二条大宮、あははの辻。
大内裏の南東、神泉苑、大学寮があるあたり。
ここに、怪異が頻発するのは、
もしかすると文章博士・三善清行のせいかも。
なぜなら彼はこの場所に、
お化けが引っ越すのを許可したことがあるから。
三善さんは、世に善宰相と呼ばれ、
菅原道真のライバル。
敵というより、好敵手のようにカタられるけれど、
道真怨霊伝説は、三善清行の死後、
急速に普及していきます。
史実としては、右大臣・道真に、
引退をすすめる手紙を出し、
朝廷に十二箇条の提言をしています。
また、そうとうな魔術師ともカタられます。
今昔物語集・巻27の31話では、
「よろづのこと知りてやむごとなかりける人なり、
陰陽の方をさえ極めたりけり。」
ちなみに、弟が日蔵、息子が浄蔵という法師。
この二人はともに魔法が使えます。
いずれ出てくるので、ちょっとおぼえておかれませい。
これからする話のころ、息子の浄蔵大徳はまだ、
役の行者の大峯山で修行中のはず。
で、その、今昔物語集・巻27の31話、
「三善清行宰相、家渡りの語」。
細部が面白いので、やや丁寧に書いてみますと。
今は昔。
三善清行は世にいう善宰相。
あらゆることに通じた、やんごとなき人で、
陰陽道でさえ極めている。さて五条堀川に悪き家があった。
清行は持ち家がなかったので、
空き家だったこの家を買った。
まわりからは、
「そんな家を買っても、ろくなことはないぞ」
と止められたけれど、聞き入れず。
十月二十日、酉の時(午後六時)、
畳一枚をもってその家に行った。いつ建ったかもわからない寝殿で、
庭の大きな松・楓・桜、トキワ木は、
木霊も住んでいそうな、鬱蒼。
赤いツタが石を這っている。
庭は苔むし、いったいいつから
掃除されてないことか。
お供のものに板敷を拭かせ、
畳を敷き、火を灯させてから、
「明朝早くやってこい」と言って、
清行ひとり残った。南向きに寝て、
「そろそろ真夜中」と思った頃、
天井で物音。
見上げると、天井の格子の
ひとますごとに顔がある。
どれもちがった顔だ。
しかし清行が驚きもしないでいると、
そのうち消えうせた。
さらにしばらくすると、
南の庇の板敷から、
身の丈30センチほどの、
ミニチュアなものらが馬に乗って、
西から東へと四五十人ばかり夜行(パレード)していく。
清行はやはり慌てずやりすごす。もうしばらくすると、今度は、
塗籠の戸がすうっと引かれ、
大女がやって来る。
檜皮色の尼のような着物で、
髪が肩にかかった様子は、
ひどく気高く清らかに見える。
麝香の香りもただよっている。
赤い扇で顔を隠すが、
のぞく額は白く清楚である。
額にかかる髪のウェーブをたどると、
長く伸びる目尻。
ちらりと送る目線は、
わずらわしいほどの気品。
鼻は鮮やかなにおい立つほどの赤で、
口の脇には四五寸ほどの、
銀で作ったような牙が食い違っていた。
「奇怪なやつだ」と思っているうち、
また戸のほうへ消えていった。慌てず騒がず座っている清行。
有明の月が照らす庭。
その木陰から浅黄色の上下を着た
翁が登場。
清行のもとへひざまずく。
「翁よ、何を言いたい?」
と問えば、しわがれた小声で翁、
「何年も住んできたこの場所、
宰相殿がおいでになって、
たいそう困っておるのであります」対して清行宰相が言うには、
「それは筋違いというもんだ。
正統な手続きを踏んで買ったのだから、
不法占拠するお前たちに問題があろう。
そもそも鬼神というもの、
道理をわきまえ、
曲がったことをしないからこそ、
恐ろしいものなのだ。
そんなことではきっと
天罰を喰らうだろうな。
老狐がいて人を脅かしているというが、
それなら鷹狩の犬にぜんぶ
食い殺させてやろうじゃないか。」翁、「おおせの通りでございます。
人を脅かしていたのは、子供たちなんです。
とめても言うことを聞かず、
勝手にやったことなんです。
われわれはこれから、
どこへ行けばよいのでしょう。
大学寮の南門の東の脇に
空き地があります。
もしお許しくだされば、
あそこに移ろうと思うのですが」
清行、「それはじつに、いいアイデアだ。
一族を引き連れて、そこへ行くがいい」
翁が声を高くして返答すると、
四五十人ばかりの声がいっせいに答えた。
朝が来て、迎えのものが来ると、
清行はこの家を改装し、
本格的に引っ越した。
以降、異変はまったくなかった、
とカタリつたえると。
この話、「稲生物怪録」によく似ています。
いくつかの経路をたどって、元ネタになっているのかな。
稲生物怪録のほうがもっと大量に
お化けが出てきます。
今昔のこのエピソードを、一ヶ月にわたって、
引っ張った感じ。
「天井の格子のマス目ごとに異なる顔」という、
非常にユニークな妖怪は、モノノケ録にも登場。
物の怪の仕業にも平常心を保っていると、
最後にボスキャラが現われて、
「降参しました」というのも、同じ仕組みです。
稲生物怪録―平田篤胤が解く
荒俣 宏
¥ 4,200 / 角川書店
( 2003-10 )
by AMAZ君(改)
さて、三善清行のお化け屋敷。
これは堀川五条、今の醒泉小学校のある場所。
小学校はお化け屋敷の跡地に建ってるんですヽ(´ー`)ノ
まあ、キヨユキが追い出したので、
もうお化けは出ないと思う。たぶん。
もうずっと前から建ってるので、
どのみち、今さら手遅れだし。。
警備会社も巡回中らしいし、
堀川通を渡れば松原警察署。
まあ、なんとかなるでしょう、
それらがお化けでない限りは(;・∀・)
でだ。キヨユキの許可を得て、
鬼たちが引っ越した先が、
大学寮の南門の東脇。
あははの辻にも遠くない。
自分の住居のため、鬼どもを恫喝・追放、
しかも大内裏のすぐ近辺に代替地を設けてやる、
キヨユキ。どーゆーつもり?(;・∀・)?
この鬼の一家、怪異も見せてくれるものの、
やけに人間くさい。
というか人間ですよね、この人たち。
キヨユキにいわれて、
五条堀川から、二条大宮に引っ越した。
君らは誰?
五条堀川も、うちの記事ではよく登場してきた場所。
五条道祖神があって、五条天神があって
…という場所。
牛若丸の伝説を伝える地でもあり、
(弁慶と出会うのは五条橋ではなく天神とする伝承もある)
繁昌神社(班女石)もすぐ近く。
松原商店街があり、醒ヶ井という銘泉があって、
(醒泉小学校の名はここから)
たぶん平安京よりもずっと古くから故のある地とも思えます。
道祖神社と班女石が、その名残りかもしれません。
また、菅大臣神社。
菅大臣といっても、総務大臣のことではないです。
菅大臣神社は、菅原道真の邸があった場所。
菅原氏は、野見宿禰を先祖とする土師氏の子孫。
あの相撲取りの元祖、野見宿禰です。
ライバルの当麻蹴速を、ライジーン・キックで蹴り殺した、
あの伝説の相撲取り。
◆AZ::Blog : 夜歩く3「相撲の節会」
菅原道真がカミナリの神=天神さまとしてあがめられるのは、
このあたりに理由がありそうです。
(長くなったので、次回へ続く。)