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たら本35「おすすめ! 子どもの本」

written by overQ
July 3, 2007
たら本35回「おすすめ! 子どもの本」
たら本、35回目は、「ほんの保管所」の高さん主催「おすすめ! 子どもの本」

たら本やってて、ときたま思うのですが、
子供の頃からよく本を読んでる人と、
大人になってから本をよく読むようになった人では、
読書の仕方、本との付き合い方に、違いがあるみたい。

子供の頃から、ひとりでたくさん本を読んでいた人は、
本のなかにはっきりした世界が造られてるような作品を、
好む傾向があるように見えます。
というのは、たぶん、
本の中の世界にすんなり入っていける、
「本の身体」を持っているということ。
魚が水の中で泳げるように、
なにげに本の中にダイブしていく。
本の海の中で呼吸できる、エラがあるんです。
謂うならば、読書する子どもは、本の中の魚。

逆に、子供の頃はそんなに本を読まなくて、
教科書や実用書など、情報ツールとして
本をもっぱら「利用」していたけど、
大人になるにつれ、大人の目で「本」を発見していった人々。
ただ、どうしても、本の世界に入っていく前に、
「判断」してしまう傾向があって、
「情報」として本を見ているところは抜けきれなくて。
それは自覚していても、いかんともしがたく、
批評や、好き嫌いといった、自分のほうの反応が、
本そのものより先に来がち。
本と分離して自己が、どうしてもあってしまって、
すうっと本の中に入っていけないようです。
本の外の人であり、エラなし。
本の海に入るには、
専用の潜水服を着用する必要がある。
本そのものよりか、本の評判(=潜水具)に左右されやすくもある。

必ずしも、どっちがいいというわけじゃないんです
…といいたいところですが、
やっぱりエラがある人のほうが、
読書っ子としては、ダンゼン有利です(;・∀・)
だって本を「読む」前に愛せるもの。
考える前に、そこで暮らせるから。
評論家にでもなるなら、別かもしれないけど。
本を対象としてじゃなく、その中に居る場所として、
当たり前に出入りする。
大人になってから本を読むようになると、
私もおおむねそうなんですが、ずいぶん
不利な位置からのスタートになるんです。

子どもと本。
子どもって水みたいなもので、
水に水を溶かすように、
他に対立せず溶けていく。
本の中にも、子どもは自分の居場所を、
ちゃんと見出せる。
世界に対していつもそうしているように。
どこへでも水のように浸透していける
…それは、読書だけじゃなく、
あらゆる場所で与えられるべき、
子ども=天使(社会の中に地位を持たぬもの、
私の用語では陰=鬼w)の特権なのですが。


イバラード―本の中のもうひとつの世界

今回、ご紹介したいのは、井上直久さんの作品世界。
前回のたら本でsa-kiさんが紹介されてて読んだのですが、
これがとんでもないシロモノでした。
(sa-kiさん、ありがとうございます。本の海を泳ぐ魚。)

井上直久さん、知らない方も多いかな、
(というか私がつい先日までそうだったのだが…汗)、
でも、じつにタイムリーに、7月4日にジブリからDVDが出ますヽ(´ー`)ノ

イバラード時間イバラード時間

¥ 3,990 / ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
( )
通常24時間以内に発送

by AMAZ君(改)

井上直久は画家・漫画家。
イバラードという架空の世界を、80年代はマンガで、今は主に絵画で表現しています。
イバラード / 井上直久の世界…公式サイト。ギャラリーのところで、絵がたくさん見れます。買えます。

DVD「イバラード時間」は、井上さんが描いてきた絵画作品をもとに、音楽や動き、風や電車や飛行物体を加えて、時と空間の「流れ」を演出したものらしいです。
イバラード時間…DVDの公式サイト。予告編が見れます。

井上直久の仕事で有名なのは、アニメ「耳をすませば」で、主人公が空想する世界、バロンが連れてってくれるあのフシギな世界。
あれが井上作品をフィーチャーしたもの。
耳をすませば―Whisper of the Heart●イバラードの世界を訪ねてみよう…映画「耳をすませば」のファンサイト。
イバラード大辞典(Iblard dictionary)…イバラードのファンサイト。かわいいオリジナルマンガあります☆

また、三鷹の森ジブリ美術館で上映されている、宮崎駿の短篇「星をかった日」は、井上直久原作。
ジブリ美術館ホームページ / 「土星座」上映作品

星をかった日星をかった日
井上 直久
¥ 1,733 / 架空社
( 2006-04 )
通常24時間以内に発送

by AMAZ君(改)

