さらに、あははの辻にて。
今回、この逢う魔が地、人と鬼のサカイで、
難に遭遇するのは、相撲取り。
平安京の七月は、相撲の節会の季節。
田植え(狩猟民にとっては「新緑」)の時期、
雨を呼ぶ儀式であり、
相撲取りたちは地を蹴り鳴らす、
雷神の子ら。
このことはすでに、
「怪力女たちの系譜」をたどる中で、
触れてきました。
◆AZ::Blog : 妹のバカ力
◆AZ::Blog : 兄者と妹者 前篇
◆AZ::Blog : 兄者と妹者 後篇
しかし光遠や氏長といった、
伝説の横綱(最手=ホテ)たちは、
説話のカタリの中では、
けっして勝者ではありませんでした。
むしろ、神がかりな力をもつ女たちの、
「すごさ」を測る単位に使われていた(笑)
(20世紀末、小錦が重さの単位であったようにw)
今回、ご紹介するカタリでも、
また負けちゃうんです、伝説のお相撲さん。
ただ、今回は、相手は怪力女ではないのです。
学生さんです。
お話を見て行きましょう。
七月。
全国から相撲取りが集まる季節。
相撲節会の開催を待って、
力士たちは、
朱雀門あたりで涼みがてら、
あたりを遊歩していた。
南へくだって行こうとすると、
大学寮の東門で涼んでいる学生たちが、
相撲取りたちの前に立ちはだかる。
学生の中には、
えらいさんの子息も多い。
力ずくで通るわけにもいかず、
にらみ合いが続く。やがて学生のうちでも、
とりわけ小さい、
しかし身なりのいい奴がまかり出て、
「相撲かなんだか知らないけど、
あんたらうるさいだよ」
相撲取りのリーダー、
無双の力士・成村は、
この学生をじっとにらみつけてから、
「さあ、もう帰るぞ」
とその場を去った。さて成村は力士たちを集め、
「今日のところは引き下がったが、
明日はやっちまうよ」と。
「あの小さい学生がむかつくねえ。
お前、あいつを蹴り倒しておやり」
と、血の気の多い気鋭の力士に告げておく。そして翌日。
力士たちも総出なら、
学生たちも仲間をかき集めてきた。
決闘である。
学生たちは、
「鳴り制せい!(しずかにしろ)」コール。
その先頭には、例の小さな学生。成村は昨日の力士に目配せして、
「きゃつを蹴り倒せ!」のサイン。
力士は学生の群れに突進し、
小さな学生の前で足を振り上げる。
しかし、学生は巧みにかいくぐり、
逆に力士の足を取ったかと思うと、
まるで軽い杖でも持つかのように振り回し、
ほかの力士たちのほうへ投げてよこした。
力士は体が砕けて、
起き上がることもできない。学生は今度は、
成村をめがけて走ってくる。
恐れをなした成村、
一目散に逃走する。
朱雀門の脇で追いつかれ、
つかまえられそうになったのを、
なんとか式部省の
土塀に飛びついて逃れる。
しかし、片方の靴の踵を、
学生につかまれる。
成村がなんとか引っこ抜くと、
踵は足の皮ごと、刀で切ったように、
持っていかれていた。
とめどなく流れる血を見ながら、
「なんて恐ろしいやつだ!
こんな化物が世の中にいるんだ!」
と成村は感嘆する。成村は、自分の所属する方の監督に、
「あの学生はとんでもない相撲取りです。
私とて、二度と取り組みたくはないほどです」
監督は、道にすぐれているものは、
身分のいかんに関わらず、召し上げると、
この小さな学生を探しまわったが、
なぜか見つけることができなかった、と。
―宇治拾遺物語 「成村、強力の学士にあふ事」
宇治拾遺物語
著者:小林 保治
出版:小学館
価格:¥ 4,680
by AMAZ君
雄略天皇の御世。
少子部(ちいさこべ)の栖軽(すがる)が、
カミナリをつかまえ、
帝のもとに連れてくる。
ピカリと光る雷に帝は恐怖なされ、
雷を元の場所に返し、まつる。
栖軽は死後、勅命により七日七夜安置され、
その忠を讃えて、
「雷をとらえた栖軽の墓」が建てられる。
栖軽を憎む雷は、墓に落雷し、
墓碑を蹴り飛ばす(「鳴り落ち、踊ゑ践みき」)。
ふたたび捕えられた雷は、
七日七夜、地上にとどまった。
もう一度、墓の碑文の柱を建て直し、
「生きても死にても雷を捕えし栖軽の墓」
と。
日本霊異記 上 (1) (講談社学術文庫 335)
¥ 840 / 講談社
( 1978-12 )
通常24時間以内に発送
by AMAZ君(改)
各(おのおの)足を擧(あ)げて、相蹶(あいふ)む。
則(すなわ)ち、当麻蹴速が脇骨(かたはらほね)を蹶(ふ)み折(さ)く。
亦(ま)た、其(そ)の腰を蹈(ふ)み折(さ)きて殺(ころ)しつ。
日本書紀〈2〉 (岩波文庫)
坂本 太郎
¥ 1,260 / 岩波書店
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by AMAZ君(改)
ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー
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¥ 2,310 / ソニー・ミュージックハウス
( 2003-01-22 )
通常24時間以内に発送
by AMAZ君(改)
おおっ!
そういえば、俵屋宗達「風神雷神図屏風」などでも、
風神はダスダス歩きをしているだけですが、
雷神は明らかにキッーーック!を繰り出していますね。
しかも雷神は手にダンベルを持っているあたり、
なかなかにキケンな匂いがします。
俵屋宗達、風神雷神図で、相撲を想定してたんでしょうか
…これはすごく気になってるところです。
カミナリと相撲の結びつきは、
この記事でおおむね明らかにできたと思うんですが、
近世の宗達がそれを知っていたら、興味深いです。
宗達は、出自がよくわかんない人。
田楽をやるような連中とつながってたら、
田植えの儀礼を知ってたはず。
相撲は、早乙女=田植えの処女とまぐわう権利をめぐって、
争うものだったんじゃないかと思うんです。
どちらが神の子かを競った。
勝ったほうは雷神。
早苗(稲)=早乙女に、種付け(雨を降らす)して、
これが秋に収穫される。
女の子に、サナエという名をつけるのは、
この風習の名残りだと思います。
風神雷神図のポーズは、研究してる人たちがいるはずなので、
また何かわかったら、記事に書いてみたいと思います。
相撲との関連に気づいてる人がいたら、すごいです☆