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安彦良和さんの講演

written by overQ
February 18, 2007

安彦良和さんの講演に行ってきました。
ガンダムの作画担当として、つとに有名な安彦さんですが、今回はアニメーターというより、漫画家・安彦良和の講演。
京都国際マンガミュージアムが開催している連続講演会の第二回で、お題は「マンガと歴史観」。
虹色のトロツキー」や「王道の狗」など、歴史を題材にしたマンガの作者としての、安彦氏の講演です。

王道の狗 (1) (ミスターマガジンKCDX (941))王道の狗 (1) (ミスターマガジンKCDX (941))
安彦 良和
¥ 880 / 講談社
( 1998-06 )


by AMAZ君(改)

「王道の狗」が文化庁メディア芸術祭賞を受賞しているものの、「虹トロ」などの安彦作品は、そんなに売れてなくて(泣)、ガンダムに比べると圧倒的に知名度が低い。
そんなにしょっちゅうは講演されない安彦さんですが、歴史マンガのほうで呼ばれるとうれしくて、ついつい引き受けてしまうそうです。

マンガの技術的なお話が聴けるかなと思って出かけましたが、むしろ「政治とマンガ」といっていいような熱い内容でした。

大学生時代は、60年代末、学園紛争の吹き荒れる中、ベトナム戦争反対の運動に積極的にコミットしていたという、安彦さん。吉本隆明の講演に行くものの、難しすぎて途中で眠ってしまう安彦さん。
久しぶりにこういう話を聞いた気がして、面白かったです。

「王道の狗」の「王道」は、石原莞爾と、孫文(の最後の講演)にまたがる引用だとのこと。この重ね合わせ、ずれ、致命的隔絶からくる、アジア理解の綾、襞。
政治のホットスポットにじっくり腰をすえ、その複雑な陰翳を読みとろうとされてるのに、感心しました。
マンガで政治を扱おうとすると、絵の持つ「わかりやすい」気分を使って自説を主張する向きも流行したのですが、安彦さんは迂遠な道をたどられたようです。

こういう場所には呉智英さんが出没するものですが、今回も当然ナビゲータ。押さえ気味ながらも結局、主役の安彦さんを喰いかねない存在感を示しておられました(笑)
呉さんが前フリで述べられた、70年前後のマンガにおける「アジア主義」のひそかなブームは興味深かったです。歴史の主人公になれなかったが、後世に続く種を巻いたかもしれない、二列目三列目の人々をとりあげる漫画家たち。(バロン吉元「柔侠伝」。夢野京太郎(竹中労)・かわぐちかいじ「黒旗水滸伝」。横山光輝「狼の星座」)
自身と重ねるところがあったのか。ちょっと山口昌男がこの頃やってきた仕事を思いました。

柔侠伝 上巻柔侠伝 上巻
バロン吉元
¥ 500 / ゴマブックス
( 2005-11 )


by AMAZ君(改)


黒旗水滸伝―大正地獄篇〈上巻〉黒旗水滸伝―大正地獄篇〈上巻〉
竹中 労
¥ 2,625 / 皓星社
( 2000-09 )


by AMAZ君(改)


狼の星座 (3) (講談社漫画文庫―横山光輝中国ロマン傑作選)狼の星座 (3) (講談社漫画文庫―横山光輝中国ロマン傑作選)
横山 光輝
¥ 714 / 講談社
( 2005-05 )
通常24時間以内に発送

by AMAZ君(改)

また、安彦さんが持ってこられた資料が、珍しいものでした。
満州に設立された「建国大学」の関連資料で、愛知大学から出てる写真資料らしいのです。漫画家というのはやっぱり、「絵」や「顔」から歴史を読む(=描く)のだなあと、あらためて思いました。

マンガ夜話「虹色のトロツキー」の回での、いしかわじゅん氏発言への、面白い反論もありました。
アニメータ出身ということで、安彦マンガって、アニメの手法をそこに読み取ろうとする読者も多い。逆にいうと、「非マンガ的」とも見られがち。
いしかわじゅんは、安彦良和が漫画家としては必ずしも巧くない例として、合気道で人を投げ飛ばすシーンをあげた。
安彦氏は、そのシーンを、合気道のビデオを参照して描いたそうです。投げ飛ばした直後の、「決めポーズ」のシーン。
その後、安彦さんが合気道の達人に話を聞いてみると、ああいう「決めポーズ」は撮影用にやってるんで、相手を投げ飛ばすという動作にとっては、何の意味もないと言われたとか(笑)
これは安彦氏の弁論にもなってるし、いしかわじゅんがあの曖昧かつ感覚的な発言で、何を指摘しようとしていたかも、わかった気がしました。それが「ポーズ」であって、投げるという力能に沿ってないことを見抜いてたんでしょう。
いしかわさんってちょっと青山二郎なんかと似てて、目利きの断定。その論理がたどれないため、万人を説得するにはとうてい至らなくて、誤解を招きまくり。ま、それでオモロイんですが(;・∀・)

ほかにも、「安彦的立ちポーズ」が、じつは安彦さんの独創ではなく、虫プロ養成時代に教えられた「基本」に由来すること、
硬いペンで絵を描く技術は自分にはどうしても身につかないカミワザと思えること、
マンガと劇画では断然マンガ派だけど、バロン吉元と池上僚一は好き、だって線に色気があるからとのこと、
2ちゃんねるを最近知り、呑み屋で他愛もなく思いのたけを放言したことが消されず記録されたものだと思うこと…など、など、いろいろ面白い話ありました。
59歳の安彦さん、髪も真っ白になられ、「ガンダム・オリジン」もたいへんな作業なんだろうなあと思ったりしました。

この講演会シリーズ、3月はさいとうたかをとモンキーパンチが予定されてるようです。熱いです。絶対見に行きたいですヽ(´ー`)ノ

松岡正剛の千夜千冊『虹色のトロツキー』安彦良和



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時刻: March 5, 2007 12:43 PM
コメント

うわー、熱いなー、濃ゆいなー、面白そうだなー。
安彦さんの歴史モノって面白いのだけれど、需要が低いのか発売直後に書店に行かないと置いてないような。おかげさまで、気になってはいるけれど読めずに(手に取れずに)いるマンガが多いのです。しょぼーん。

Posted by: 菊花 : February 18, 2007 11:04 PM

安彦さん、人当たりのいい、やわらかい人だけど、秘めたる熱意と気骨のある方でした☆
明治から昭和にいたる歴史について、まだまだいろんなお考えを持っておられるようです。
このネタならいくらでも話してみたいと思っておられるかも(ガンダムはもうさすがに、ちょっと嫌になってるみたいw
現代日本についてもいろんなお考えを持ちのようで、熱い講演でした!

Posted by: Site icon overQ : February 20, 2007 6:01 PM
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