「千と千尋の神隠し」で、電車でつうっと行く不思議なシーン。
作品全体の中で浮いているといえるくらい異質な感触があるけど、
あれがまさにイバラードな雰囲気。
ハヤオ先生もこの世界に深く侵食されているようです。


星の売られる市場

イバラード。
井上直久が作り上げた架空の世界。
巨大なふたつの月が地平線から現われ、
ラピュタが平原の上に浮かび、
市場では星が売られています。
遠近法が成り立たず、遠くのものほど、
大きく近く見える世界でもある。
現実世界とはまったく別な原理で出来上がってるはずなのに、
絵本をながめるうち、この世界のことをずうっと前から知っていた
…そんな思いがしてきます。

虹化石の街へ―井上直久画集虹化石の街へ―井上直久画集
井上 直久
¥ 2,415 / サンリオ
( 2001-05 )


by AMAZ君(改)

「耳をすませば」の背景画もそうですが、
逆遠近法。遠いものほど、大きい。
これは、井上氏の大学卒業制作の作品が、
出発点らしい。
京都の円通寺の借景庭園に想を得たそうです。
円通寺,借景庭園,京都の観光

遠くにあるものほど、大きくて近い。
反対の一致
これがイバラードの原理のひとつのようです。

市場は塔の形をしているのですが、
いったん入り込むと、上に登る階段ばかり見つかる。
それで、お客さんは上へ上へと上がることに。
どうやって降りたらいいんでしょう。
それはマンガ「イバラード物語」を読んでもらうとわかるのですが、
市場がバベルの塔で、いったんはじめると、
上に登るしかないのは、じつは現実世界のことでもあるかしれない。

イバラードのすごいところは、
大枠になってる原理から、小さな個々の現象に至るまで、
みんな物語をはらんでいて、
しかも、それらが私たちの物の感じ方や、
考え方と、どこか底で通じてあってるところ。
つまり、イバラードは誰もの心の中に存在していて、
ふだん何気なくする判断や気分に、
知らず知らずのうちに影響を与えているのです。
ふつう無意識と呼ばれるもの。

子どもの頃から知っていて、
大人になっても心のどこかに、
そのままの形で残っている、あの場所。
悪や正義、愛や英雄が、世俗の政治色をもたないまま、
原形の不死の姿でたゆたっている場所。
それがイバラードなのかもしれません。
「大人になってから本」組の人にも、
文字やコトバの未然のゾーン、
コトバの生まれるあわいのようなイバラードは、
はじまりを取り戻せる一冊でありえます。

イバラード入門としては、
マンガの「イバラード物語―ラピュタのある風景
画集・絵本の「イバラード博物誌」(もあり)。

マンガは一冊きりしかないんですが、すごいものです。マンガ、もっと描いてほしいし、イバラード世界を舞台に、ほかの漫画家さんたちにもお話を紡いでほしいとも思ったりします。
画集は、短いキャプションから広がる空想を愉しむと、面白いです。イバラードに棲んでいるような気持ちがしてきます☆ 色がすごい。野見宿禰からつながる、石民の



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ウェブログ: Site icon 本棚の中の秘密の散歩道
時刻: July 7, 2007 11:37 PM
コメント

はーい、はーい、エラ、持ってます!(きっと)
批評家にはなれないですけど、本の中で暮らせます。
そうか、本の魚だったのか。(笑)
でも、あまりに本の中にすんなり入っていける分
どうも理論的に客観的に分析するのが苦手です。(^^ゞ

イバラード、素敵ですよね。サイトもちょっと前によく見てました。
>この世界のことをずうっと前から知っていた
ああ、本当にそんな感じがしてました。ずっと。
確かにイバラードは、隅々まで物語をはらんでる存在。
そしてやっぱり人々と底で通じてあってる場所だったんですね。


関係ないんですけど、「耳をすませば」のバロンは露口茂さんですね。
「猫の恩返し」の袴田さんも悪くないんですけど
最初の露口さんのイメージがぴったりすぎました。
山さんなバロン、素敵です。(笑)

Posted by: Site icon 四季 : July 4, 2007 6:40 AM

★四季さん。

本を愛する前に、本からまず愛される。
そういう特権をもっている人がいるんです。
四季さんやsa-kiさんは、そうじゃないでしょうか。

イバラード、面白いです。
つい先日から読み始めたばかりなんですが、
どんどん深読みできる本。
むしろ深読みしかできないといってもいいくらいで、奥が近くて、近くが遠くて、
この幾何学がじつに魅力的ですヽ(´ー`)ノ
DVD、まだ来てないですが、早く見たいです☆

そう、バロンは露口茂さんでしたね。
ジブリは、渋いところをついてきます。
井上さんも、ジブリが(宮崎高畑が)取り上げなければ、埋もれてた可能性かも。
イバラードは、小粒に見えて、じつは非常に大きい作品世界で、
これが評価できないなら、日本のマンガ文化はニセモノということになる。

