってから読むと(笑)、
なかなか面白い作品です。
非常に巧みに書けてます。巧みすぎて、いきなりこれだけ読んでもついていけないです。。
本にはぜんぜん「憑依都市」プロジェクトのこと書いてなくて、
出版社から嫌がられてるんでしょうか(;・∀・)
連載も雑誌を転々としたみたい。週刊連載(!)して完成させてます。
本は、雑誌発表時からは、少し手を入れてあるのかもしれません。
作品は、現在の日本を象徴的に描くことがかくれた主題のようにも思えます。
JはジャパンのJ。