その頃、私は10歳になったばかり(の美少女)だった…と思う。物心ついて以来、物語にとりつかれていた私。
毎晩のように、寝る前のお伽話を大人にせがんでいた。一日にひとつ、何か「面白いお話」を聞かないうちは、眠ることができなかったのだ。
字が読めるようになると、一日ひとつの「面白い話」を求めて本を読み漁り、暖炉の横のハメ殺しの本棚に書割のように置かれていた文学全集も、学校の図書室に古来より伝わる無数の落書きが呪文のように塗り込められた児童書も、ことごとく読みつくしてしまった。(小学生の私にとって、それが手近にあるすべての本だった。)
もうこのままでは、私は不眠症で死んでしまうしかないのだわ、わずか10歳(の美しい少女)のままで!
そんな悩みをかかえ、ねむそうなまぶたの重みで体をふらつかせながら歩いていた夕暮の街角で、私はひとりの顔の長い男にぶつかったのだった。
話してみてわかったのは、その人は長い長いあいだ外国に行っていた私の叔父で、戦争以来はじめて「本土」に帰ってきたということ。
私の父(つまり叔父の弟)とは二十以上も年が離れていて、叔父が戦地におもむいたのは、父がまだ赤ん坊の頃だ。
「いったい何歳なんだ、叔父上」と思ったけれど、眠い脳はその算術に耐えず(そもそも算数は割り算から向こうは未踏の荒野)、叔父さんが、
「外国ではときどき、時間の流れのちがう国があるんだ」
というと、その浦島太郎のような話を真に受けてしまうほど、物語どっぷりな私だった。(今から思えば、叔父さんは何かの「寓意」でそう言ったのだと思う。)
「そう。それなら」
ととくとくとくと砂糖なしココアのこげ茶色の液をカップに垂らしながら、叔父さんは言った。
「私が戦争に行く前、そうちょうどあなたくらいの年のころだ、夢中になって読んでいた童話を教えてあげよう」
そうして叔父さんは、この話を話し始めた。それは前の前の戦争前に地方の新聞に載った短い短い童話で、海若藍平という幻の作家が書いたという。叔父さんはその内容を一字一句たがえず記憶していたのだ。
ああ、なんてすごいお話!
こんなに短いのに、こんなに、こんなに面白くて、フシギで、胡蝶の夢のように深く謎めいていて…と感動にひたりながら、私はそのまま眠りに落ち、三日分の惰眠をむさぼったのだった。
目覚めた時、叔父さんは再び外国に旅立っていた。
置き土産だといって、そのころ三一書房で出版され、数日前に完結した「夢野久作全集」の第7巻を、私に残して。
夢野久作? 海若藍平じゃないの?
夢野って、あのヘンテコでわけのわからないチャカポコな「ドグラマグラ」を書いた人?
怪奇や猟奇やエロやグロな、「地獄」とか「犬神」とか「腸詰」とか「キ○ガイ」とか「木乃伊」とか「骸骨」とかいったおどろおどろしい題名が並ぶ、昭和初期の探偵小説の作家のこと?
本の付録についていた年譜を見てわかったのは、そのころ、夢野は九州日報の記者で、新聞の家庭欄の埋め草に童話を毎週書いていた。
海若藍丸は、その時のペンネーム。まだ「夢野久作」ではなかったこと。
そして、彼はまた「かぐつちみどり」という名で、「オシャベリ姫」という童話も書いている。
おしゃべりが大好きなせいで、あんまりたくさんいつまでもオシャベリを続けるうち、いつの間にか「本当のこと」と「嘘のこと」の区別がつかなくなってしまう姫さまのお話。
ああ、それって、まるで私のようだ!
お話の読みすぎで、現実と物語の区別がつかなくなっている!
