「夜歩く」
百鬼夜行を追う、このシーリズも12回。
サルタヒコを追った前のシリーズ「猿幻行」ともつながってて、
だいぶ話がばらついてきました。
このへんで、中間まとめをしてみたいのです。
学殖ないんで、いい加減な作業仮設ですが、
妄想をそれなりに一貫めいた線へ組み上げていくのは、
すごく楽しいもの。(症例ともいう)

もともとは、鬼を追っていたわけではなかった。
はじめに追いかけてたのは、相撲取りでした。
まず、昔の相撲の必殺技は、
蹴りであるとわかった。
日本書紀で、野見宿禰は、当麻蹴速を蹴り殺す。
(絵は北斎漫画・九巻「野見宿弥・當磨蹴速」)
ところが、キックを必殺技とするのは、
古代相撲や仮面ライダーだけではなく、
カミナリさまのワザでもあった。
日本霊異記の冒頭をはじめ、どの書でも、
雷神が登場するシーンでは、
いつだって「蹴り」が繰り出される。
さらに、怪力の相撲取りを追うと、
その始祖として、きっと現われる道場法師。
この僧は、愛知や奈良の重要なお寺の創建者とされ、
実在するようでもあり、いっぽう伝説に満ち満ちてもいる。
伝説のひとつでは、
道場法師は頭に蛇を2匹まきつけて生まれてきたと。
これは、雷神(たとえば賀茂別雷命)と同じ。
道場法師の子孫は、
男も女もことごとく怪力無双。
つまり、キックを必殺技とし、
道場法師の怪力を受けつぐ相撲取りたちは、
雷神の子どもたち。
*1
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迫るショッカーならぬ、迫る初夏。
七月は相撲の節会。
田植のあと、梅雨真っ盛りの、この季節。
じつは、カミナリキックの本当の役目は、
めぐみの水をもたらすことと、
稲を妊娠させることにある。
雨乞いと、種付け。
カミナリをイナヅマというのはそのため。
ツマは、古代では男女を問わない。
カミナリさまは、イネのツマ。
雨を降らせ、イネを妊娠させ、去る。
妊娠するイネは、神の嫁。
どうやら、おイナリさんのことらしい。
「稲荷」という字を当てる。
カミナリとイナリの、ナリつながり。
かつて田植えの時、オナリと呼ばれる女を、
処女から選び、神の嫁とした。
「キツネの嫁入り」という。
狐の嫁入りがあると、通り雨が降るのは、
このため。
雷神がさあっとやって来て、雨を降らせ、
イナリ(稲)に種をつけて、たちまちに去る。
雷神と稲の結婚。
実体のある結婚制度なのか、
稲の作柄を占う象徴的な意味のものか。
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雷神の特徴は、
パッと来て、パッとやって、パッと去ること。
鳥の影のようにすばやい。存在が見えない。
矢であらわされる。
「白羽の矢が立つ」とは、
天(山)から雷(矢)を放たれた家は、
神の嫁を差し出すという、太古のしきたり。
記紀の神話では、女神は丹塗矢に当たれば、
たちまち妊娠する。
神武記のイスケヨリヒメは排泄中に、
丹塗矢接近遭遇の憂き目に。ところかまわず。
そいえば、雷神ゼウスも、よくこの手で、
女をはらませては、去っていた。
神は矢のような早漏(;・∀・)
それで、マリアは処女懐胎。
太古の結婚の名残なのか。わからん。
世界がまだ無限に広がる平板だった時代。
数世代をみれば、定住するものも稀。
メンバの交換ができないほど、人口が少なくて。
ただ精子だけが交換される、シンプルな歌垣。
実体としてそうだったというより、
状況に応じていろんなバリエーションがありえ、
シンプルなプロトタイプを取り出せば、
この形、とでも言うべきでしょか。
*2
例えば、こんなのも考えられる。
男どもは、一定期間、
村からはなれて、秘密結社を作る。
山に住み、木を刈り、猟をし、
金属を作り出す。矢じりの民。
やがて、あるサカイの時期、
選ばれた男が異人となり、
神として、村に来訪する。
男はカカシのように、
片足、片目であるかもしれない。
それは単に勃起し、
恋の盲目であることの暗喩か。そんなことないか。
で事後、たちまち神は去り、
やがて男は何食わぬ顔で、
妹者のもとに戻り、
村で影の薄い兄者として、
神の子を育てる。
そういうことだったかもしれない。
もはや妄想以外の何ものでもない。
ちょっとスーパーマンとかスパイダーマンとか、
ヒーロー物みたい。あるいはマスオさんw
ふだんは、フツーの人(小さ子)で、
サカイの時には、ヒーロー(雷神)となる。
そのことを、日常の社会は知らない。
