GyaOで、ビーチ・ボーイズのドキュメンタリー映像を見ました。
なかなか面白かったです。
ビートルズ・アンソロジーの、The Beach Boys版という感じ。
80年代に作られたThe American Band と、98年のEndless Harmonyの2本。
*1
どちらも100分を越えるボリューム。(エンドレス・ハーモニーのジャケットのしあわせそうに太ったブライアン(右下)のかわいいこと!)
ビートルズアンソロジーなんかと同様、ちょっと教育テレビ風。眠くなりもしますが(笑)。
でも、音楽もたっぷり流れるので、ビーチ・ボーイズ初心者でもいきなり博士になってしまえそうヽ(´ー`)ノ
とてもよくまとめられたドキュメンタリーになっています。アメリカの現代史…という側面もあります。
*2
どちらか一本というなら…うーん、エンドレス・ハーモニーでしょうか。
ビーチ・ボーイズの活動は、
・サーフ・ミュージックでヒット連発。
・ブライアン・ウィルソンの天才的音楽世界。
・その後の、ブライアン以外のメンバーを中心とした、地道で着実なバンド活動。
という、三つの顔がありそう。
(この話は前に、ちょいと書きました。)
キャリア的には三番目がいちばん長いのですが、軽視されがちなんです。
だけど、ドキュメンタリーでは、三つともバランスよく語られ、充実していました。
個人的には、後半の、持続していくバンドが感動的でした。
+
あとは、余談です(;・∀・)
自分の考えをまとめてみたいという衝動に基づいて、つらつらと、ぞんざいに。
ビートルズやビーチボーイズあたりからは、映像がたくさん残っていて、質の高い映像ドキュメンタリーが可能みたい。
演奏だけじゃなくて、いろんな映像が残っていて、百聞は一見に如かず…的なことも多いです。
50年代以前だとなかなかこうもいかないはずで、60年代以降は音楽を取り巻く状況が、大規模に変化したんですね。これは、「世界史的」にも、かなり重要なこと。
50年代、たとえばジャズだと、小規模なクラブでの生演奏がメイン。音楽シーンはまずライブハウスから動いた。万の単位で人を集めるコンサートではなかったんです。
その場その瞬間に現れ、消え去るもの。
音楽はまさにライブ。なまもの。
その場に立ち会うことが音楽であり、事件だった。
ラジオとレコードはそれを補うものでしかなく、実際、録音は生演奏に比べ音も悪いし、収録時間も数分しかなくて、すごく短かった。
でも、ビートルズ以降は、レコードのほうが急速にメインになっていく。
さらに、生演奏じゃなくて、テレビで見て、ファンになる。
ビートルズの活動の場所が、ドサ回りのライブハウスから、レコードとなり、大きなコンサートやテレビ演奏となり、テレビや雑誌などのセレブ映像になり、やがてスタジオが中心になるのは、象徴的。
スタジオという密室から、世界に発信できる音楽。
同時に、録音もどんどん多重化…非ライブ化していく。
ファン層が、ベビーブーマーの10代の人々であることも、重要。
50年代までの音楽ファンとは大きく違う気質。若いし、とにかく人数が圧倒的に多い。
ある意味、彼らをやしなうため、「量産」が、「大衆」が、可能になった。なる必要があった。
レコードとテレビで拡大した世界市場。ジャズよりきっと、二桁も大きい。
コンサートは、万の単位で人を集めるから、アンプとスピーカーですさまじく拡大した音を奏でる。
それに、ファンは、音楽を聴くよりも、まずはテレビで見た。その偶像を、自分の目で確かめたくて、コンサートに行く。
音としての演奏家である以上に、映像としてのアイドル。
誰もが彼らを知っている。
+
50年代までのジャズと、60年代以降のロック。
音楽の内容以前に、音楽を取り巻く状況がまったくちがっていたということ。
…もうちゃんと思い出すことも逆に難しいくらい、しっかりと根付いてしまった唯物論的歴史。
また、それが、音楽の内容にもフィードバックしていたように見えます。
ジャズはアドリブが信条だけど、レコード=録音がメインになってくると、アドリブという観点がそれほど重要ではなくなってくる。
音楽は、奏でられた瞬間ではなくて、レコードという形で、はじめて「完成体」になるから。
レコードに針を落とし、スピーカーが震える時の音、そこが商品の最終形態。生演奏とはちがう。
レコードで聴くと、誰がどの楽器を演奏してるかということより、まずは全体としてのサウンドを聴くことになる。
目の前には、スピーカーしかないですから。…BGMとしての汎用性も高まる。
誰がどんな楽器をどのようにではなく、全体としてのサウンド。
で、だんだん「編集」とかプロデューサーとかいうものが、重要な項目になっていくロック。