そういえば、叔父さんの話してくれた「虫の生命」だって、夢と現実が入れ替わったような話だし、夢野久作という人は、その筆名を名乗る前からすでに、「夢のひさかた」をのぞいていたようなのだ。
そう考えるようになってから、私は起きている時もじつはこれは夢かもしれないと思い、夢の中でもそれはそうとも思えないことに気づいて、夢とうつつのあわいが地続きとなり、やがて激しい不眠症からは解放されるようになった。
叔父さんのお蔭だ。ありがとう。
或いはあれ以来ずっと、夢の中にいるのかもしれないけれど。
私にとって、夢野久作は、童話作家だ。
彼のいちばんすごい童話は何、と問われれば、即座に答えることができる。
「白髪小僧」だ。
これがどんなに面白いかと言えば、すでにこの本の中にこう書いてある。
この書物に書いてあることは、世界一の利口者と世界一の馬鹿者との身の上に起った、世界一の不思議な面白いお話である。
なにせ「その本」こそが、この物語の主人公なのだ。
本の中に「その本」自身が登場してしまう、ネバーエンディングなメタフィクション。
(事実、この作品は諸般の事情で「未完」であり、読み終えた者は永遠にその「つづき」を思いあぐねる呪いを受ける。)
長編童話で、夢野の処女作。杉山萠圓という名前で発表した。杉山は彼の本名で、父の杉山茂丸は右翼の大物。
この父は本を読み書きするような人間がほんとうに立派かどうかに疑いをもって、息子の学業を途中でやめさせたこともある。
久作もそれに半分くらいは賛成だったにちがいない…それが自己存在を全面否定する考えであるにせよ。
夢野久作もまたカフカのように、自分と世界の戦いでは、世界のほうに味方した。
*1
「白髪小僧」は、お話が大好きで、お話を読まないと眠ることができないお姫様が、自分の紡いだお話の中にからめとられて、テンヤワンヤになるお話。
いくつもの名前を持ち、乞食のような姿をした白髪小僧が、川で溺れるお姫様を助ける…のが発端。
姫を助けてもらったことに感謝した王様が、お礼に贅の限りを尽くしてもてなすが、白髪小僧はちっとも感心してくれない。
なぜなんだ、と頭を抱える王様に、姫が答えて、
「その理由はこの本に書いてあります」
その本には、姫が本を拾う様子、なぜ姫が白髪小僧に助けられたかも書いてあり、つまり世界はすでにこの本の中に在るのだった。
かくして、姫は王様たちの前で、とうとうとこの本を読み始め、物語世界が開かれる。。
もうすでに戸惑い面食らう(ドグラマグラ)な発端。でも、これが最初のほんの3ページほど。以降、この迷宮が延々と入り組んでいくから、すごい。
ボルヘスは鏡とセックスは、人の数を増やすが故に忌まわしいと言ったけれど、この本の中でも、
この国の古い掟を最早 お忘れ遊ばしましたか。
『人の声を盗む者。人の姿を盗む者。人の生き血を盗む者。この三ツは悪魔である。見当り次第に打ち壊せ。打ち殺せ』
とあって、世界を真似るオウムと鏡(それに生血の再生産=生殖?)は、悪魔。
そやつらのせいで、本の中はまるでバベルの図書館のように増殖し、ボルヘスすらすでに「この本」のうちに含み込まれる始末だ。
鏡を通じて、姫も何人にも増殖し、オリジナルとコピーの見境もあいまいとなる(たぶん私も、姫の転生のひとつなのだ)。
じつのところ、「私」が書かれているこのAZ::Blogさえ、じつはこの本の「中」に含まれていて、この文も「白髪小僧」の一部かもしれないのだ。
というのも、こういうわけだ。
AZ::Blogの書き手(overQさん、推定男子)は、このところ、一ツ目の巨人の伝説を追いかけて、記事を書いてきた。
ダイダラボッチやカラカサお化け、ギリシャのサイクロプス、エジプトのホルス神など、片目片足の巨人や妖怪の伝承は世界にあり、その正体が「太陽を瞳とする、天空そのものの神」であることを、ムダに長々と解明してきた。
(この神には、隠されたもうひとつの眼もあり、それが夜に開かれた月(moon)であることも。)
「白髪小僧」には、三つの始まりがある。
ひとつは姫が本を拾うこと、ひとつは白髪小僧が姫を助けること。(この二つの発端を持つことで、姫が本を読み上げることで開始する「無限ループ」を回避する。)
そして、もうひとつが本当の、この本自身が語る始まりで、巨人が死んで、その亡骸から世界が生まれることが歌われる。
死んだ巨人は石神となり、鏡とオウムを生んだ。白髪小僧は石神の呪いのため、乞食の姿にさせられている、と。
石神の歌は、こう歌う。
男はウンと言いながら、青玉の眼を見開いて
何処が果てともわからない、暗(やみ)の大空見上ぐれば
左の眼からは日の光、右の眼からは月の影
金と銀とに輝いて、二ツ並んで浮かみ出し
一ツは昼の国に照り、一ツは夜の国に行く。瞬きすれば星となり、呼吸をすれば風となり、
嚏(くしゃみ)をすれば雷となり、欠伸をすれば雲となる。
これは天空の神ではないか!
