AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 秀吉 vs お稲荷さん

秀吉 vs お稲荷さん

written by overQ
February 10, 2007

昭和10(1935)年、伏見稲荷の旧社家から見つかった、石田光成・増田長盛の連名による手紙。
そこには驚くべき内容がしたためられていた…すなわち、
秀吉がお稲荷さんを恫喝する((;゚Д゚)
というもの。
神をも恐れぬ暴挙のいきさつは、こう。

秀吉の最愛の養女・豪姫。産後のひだちが悪いと思ってたら、キツネが憑いてしまった。
秀吉は、このキツネの狼藉(狐籍?)に激怒。光成らに命じて、その総本山たる伏見稲荷に、恫喝の手紙を送りつける。

今般、産後の御病気中、付物怪相見え候。とかく野狐の所為とおぼし召され候…
速やかに退去すべし。
右の怪の故に不慮出来においては、当社を即時に破却せられ、その上、日本国中の狐猟を毎年かたく仰せつけられ、その類を断ち、ことごとく殺し果たさるべきの旨…
つまり、
「即刻、豪姫から出て行け、
さもないと稲荷社を取りつぶし、
日本中でキツネ狩りをして、一匹残らず抹殺してやるからな」

…という脅し(;・∀・)

さすが、太閤さん。やることがとてつもないです。伏見稲荷もキツネさんも、手紙書かされる光成らも、まわりはおたわむれに大迷惑(´、丶)
果たして、こんなやり方で、豪姫はなおるのか!?

伏見稲荷社もいい迷惑ですが、この事件のちょっと前、秀吉は伏見稲荷に寄進し社殿を修理してるので、「恩をあだで返すのか」ってことで、よけいムカついたみたい。
聖域なきゴーマニズムは、戦国武将ならではのもの。
でも、基本的にお稲荷さんを心底信じ込んだ上での駄々っ子ぶりなのが、秀吉らしいといえば秀吉らしい。「実利」しか信じそうにないマテリアリスト信長とは、だいぶちがう感じです。


大神明 お稲荷神棚さんセット

あやうくホロコーストされそうになったキツネさんになると、さらにハタ迷惑甚だしいですが、
お稲荷さん=キツネのイメージが、もうこの頃には浸透しているのがわかる文献でもあります。
キツネとイナリ、じつはこのふたつ、もっと昔だと、かならずしも結びついてないようなのです。 *1

で、伏見稲荷さん、どう対処したんでしょうか。
伏見稲荷には、とり憑いた狐をはらう「野狐加持秘法」というのが伝わっていてるんだそうです。事細かな作法があり、「恵の剣」というものを使って落とすらしい。


でも結局、豪姫に憑いた狐は、実父である前田利家が、銘刀をもって、落としました。 *2
伏見稲荷も取り壊されず、キツネも全滅していないので、秀吉の怒りも収まったようです。
あるいは秀吉、難癖をつけて、伏見稲荷から何らかの「実利」を巻き上げようとしていただけかもしれませんが。
不思議なエピソードです。

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この話、中村禎里「狐の日本史」という本で見つけました。
もとは、桑田忠親の論文に、文書の研究があるそうです。 *3

剣でもって狐を落とす、というのが謎めいてる。
伏見稲荷のある稲荷山には、剣石というものがまつられています。
もともとはこれがイワクラとしてあがめられたのかもしれないですが、
「剣石」と呼ばれるのは、能の「小鍛治」で有名なエピソードと関連してる。

刀鍛治の仕事助けるため、稲荷神が小僧の姿であらわれ、鍛治の相槌を打ってくれた、という伝説がある。
稲荷=剣=鍛治師は、キツネ以前から、縁が深い。
鍛治師たちの信仰対象だったらしいお稲荷さん。また、能の題材とされるように、芸能の民にとっても大切な神様だったはず。

相槌を打ってくれたお稲荷さん、じつは今もちゃんと別な場所でまつられています。
三条広道東の相槌稲荷。
古来より有名なお稲荷さんなんですが、行ったことある人は意外と少ないかも。路地の奥の奥、なかなかすごい場所にまつられてるんです。この話はまた回をあらためてご報告したいと思います。