マンガ「イバラード」は、80年代の産物。バブルの直前。
あの時、一瞬だけ、自由の風が吹いた。
「不思議大好き」からニューアカデミズム、YMO、大友克洋、村上春樹、北野武、それにナウシカが、あの時代の産物です。
60年代末や、1920年代ほどではないけど、文化がちょっと高揚した。
イバラードもあの時代だから、なんとか形になることができたんでしょうねぇ。
今は「谷」なので、ジブリがなんとか細い糸をつないでる感じ。
ジブリがあって、やっぱりよかった。。

Posted by: Site icon overQ : July 4, 2007 7:50 PM

魚と潜水服のたとえ、すっごく言いえて妙ですね。エラ、あるかなぁ・・・多分あると思います。エッセイとか評論よりも物語が昔から大好きでした。ただ疲れてくるとを動かすための筋肉が休みたいと訴えてくるような(^^;

それにしてもイバラード。すてきですね〜。
その存在を全く知りませんでしたが、ぜひぜひ読んでみたいです。私のツボに思い切りはまりそうな予感があります。まずは入門の漫画からいってみますね。

Posted by: : July 4, 2007 9:14 PM

★高さん。

楽器の練習なんかは、子供の頃からやることが、すごく重視されますが、
読書も、同じようなことがいえるのかもしれません。
人がどんなふうに、コトバや文字を習得していくのかは、
誰もがやってることなのに、そのメカニズムは解き明かせない。
人間のフシギの核心。

イバラード、面白いです!
作品として描かれているのは、じつはイバラード世界のほんの一部にすぎなくて、
読者はみんな、自分のイバラードを発展させているはず。
ファンサイトを見てもそう思えたし、
宮崎駿もじつは自作にマイ・イバラードをひそませています。
ものすごく、泳ぎたくなる海なんです☆

Posted by: Site icon overQ : July 5, 2007 8:17 PM

初めまして。
四季さんの所から飛んできました。
サムといいます。
「たら本、35回」に参加させていただこうかなと思いながら、皆さんの記事を拝見していました。まだ新参者です。
Blogの方もほとんど開店休業中でして、たら本の時だけ更新、みたいになってます。
こちらでイバラードを書いておられたので、思わず自分の記事をupする前に、先にコメントをさせていただきました。
私も井上直久さんのイバラードの世界が大好きで、よく本を眺めています。
じっと絵を見ていると、イバラードの世界の不思議な空間が、恐ろしいくらい目の前に巨大に広がっていくような感覚に襲われます。
この世界が広がる感覚は他の人の絵では味わえません。
お店や街の雰囲気もどこかなつかしい感じなので、「ああ、ここ知ってる」と思ってしまいそうです。
本当に、overQさんや四季さんの仰るとおりだと思います。

雑誌「幻想文学」で偶然知って、わざわざ取り寄せて買ったのがずいぶん昔のことです。
幼かった娘と一緒に眺めていましたけど、今じゃその娘(もう社会人)の方が私よりイバラードに夢中。
本も全部、娘が部屋に取り込んじゃいました。
私は、時々忍び込んで本棚から失敬するんです。(後でばれたら叱られますが)


Posted by: Site icon サム : July 6, 2007 12:44 AM

★サムさん。

はじめまして!
娘さんとイバラードの奪い合い…楽しそう(゚ー゚*)
イバラードでは、思念を形にできたりしますが、
じつは井上直久さんの本も、見かけは一冊でも、本当は何千何万の本なのかもしれません。
読むたび、ちがうページが発見できた気さえしますからヽ(´ー`)ノ

イバラードの基本的な建材は、「石」。
石は重い。
でも、イバラードの反対の一致の法則で、重いは浮かぶ。
日本でも、古墳時代には、たくさんの石の民がいて、
何十トンもある巨石を、何百キロも離れた地に運ぶことができたそうです。
石を浮かべることができたに違いありません。

石の民の子孫は、その後、寺院の庭作り、路傍のお地蔵さん作りをするようになる。
井上氏が大学卒業制作で、京都・円通寺の借景庭園からインスパイアされたのは、偶然ではないかも。
比叡山が遠景になるお庭なんですが、
「遠いものほど近く大きい」という発想をそこから導いたのは、まさに天才的。
ほとんど霊的な遺伝を感じます☆

Posted by: Site icon overQ : July 6, 2007 8:27 PM

こんばんはです!
エラの話は、たしかになるほどーと思いました。私は、どちらかというと本を読まない子だったと思うので、「好き嫌いという自分の方の反応」が先に来るのだと思いますね。
私のゾーンがせまいのは、そのせいだったのでしょう・・。