なぜここにAZ::Blogのネタが?!
苦労して解明してきた天神の秘密が、やすやすと歌いこめられている!
夢野はAZ::Blogの記事をパクったの?!
そもそも貧しい若者が姫を助け、その褒美を断わりながらも長者になる話は、日本の昔話「炭焼五郎」やグリム童話にある長者譚。(最初に取り上げた「虫の生命」の主人公も、職業は炭焼きだった。)
夢野の佳作短篇「瓶詰地獄」は、今昔物語集・巻26に出てくる話が元で、これは高知西南沖の「妹兄島」の伝承であり、「おなり姫」といって沖縄などにも分布するもの。
「犬神博士」の主人公がチイと呼ばれるのは「小さ子」伝承。一寸法師や桃太郎と同じく、スクナヒコナ神の転生である。
そして、炭焼長者も、妹兄島も、AZ::Blogが取り上げてきたネタなのだ。(小さ子はこれから取り上げる予定だった。)
もしかするとAZ::Blogは「白髪小僧」の一部なのではないか、という深い不可解な疑いが。
いや。ひょっとすると。この世界そのものが、そうなのではないか。
「白髪小僧」は未完であり、鏡とオウムによって中身が増殖する本なのである。
最後にまた、「私」の話に戻ろう。
私は今、27、一児の母だ。
ときおり、父母や周りの人に「叔父さん」のことを訊ねてみる。
ところが誰も、あの「顔の長い男」のことを覚えていない。
戸籍にも彼の記載はなく、代わりに私の欄の傾いた十字架のような×印が、少女の頃のあの思い…本の中に「ほんとう」があって、現実はウソ…を思い出させる。
しかしここが「本の中」ならどうだろう。私の「ほんとう」は何だろう。
バツイチとはいえ、私はこの子を処女懐胎して生んだ。父はいない。誰も信じてくれないから黙っているが、それが私の「ほんとう」だ。
白い髪の美しい赤子で、名前は「天一」。人からはラーメン屋みたいとからかわれる。
こころなしか、顔がすでにして、長い。
あなたは、嘘だと思っているだろうか?
しかし、読んでいるつもりのあなたもまた、じつは読まれている本の中の住人であることを私は知っている。
世界は「白髪小僧」の中にあるのだ。世界より大きい本が存在する。
どう、面白い本でしょう? それにもっと面白くすることだってできる。未来の白ページは、空のように広く、用意されている。
「私」は、白髪の赤子を天に掲げ、「高い、高い」してみる。
空が藍いな。
ふと、苦いココアが、飲みたくなる。
◆「白髪小僧」はじめ、夢野久作の童話は、ちくま文庫版「夢野久作全集1」に収録されています。まだまだたくさんフシギな童話がいっぱい。なお、夢野久作は、その名にちなんだはずの怪優・嶋田久作と同様、「顔の長い男」です。
はじめてトラックバックさせていただきます。
「奇妙な世界の片隅で」のkazuouと申します。
次回のたら本、りつこさんからご指名をいただいております。また改めてご挨拶にうががいますので、その節はよろしくお願いいたします。
overQさんの記事、とても素敵な「おはなし」ですね。こんな叔父さんが欲しかったです。
僕も夢野久作全集を持っていますが、童話の巻は未読です。近いうちに「白髪小僧」読んでみたいと思います。
うわーー。すごく素敵な物語でびっくりしてしまいましたー。
夢野久作の童話を読んでみたくなりました。
ドグラマグラはもう20年近く積んだままなんです。
>学校の図書室に古来より伝わる無数の落書きが呪文のように塗り込められた児童書
…ツボに入ったw
そういうの、ありましたねぇ。
あと、ウチの社に、「叔父さん」の冒頭のせりふみたいなのをそれはそれは自然に発する方がいらして、
これまたツボ。
ココア飲もうっと。
あ、「瓶詰地獄」と地獄つながりで、「少女地獄」なんてのも…
書簡体で書くときの夢Qって、とくに冴えてる気がするの。
★kazuouさん。
こんにちは。はじめまして。
夢野久作は夢野久作になる前、童話を書いていた…というのは、何かフシギな気もするし、ドグラマグラの秘密を解く小さな鍵なのかもしれません。
夢の中に夢が現れるとことか、結婚という隠れた主題があることなど、ドグラと童話に共通点があるかもしれないです。
新聞に童話を書く時のペンネームが「藍平」なんですが、「白髪小僧」に出てくる王は「藍丸」。
夢野は自分自身の神話を持っていたにちがいないです!