お稲荷さんの話、まだまだまだまだ、続きがありそうな予感。
剣や槌って古代王権の紋章だし。鎌とキツネも関係が深くて、鉄の民と何か結びつきがあるみたい。
どーでもいいことのはずなのに、調べれば調べるほど、面白くてやめられないですね、この手の話。

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*1 : 密教のダキニ天法、東国の民間信仰などから、いろいろ習合して、この信仰が出来上がる…というような流れらしい。すごくややこしいです。
*2 : 利家に仕えた村井長明の「利家夜話」に書いてあるそうです。
*3 : 桑田忠親「豊臣秀吉の狐狩に関する文書」(「歴史地理」66巻6号 1935年)。「大西家所蔵狐狩の古文書」(「朱」12号 1971年)。マニアックだ。


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コメント

先週の節分では結局オーソドックスな恵方まきを一本と、海鮮巻きを半本、それぞれ時間差で食べました。
縁起もんだから、用意してもらっていると食べなきゃなんないし、また、海鮮巻きのなかの数の子とか烏賊刺とか、シソとか良い味出しちゃってて、
「んまーい!」って声をあげて誉めそうになり、
恵方巻きの儀を台無しにするとこでした。

先日はoverQさんのコメントを頂いて、とんど祭りのねたをたくさん書いてたのですが、不具合で消えちゃいました...orz
ライブドアはこのごろまたもや、妙にシステムがおかしいときがあって、書き込もうにも書き込めないことが、しばしばあります。

Posted by: Site icon ne_san : February 10, 2007 11:22 PM

途中で送信しちゃいました。連続で失礼しまする。

お稲荷さんって、お寿司のほうかと思って、恵方巻の話題を書いたのでした...。

剣でもって、折伏する系統の話題、大好きです!ワタクシの中で、「龍を折伏するのは剣」ってイメージです。和洋を問わず。

また、以前overQさんに「たら本」企画を打診していただきながら、たまに参加するだけで怠け者の私でしたが、皆さんの活気あるコメントやり取りは、ROMっておりましたのに、
今回のOverQさん主催を気付かなかった、この粗忽者をどうかお許しいただければ幸いに存じます。

構想はあるのですが...orz。
今、私の業界では一年のうちで一番忙しく充実している時期なんで、
一段落したら、こっそーり、TBでも送らせてくださいませ。
ではでは!


Posted by: Site icon ne_san : February 10, 2007 11:32 PM

ne_sanさん、いつもアリガト!(´▽`)ございます。
エホー巻き。
ネットで調べてると、やはりネイティブエホーな方は少数派。
ne_sanさんとこは、非常に貴重みたいです!
もとは、江戸末期の大阪に発してるようなんですが、全国制覇は90年代、コンビニによるもののようです。
でも、コンビニの源の人はエホーを面白がれる程知ってたわけだから、あるいはne_sanさんと近所の人なのかも知れません。

とんど話、お聞きしたいです☆
最近すっかり民俗学系のものにハマってしまってて、
こんな知識何の役にも立たねーよ、と思いつつも、どうしても楽しくて追いかけてしまいますヽ(´ー`)ノ
何なんでしょうね、これは。柳田国男があの膨大な著作を残せたのが、ほんとによくわかるようになりました。
どこまでもどこまでも奥がある、謎の底なし沼w

この頃、もっと全国の石神のことが知りたくて、
ウェブ民俗学というか、
ネットを利用して皆さんの近所の石神を集めてもらいたい…という、
不可解な野望を抱き始めています。
どうすれば、できるんだろう。。

そして、たら本。
のんびりご参加下さいませ。
まだ、三人様くらいは、ご参加くださるらしいです。
個人的には、いっきょにじゃなくて、ポツポツと時期を分散して参加していただけるほうが、もともと意図していた感じなんです。
さらに、私はもうちょっとしたら、独りたら本、というのもやってみようと思ってます。
これまでの30ほどのお題に、一冊ずつ、新規に答えてみるもの。
紹介したい本って、なんぼでもありますからね(* ^ー゚)ノ

Posted by: Site icon overQ : February 11, 2007 8:54 PM
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