+
ビーチ・ボーイズは、チャック・ベリーのロックンロールに、フォーフレッシュメン風のコーラスを乗せ、サーフィンをテーマに歌うことで、若者の心をつかんだ。
ヘンな組み合わせです。
ラジオやレコードで、スピーカーの奏でる「同じ音」として、ジャンルやファン層を無視し超越して、ひとかたまりに聴いていたからこそ、可能な混成。
じつは、リバプールでラジオとレコードを聞いてた連中、つまりのちのビートルズは、さらにめちゃくちゃな音楽ジャンル混ぜ合わせをやることになるのですが。。
さて、すぐに、長兄で作曲係のブライアン・ウィルソンは、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドというものに惹かれていく。
ウォール・オブ・サウンド。音の壁。
個々の楽器よりも、スピーカーというたった一つの楽器が奏でる、渾然一体となった音こそ大事。
60年代のテクノロジーがもたらした考え方。
ブライアンは、スペクターとちがって、「渾然一体」というより、「適材適所」。
どんな音であれ、それが全体の中で適切な位置に置かれ、最適な形で奏でられれば、全体の音は「音楽」になる。
+
「Pet Sounds」の最後は、犬の鳴き声と去りゆく列車の轟音で終わる。
次に現れ、ビーチ・ボーイズ屈指のヒットとなる「Good Vibrations」は、「人に犬が吼えるのは、その人のバイブレーションを犬が感じるから」、という母の言葉が発想の元だという。
そして、ロックの歴史上いちばん有名なお蔵入り作品「スマイル」。
人の笑い声や、工事現場の音、火事の音など、ありとあらゆる音も、「適材適所」に配されれば、音楽=世界になるはず…
そんな誇大な妄想を果たそうとするものだったのかもしれません。
結局、この世界に満ちるすべての音が、すでに「スマイル」。。完成しないわけです。それはもうすでに、存在しているのだから…「この世界」として。
スマイル音源の作成中、日々録音するさまざまな断片のどれとどれがつながってもいい、ひとつの曲になりえる…そんな音楽地獄を、ブライアン・ウィルソンは漂流していたと言われます。
じゃあ、世界中の音そのものが、すでに「スマイル」なのではないか。。
その野望は、やっぱり座礁 run on the rock してしまいますが(;・∀・)
Rock, rock and roll
Plymouth rock, roll over
しかし、近年になって、ブライアンは「スマイル」を完成するに至ります。
上のリンクは、「スマイル・DVD版」。
持続することの感動。フォークナーが愛した言葉でいえば、endurance。彼らは持ちこたえた。
こんばんはです。
ご紹介の映像見てると、現在カールとデニスのいないことに、いまさらながらショックを受けますね・・。
ライヴにしても、スタジオ録音にしても、その見せ方や聴かせ方もどんどん変わっているのでしょうね。たとえばツェッペリンやクリームがみせたようなずーっと続くソロを、今々のバンドがやっても受け入れられないでしょうし・・。
私もLP〜CD世代ですから、50年代以前(つまりロック以前)のポピュラー音楽の聴かれ方というのが、なかなか想像できません。
でも、これからはシリコンオーディオが主流になっていくのでしょうか。今も、その歴史的時点に当たるのかも知れませんね。
★shosenさん。
どのバンドでもそうですが、ビーチボーイズもほんとに紆余曲折を経てきたんだなぁ…としみじみ。
エンドレス・ハーモニーでは、デニスやカールも力強く評価していて、意義深いことだと感じました☆
マーチン・スコセッシ監督が、「ブルース・プロジェクト」ということで、七人の映画監督と組んで、七本のブルースの歴史にまつわる映像を作っています。
スコセッシは、その前に、ボブ・ディランのドキュメンタリー「No Direction Home」も撮ってて、
アメリカではにわかにディラン再評価になってるらしい(ディランの新作がチャート1位になったり!)。
アメリカのルーツを音楽からたずねるような動きがあるみたいです。
ニューオリンズのハリケーン被害も関係してるのでしょうか。
アメリカのルーツ音楽が、ポピュラーミュージックとして世界を席巻していく過程は、けっこう複雑。
20世紀後半の歴史そのものといってもいいかもしれません。
この話題については、非常に興味があるので、うまく書けそうなネタがあったら、これから記事にしていきたいと思っています☆
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