次回、たら本、よろしくお願いしますね。
わからないことなどご質問がございましたら、いつでもお声をおかけくださいませ。
…といいつつ、けっこう私自身も、よくはわかってなかったりするかも(;・∀・)
★りつこさん。
主催者さま、ご苦労様です!
夢野久作は、「白髪小僧」と、踊り子のチイちゃんが活躍する「犬神博士」が好きです。
童話から夢野作品をながめると、新しい夢野久作の世界が見えてくる気がします。
まだまだ、読まれてない多くの顔を、この作家は持っているようです☆
★ne_sanさん。
落書きで塗りこめられた図書室の本…これは、高校の時の実話です(笑)
寄せ書きを書くノートのようになってて、マイナーな本に落書きを残すのが、流行していました。
親子二代にわたって落書きしてる人もいて、風習として確立していたような気がします(;・∀・)
夢野は文字から入った小説家じゃなくて、文盲が本来の文芸をになってることを、身近に知ってたんじゃないでしょうか。
なんとなく、近代文学史からはずれてしまうのは、そのせいではないかと考えたりします。
「炭焼五郎」や「妹兄島」、天神の伝承を取り込んでいるのが、たいへん興味深いです。
このことって指摘した人はいないかも。
私はこの数ヵ月、自分で調べていたものが、次から次へと夢野作品に現われて、ちょっと気味が悪いようなシンクロニシティを感じてしまったです☆
overQさん、こんにちは〜。
「白髪小僧」ね、石堂さんの「ファンタジーブックガイド」にも
挙げられていたんです。「とびらのむこうは別世界」という章で。
いずれ読もうと思っていたんですが、どこに入ってるのか分からなくて…
しかもチャカポコがかなり苦手だったので(笑)、あんまり真剣に探してなかったんです。
でも、ご紹介を読むととっても面白そう〜。
これはぜひとも読んでみたくなりました。
きっと「ドグラマグラ」から入ったのが間違いだったに違いない!
こちらは私好みの匂いがぷんぷんします。(笑)
★四季さん。
白髪小僧は、すごい作品です。
たぶん主人公の白髪小僧は、何らかの意味で夢野自身の象徴のはず。
自分自身の神話をこの人は持っていたように思います。
白髪小僧の「白」をはじめ、各キャラクターに「色」が振り分けられていて、そこには何か象徴性が与えられてるようなのです。
かなり深読みもできる作品なのかもしれません。
「売る作品」として書いたんじゃなくて、ほんとに趣味として…というより、ふきこぼれるようにやむにやまれず書いたようなのも、この作家の大きさを感じさせます。
リンクした青空文庫の「虫の生命」「オシャベリ姫」が、「白髪小僧」の類話。
白髪より後に書いたはずなので、中途で終わる白髪小僧がどのような続きを持っていたのか、ほのかに思わせます。
白髪と「犬神博士」から入ると、夢野久作のすごさがわかり、また難解な「ドグラマグラ」への扉が開かれるにちがいありません☆
Posted by:「白髪小僧」気になるーーーん。
そうそう、前回のたら本で
overQさんが挙げていた「犬神博士」
気になったので図書館で借りようとしたのですが、
そもそも図書館に無かった!