絵は、「北斎漫画・九巻、小子部栖軽、豊浦の里に、雷を捕」
北斎漫画の9巻は、「いくさ物語ども」。
相撲、怪力女、雷神、鬼退治と、
まるでうちの記事を読んだかのような。
どういうことだ。
北斎漫画―初摺
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じつはずっと気になってる、江戸の連中。
江戸後期。街道を
めぐり歩いて「民俗学する」人々がいた。
国学の徒をはじめ、
歌舞伎や浮世絵師、読本作家。
また、国学の講の末席にある、
大勢の地方の小金持ち、
あるいは、お蔭まいりの若造たちまでも。
ごっちゃに習合しつつ、
「日本」のことを調べまくっていた。
おそらく影にひなたに「反徳川」の思いを秘め、
ゆるやかに共闘する多層多様な日蔭の輩。
東海道に転がる石は、やたら伝説化されて、
歌舞伎などの材に取り込まれ、
名物ダンゴが宿場で売られる。
とくに、馬琴。
初期の柳田は自分の調査するあちこちに、
馬琴が伴走するのを感じたのではないか。
伝説を持つ石なら、北海道から沖縄まで、
調べたおしてるんじゃないかと思えるくらい、
馬琴は何でも知っている。
そして、北斎は馬琴ととても近しい人。
日本の裏面史について、
国学者よりもむしろ詳しかったか。
下品に通じているぶん。
馬琴から得たあれこれで、北斎は
「なにもかも」知っていたのかも。
国学末席、歌舞伎浮世絵読本、
地方有力商人、
お蔭まいり。
ゆるやかに結ぶ、倒幕の志。
彼ら「見えないもの」が歩き回った街道は、
やがて「道」として活性化し、
これが参勤交代用に整備された街道を裏返し、
維新にいたる基礎ネットワークとなっていく。

上の絵は、
「北斎漫画九巻・寡女大井子怪力」。
男が種付けに来ないなら、
女のほうから男を引っ張り込み、
種を奪ってもノープロブレム。
女が雷神でもかまわない。
滋賀・高島の寡婦・大井子。
田んぼの水路に巨石を投げて、
我田引水する怪力女。
相撲のチャンピオン・氏長をレイプ。
相撲取りの腕を脇に挟みこんだ、永遠の処女。
それは神のオチンチンをお股に、といってもいい。
九つの牙をもつ象を腋の下に、といっても。
十二単を着て神殿に囲われた女のもとへは、
男が通うほかないけれど、
それ以外の人たちは、
男も女も歌垣のサカイに、ともに集った。
名は問わない恋。
名乗りは、花いちもんめでも合戦でも、
勝ったほうが、負けたものを奪うことを意味したから。
もとは稲にまつわるのではなく、
春、狩猟採集の動植物の繁茂を願って、
天神(雷神水神、森羅万象)に祈ったものではなかったか
…というのが、私の妄想。
記紀の段階では、もう完全に、
稲の豊作を願う天神雷神信仰が、
山でも海でも確立されている。
さて、このシンプルすぎる結婚制度は、
時代を下るにつれ、どんどん廃れていく。
「白羽の矢が立った」家には、
神の嫁に扮した英雄が隠れていて、
山からやって来る「鬼」や「蛇」や「猿」を退治する
…と話はカタリ変えられてしまう。
神の零落。
やって来られることが、村にとっては、
迷惑になってしまった。
神のもたらす富なんて、
市場に行ったら買えますもの。
また来たの、神さま。
もう、迷惑ねえ。
ちょっと何かあげて、追い返さないと。しっし。
…お中元の起源も、これだったりして(;・∀・)
*3
神の嫁だったオナリさまは、
もう村から選ぶことはない。よそから雇う。
金でやとわれたイケニエ。
キツネ呼ばわり。
妙な術を使うものとして疎まれ、
イチコイタコの遊行の女は、
和泉式部をカタり歩き、
田植の時、雨乞いの歌舞音曲。
美しい日本の真の淵源をなすものたち。
寅さんとリリィさんを、ふと。
カミナリ=イナリ方式は、長期定住せず、
財産や富が、実体としても
概念としてもなかった時代のもの。
父・精霊(兄者)・子の、影薄い三位一体は、
やがて、父・母・子の聖家族にとってかわられる。
家族や氏、つまりイエの登場。
イエというユニットを通じて、財産を相続・分配。
カミナリ方式は時代遅れになっていく。
こうした、古い生き方が、やがて「鬼」となって
京の要所要所に出没する
…というのが、「夜歩く」の主題。
少なくとも、平安京以前から、
この地には稲作と結んだ天神雷神の信仰があり、
これが北野天満宮につながってることは、
かなり確かなことだと思い始めています。
…と、まとめのなのに、全然まとまりきらなかった(´ヘ`;)
もう一度、どっかで「まとめ」ますだ。
まだ、だいぶいろいろ書くことがあるんです。
終わるのか、このシリーズ。。