前にご紹介したことのある、赤山禅院。うちから歩いて5分。
先日、ワルツさんも紅葉狩りに訪れられたそうですヽ(´ー`)ノ
屋根の上に猿がまつられてるのがチャームポイント。
お猿さん、なぜか金網で囲われている。逃げないように? 作り物なのに?
ところが、このお猿さん、むかしは生きてたようです。
江戸時代に書かれた、京都観光ガイドブック「都林泉名勝図会」。
ここに赤山社(=赤山禅院)が載っています。境内の様子が大きな絵で描かれている。
→都林泉名勝図会・赤山社(せきさんのやしろ) 図絵2枚目 (国際日本文化研究センター)
この絵の右下あたり、境内の入口付近に、猿が2匹、檻に飼われています。エサをやってからかう男の姿も。なぜ、サル?
比叡山のふもとにある赤山禅院。陰陽道のカミサマ泰山府君(金神)をまつり、比叡を中国にある赤山に見立てているとか。
で、サルは比叡=日吉の神の使いだから…と、とりあえず答えてみる。
さて、現在、屋根の上にいるお猿さんをよく見ると、手に御幣と鈴を持っている。
これは一体何なんでしょう?(バイオリンを弾く様に見えるw)
御幣というのは、棒の先に紙きれをつけたもので、神事に使うあれです。
サルは「申」、御幣は「示」という字になって、ふたつ合わせると、「ネ申」になるんだとか。
それはまあ、鵜呑みにすることにしても、鈴のほうは何?
鈴は、神楽を舞う巫女の楽器。
それはアメノウズメを先祖とする猿女の君…を示してるのじゃないかしら。
これまで、調べてきたことからすると、そんな憶測が思い浮かぶ。
図会のほうを見ると、神楽を舞う舞台が作られているのが見えます。
*1
さて、「金網で囲われた猿」は、ほかにも東山区の新日吉神社や、御所の猿が辻にもいる。
新日吉の猿は、一方は御幣を両手でかかげ、もう一方は烏帽子をかぶり鈴と扇を持っています。御所のお猿さんは御幣をかつぎ、烏帽子をかぶる。
猿は、猿女君(サルタヒコからその名を譲り受けた)のサルでもあるけど、また猿楽のサルでもあって、その出し物のひとつは、猿回し。
お祭りの見世物であり、昭和30年代くらいまでなら、お祭りで実際におこなわてたんじゃないでしょうか。
烏帽子をかぶり、鈴を持って、猿が舞う。
それは、神楽に比べると下品だけど、神に捧げる猿楽の舞い。
*2
図会にあった、「入口付近で檻に飼われた二匹の猿」は、中央の神楽で踊るには「下品」だけど、端っこで神に捧げられた猿舞=猿楽を意味しているように思えます。
この猿が、今は屋根の上で、日々の風雨に耐え、鈴と御幣を持って、舞い続けている(させられている)…というわけ。
これまで調べてきたことから、そんな憶測を思いつきました。ほんとかどうかは、わかんないけど(;・∀・)
さらに、もうひとつ。
図会の「赤山社」の絵は、もう1ページあります。それは、入り口より手前の部分。よく見ると、むしろの上で、赤子をあやす老人の姿が見える。赤山禅院は、かつて小野山荘のあったところ。源氏・夕霧に出てくる小野山荘。
夕霧は落葉宮の物語で、すでに小野山荘(赤山)=落葉という連想があったようです。
*3
御息所、もののけにいたう患ひたまひて、小野といふわたりに、山里持たまへるに渡りたまへり。早うより御祈りの師に、もののけなど祓ひ捨てける律師、山籠もりして里に出でじと誓ひたるを、麓近くて、請じ下ろしたまふゆゑなりけり。 源氏・夕霧
小野山荘はまた、大納言南淵年名が、白楽天にならって「尚歯会」という詩歌管弦の宴を開いた場所。
この南渕大納言の息子は、おちぶれて浮浪者になった。
菅原道真の漢詩にそんなことが描かれている(菅家後草「慰小男女詩」)。
往年見窮子 往年、窮子を見
京中迷失拠 京中に迷ひて、ところを失ふ。
裸身博奕者 裸身にして、博奕なす者。
道路呼南助 道路で南助と呼ばわる。
徒跣弾琴者 徒跣(はだし)にして、琴を弾く。
この「道路の南助」が、南渕大納言の息子。はだか・はだしで、琴を弾く。
図会の、赤山禅院の門前の老人が、この人(=南助)なんじゃないだろうか?
道真の漢詩は、徳川時代の教養人には、きっと読まれていたと思うし。そんな引用ができるくらいの知識があったはず。
…ちょっとした口絵にも、深い意味が隠されているのかもしれません。
南助、サルよりも劣る位置に置かれてるのが、なんとも物悲しいですが。でも、やっぱり歌舞音曲の者。博労。
図会の絵にはまだたくさんいろんな人や事物が描かれていて、それぞれに何か意味がある可能性もある(なんか特徴的で意味ありげな図像になっています)。
赤山禅院って謎めいてる。
ほかにもまだ、相生社があり、地蔵堂があり、でかい数珠があり、布袋さんと大黒さんがあり。
図会には、そのどれも出てこないのが、また興味深いです。
…でも、赤山禅院が謎だらけってこと自体、ごく最近まではまるで気づかずにいたことなんですが(笑)
歴史って、見ようと思わないと見えないものらしいです。
都林泉名勝図会〈上〉京都の名所名園案内 (講談社学術文庫)
秋里 籬島
¥ 945 / 講談社
( 1999-12 )
by AMAZ君(改)