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空飛ぶトカゲ

written by overQ
March 4, 2006

YouTubeで、Flying Lizardsのビデオを見つけたよ。

YouTube - The Flying Lizards - Money (Live)

ミュージック・ファクトリー

フライング・リザーズ。空飛ぶトカゲ。
80年代、英国産。インテリパンクとでもいうか。ビデオの曲「Money」は全英チャート第5位。当時はニューウェーブと呼ばれたはず。

楽器をひいたこともないアートスクール出身のデビッド・カニンガム君が、自宅で段ボールをドラムに、お風呂場エコーで、ラジカセ録音することから出発したフライング・リザーズ。
楽器なんて演奏できなくても、音を楽しめば、音楽はできちゃうんだよ。
20ドルで作ったヒット曲。
今聴いても、めっさかっこいいです。音楽俳句はFLに影響を受けたのではなかったか。
(ビデオでメガネ君がカニ氏。おもちゃで遊んでるだけだ)

音楽は技術じゃない。
たしかに一理はある。練習すればするほど、最初のエッジが失われ、音楽としてつまらなくなるなんてことも、ままある。
音楽的な才能(才能というより本能)があるなら(それは鳥が飛べ魚が泳げるように、誰にでもある)、
はじめて手にした楽器でも(楽器でなくても音がなるものなら何でもいい)、
そこから音楽を導き出せるはずだ…
というのは、それはそうなのかもしれない。
とはいえ、実際にやって見せられた衝撃は、やっぱりすさまじいのです。

FLは、たとえばYMOと同時代性があり、目指すところは似てるはずだけど、YMOは楽器ができてしまうぶん、余分な回り道をしてる。
FLの、まさに飛ぶトカゲのごとき、目的地一直線な単刀直入さ、切れ味鋭さに及ばない。

今聴いたらどうかなと思ったりしましたが、むしろ今、コンピュータが浸透しきった音楽になれた耳で聴くと、あらためて斬新さがわかる感じです。
とにかく、かっこいい。ずれが気持ちいい。そして、何より、楽しそうだ。

はじめてFLを聞いたのは、Top Tenというアルバム(1984年発売)。
一曲目の、 Tutti Fruttiのすさまじい破壊力…というか脱力感。
リトル・リチャードのハイテンションなシャウトの曲が、いきなりぞんざいな女声ボーカルで歌いだされます。
そして、Wop bop a loo bop a lop bam boomのけだるい脱力感。。
それは、歌うのじゃなく、棒読み。海外サイトでも、readingと評されている、その歌唱(;・∀・)
このアルバムでは、バカラックから、ジミヘン、ジェームス・ブラウン、かと思えばフィル・スペクター、レナード・コーエンまでカバーしたデタラメぶり。
独特のはずしかたがすごいです。ロックの殿堂が灰燼に帰す気さえする、転倒ぶり。
でも、かっこいいんだ、これが。

  +

貧乏で楽器が買えない、習えない。でもオンガクしたい。
当時、レコードからCDへの転換期で、古いレコードがたくさん捨てられた。
それを拾い集める。さらに安物のポータブルプレーヤー。
これが彼らの楽器になる。
プラスチックの軽いピックアップは、音飛び、繰り返しのエラーだらけ。スクラッチ、ダブ。それが新しい彼らのリズムになる。
ヒップホップと業界で呼ばれることになる音楽のはじまりは、そんな具合だったと聞いたことがあります。

  +

音楽に限らず、こうしたことは、アートの世界では時々ある。

仮名(かな)の発生もそう。
中国文化一辺倒になってた日本。漢字漢文に慣れ親しむこと。中国の書を必死で身につけることが、素晴らしいと信じられていた。
でも、女房と呼ばれる人たちは、どうせ私ら、漢字とか上手になっても、それで何がどうなるわけでもないし。お仕えした方の出世次第で、運良く人生送れるかもしれず、そうでないかもしれず。運は天に任せるしかない。
そんな頼りない状況に置かれ、自力で何かを成し遂げるより、今この瞬間、刹那の恋が大切な、大切でもないような、そんな生き方しか道はなく。

仮名はそこからそこはかとなく生まれる。

漢字の書とはまったく異なった独自の流儀を次々に生み出し、まったくちがった価値観で「きれい」。
当時、建築も中国風になって、それまでみたいな歌垣での恋は不可能になり、歌は文にして渡さねばならぬ恋路。
そのとき、その文字を、漢字で書くのも無粋じゃないの。
歌は漢詩じゃないんだから。ほほほほ。漢字の音を借りて書くけど、それがどんどん「うつくしく」崩れていく。
中国が知らない美しさ。

こうしてやむにやまれぬ事情から「日本」が湧いて出た。
魚が自分では泳ぎ方を説明できぬように、やってる当人たちはその斬新さに気づいてない。
紀貫之が気がついた。
中国文化を身につけるため、必死の苦労をしてきたものの、政治情勢・人脈の加減で、どうも苦労の甲斐もない人生になりそうだ。そんな私の人生って何だ。
そんな彼が仮名の美しさに気づく。
わざわざ中国から輸入しなくても、足もとにすごいものがあるじゃないか。それは大陸には思いも及ばぬものだ。

負け組礼讃。不徹底の徹底。古今集仮名序。ダメ男の先達・業平への親近。男もすなる、かな日記。
剛直硬直した価値観に、そっと足を差し出して、転倒させてみる、ひそかな愉しみ。

  +

音楽は音学でも音が苦でもなく、音をたのしむのがラクで、音楽。
ハイジをアーデルハイドと呼ぶロッテンマイヤーさんのスカートの影で、見つからないようにクスクス笑ってみる。



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