今となってはもう手遅れなので、これからまた幅を広げて行きたいなぁ・・とは思うのですが。これまた、なかなか知らない世界に足を踏み込むことへのためらいがありますね。
ミクマク族の聖地へはためらって正解なんでしょうが(笑)

Posted by: shosen : July 6, 2007 9:29 PM

はじめまして!
素敵な企画だな〜と思って33回から参加させて頂いています。

素もぐりと潜水服。面白い対比ですね!
子供の頃から読んでいるので私は素っ裸でもぐっているかもしれませんが、時々本の海から帰ってこられません(笑)

『耳をすませば』のバロンの世界大好きでした!でも原作があるなんて知りませんでした!ぜひHPのぞいてみますね。

Posted by: tomekiti : July 6, 2007 10:12 PM

overQさん、こんばんは〜。
イバラードをお気に召されたようで、
私としても喜ばしい限りです。
さらには「本の海を泳ぐ魚」という最大限の褒め言葉を賜り、
感激で涙が出そう(T-T)(←って既に泣いてるし)

「イバラード物語」で世界観をある程度掴んでおくと、
他の作品にも入りやすいと思うので、
イバラード入門にはぴったりでしたでしょう?
「指輪物語」「ガリヴァ旅行記」から「西遊記」「三国志」まで、
洋の東西を問わず有名作品の影響が垣間見えるのもツボでした。
それに魔法使いの天敵(!)めげゾウがなんとも可愛い♪
そういえば、イバラードでは今日がお正月ですね。
overQさんにとって素敵な一年になりますように(^^)

さぁて、そろそろ私もたらいまわしの記事を書かなくては!

Posted by: Site icon sa-ki : July 7, 2007 2:56 AM

★shosenさん。

子どもは適応力があるとよく言われますが、
適応力とかいうより、とりあえずそこで暮らしてしまうという感じでしょうか。
生まれてきて、見知らぬこの世界で、
自分が選んだわけでもない家族と生きていく力が(笑)、やっぱりあるにちがいない。
本を読むときでさえ、その力が発現するみたいです。

あと、外国語の習得と同じ問題が起きてる可能性も。
子供の頃から本になじんでないと、じつは、
日本語とはいえ、母国語としてはよく使いこなせない表現や語彙などが、
わりあい多く残るということも、ありえそうです。
今さら、そんなことに気づいても、手遅れなんですが、
ふとそんなことを思います(;・∀・)

Posted by: Site icon overQ : July 8, 2007 12:00 PM

★tomekitiさん。

はじめまして、こんにちは!

本の海から帰ってこられない…とってもうらやましい惨事ですヽ(´ー`)ノ
ある種の本は、じつはこの世界よりも大きくて、
この世界のほうがほんとは本の中にあるんじゃないかと思ったりします☆

井上直久さんの世界も、そんなひとつかも。
DVDも見てみましたが、非常によかったです。
最初はマンガがおすすめです!

Posted by: Site icon overQ : July 8, 2007 12:06 PM

★sa-kiさん。

イバラード、教えていただいて、大感謝です!
「イバラード物語」から入ったのも、おっしゃるとおり、大正解で、
絵画集でもその背後にストーリーがあることを当然の前提にして、眺められましたヽ(´ー`)ノ

めげぞう、いろんな場所に、いろんな大きさで出没します。
小さい・大きいが、じつは必ずしも大小ではないというのが、イバラードの不思議の掟。
めげぞう、魔法使いのやる気を奪うという設定も、深遠です。
じつはウロボロスなのかもしれません。
DVDもちょっと見ましたが、なかなか良い感じです!

Posted by: Site icon overQ : July 8, 2007 12:15 PM

えらの話、感覚的にすごく納得です。
私の場合はそこから発展して、すごくお芝居がすきなんです。お芝居を見ているときも、必ずその舞台を一緒に駆け抜けてるんですよね。実はみんなそういう感じで見ているのかと思っていたのですが、あるとき友達と一緒に言ったときに効いたらそんなことはないといわれてものすごくびっくりした記憶があります。

Posted by: うららん : July 13, 2007 11:37 PM

★うららんさん。

お芝居にも、その中で呼吸できるエラがあるんですね!
お芝居で、観客は誰も、五感を通じて、同じ情報を受け取っているはずなのに、
それがたんに「情報」のままとどまる人がいる一方で、
「情報」の水面を越えて、深くダイブしていける人もいる。
それって、とっても、不思議なことに思えます☆

Posted by: Site icon overQ : July 16, 2007 9:21 AM
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