県レベルの図書館で探さないとダメなのね。きっと。
★菊花さん。
「白髪小僧」ならびに「犬神博士」。
ともに、たいへん面白いです。大傑作といってもいいでしょう。
菊花さんには、とりわけオススメの作品のように思えてならないです。
夢野久作は、能の謡いの教授免許を持ってて、古典芸能に身をもって通じてる人。
父が右翼の大物でもあり、どうやら日本の古層というような伝統を、肌で感じて育ってるようです。
日本の古典文学は、記紀万葉の時代から歌舞伎・読本・落語にいたるまで、無文字文化と切り離せない。
身体を使って表現する劇や歌やカタリを巨大な背景としてもっていて、「文字」になってるのは、そのごくごく氷山の一角。
夢野久作が他の「近代小説家」とどこかちがうのは、こうした「無文字」を背景にする古いブンガクのやり方を残してるから…と思えます。
でも、この「ちがい」のせいで、夢野作品の一部はいまだに入手がやや不便。
評価も「マニアックな好事家の愛玩物」みたいなところがあったり。
「白髪小僧」はほんとに面白いんですが、全集か、さもなければ青空文庫という状態でしょうか。
青空文庫で、パソコンのモニタで読むのも、慣れるとさほど苦でもないのですが、長いのはやっぱりちょっと辛いです。
フォントでいいのを持ってると、わりと快適に読む方法があるんですが、フリーフォントでいいのがなくて。。
この件はまた記事にして書く予定です☆
overQさん、こんにちは〜。
読みましたよ、白髪小僧!
いやあ、面白かったです。
枠物語って元々好きなんですけど
その枠が壊されてしまうのってもっと好きかも〜。
この感覚、堪らないですね。
未完だったのが残念なような…
でも変にこじんまりしてしまわなくて良かったので
あれはあれでいいんでしょうね、きっと。
「犬神博士」も探してみますね!
Posted by:ちくま文庫の「夢野久作全集1」に
「白髭小僧」が入っていて、読みました。
すげーおもしれー。
まるでマトリョーシカのように、
物語の中に物語があって、
その中にも更に物語があって、
でも、マトリョーシカ人形は小さく成らず、
拡大というか、拡散というか、
無限ループに入っているというか。
五七五のカタリ口調の歌もイカス。
他の短編も面白不思議ワールドで、
どこかチャカポコドグラマグラ臭が。
ちくま文庫の「全集・第5巻」に
「犬神博士」と「超人鬚野博士」が
収録されているようなので、
探して読んでみます!
★四季さん。
おお。読まれたのですね、白髪小僧!
これが夢Qさんの最初の作品だというのも、たいへん驚きです。
この作品を読んでようやく、夢野がドグラマグラで何をやろうとしたのか、わかってきた気がします。
途中で終わってしまってますが、本来は最初のシーンに戻ってくるような構造のはず。
「犬神博士」もまったく同じで、最初のシーンに戻ってくるはずなんですが、中途断絶で戻ってこれない(笑)
となると、ドグラマグラだけが、輪廻の輪を完成したとも言えそうです。
最初の作品「白髪」が、最後の作品「ドグラ」で閉じるとも。
★菊花さん。
白髪小僧、すごいですよねえ!
この「最初の作品」を念頭に置くと、他の夢野作品へのまなざしも、大きく変わってきそうです。
夢野の作品に、民話や伝説、民間信仰のような無文字文化の伝承が、思いのほか、濃厚なのも、たいへん気になります。
ドグラマグラもこの点から読み直してみようと思ってるんですが。
夢野の故郷は、八幡信仰発祥の宇佐八幡のあたり。
「瓶詰地獄」の妹兄島伝承、「白髪小僧」の炭焼き五郎伝承は、どうやら八幡さんとともに伝播した形跡があるんです。
うーん。
いったい夢Qさんとは、何者なんでしょう?!