AZ::Blog はんなりと、あずき色☆: 音楽のときめき アーカイブ

5ive For The Dog Days

written by overQ
September 6, 2007

今日もまだまだ暑かった(;´ρ`)
でも、一時に比べると、ちょっとはマシになったでしょうか。

今年は、夏というより、夏の上に、もうひとつ上位の騎乗位の季節が乗っかっていた。
ヨーロッパでは、そんな猛暑を「犬の日 The Dog Days」というそうです。
前回記事のコメントで教えていただいたのですが、香港でも「狼の日」というんだそうな。
マスター・キートンでも、犬の日の話が出てた(「長く暑い日」)のを思い出します。ついでにカムイ外伝の「暗鬼」も。

おおいぬ座のシリウス(=天狼星)が太陽の道に入る時、暑季が出現する。
…そんな世界に広まった占星術から来てるらしい。
古代エジプトでは、シリウスがナイルの氾濫を予言する星。
洪水という災いと、豊饒な実りという幸いを、ともにもたらすもの。
ここから、命を奪い命を与える冥界の門番として、犬の神アヌビスが、シリウスと同一視された。禍福あざなえる神としての、犬。
酷暑も、死と再生のサカイの時…なんでしょうか。近所の犬さんたちは、へたりまくってますが(;・∀・)

というわけで、久々の5ive
四季折々、最近聴いてる音楽をさらしてみる5iveですが、あんまり暑いんでさぼってましたw
フツーの夏に戻ったようなので、ようやく。


From Left to Right
1
From Left to Right / Bill Evans
アコースティックとエレクトリック。ふたつのピアノを左右に配したジャケ。From Left To Rightは、ビル・エヴァンスのエレPを堪能できる一枚。あるいはエヴァンスの中でもっともリリカル。泣けます。いや、涙の一瞬前に悲しみを振り切って逃げる。その涼やかさ。夏の終わりにぴったりの一枚です。


The Complete Africa/Brass Sessions
2
The Complete Africa/Brass Sessions / John Coltrane Quartet
あの静謐なグリーンスリーブズが、コルトレーンの唇にかかると、火の粉巻き上がる灼熱の音楽に。光が極まると闇となるのか、闇が極まると光となるのか。ドルフィーが演出するゆらめく炎のようなホーンの群に、エルヴィン・ジョーンズがタタラを踏んでリズムの息吹を叩き込む。そして燃え立つ火の粉のごときトレーンのソプラノ。闇の中、立ち上がるのは、奇妙な枝葉のフレーズをつけ、咲き誇るは幻の花々。


Money Jungle
3
Money Jungle / Duke Ellington, Max Roach, Charlie Mingus
巨人と怪物と豪傑。エリントン、ローチ、ミンガスの三つ巴。三大怪獣決戦のスペクタクルと思いきや、じつは三頭をつけた独りの高貴なケモノだったかもしれません。ひとつの魂が六本の腕を使い演奏しているような、「ひとつの音楽」。エリントンのピアノがもっとも直接に聴けるアルバムでもあり、自分のピアノはそれ自体でオーケストラというデュークにとって、三人であることもフリーであることも、なんらその統一感の妨げとはならない。多様性の中にこそ、統一性が。マネー、ジャングル。


Rockin' the Suburbs
4
Rockin' the Suburbs / Ben Folds
ベン・フォールズの見事なソロアルバム。これでもかこれでもかと、小気味いいポップが繰り出されます。ほどんどの楽器演奏もひとりでこなしていて、細部にわたるまで血が通った、職人仕事の気持ちよさ。細かいところまでアイデアに富んでいて、くるくる変化する音の群れはが飽き(秋)させません。誰かが応援してあげなきゃw Carrying Cathyが溶ろけるなあ。いつかきっと「名盤」と呼ばれる日が来る一枚。


Joia
5
Jo'ia / Caetano Veloso
カエターノの剥き身。ジャケットからして裸体なのですが、殺風景なほどシンプルな構成で、音から音へと飛び石づたいに、ひらりふらりとたどっていきます。かなり風変わりな音楽ですが、真夏のぼおっとした気持ちのとき聴くと、なぜか脳より少し上の辺りで心地いいのです。



5ive Seasoning flowers

written by overQ
April 27, 2007

5ivee.gif最近よく聴いてる5枚のアルバムをさらしてみる、5iveシリーズ。
前は冬バージョンだったので、今回は春物です(どこが春かはナイショ)。


メセニー・メルドー

1
Metheny | Mehldau
ジャズを初めて聴く人にも、ジャズをよく聴いてきた人にも、ともに好評価な、2006年の話題作。メセニーの藍とメルドーの白。溶け合ったり、分離したり、ときには互いを取り替えたり。スリリングな音世界。斬新と伝統、才気と野生、若気と老練、精密と大胆が交錯します。Methenyってセ(シ)にアクセントがあって「メシィィニ(飯煮)」みたいな発音らしいけど、Mehldauはどこにアクセントがあるんでしょう。


ハーツ・アンド・ボーンズ(紙ジャケット仕様)

2
Hearts And Bones / Paul Simon
春のこの時期になるとなぜかよく聴く一枚。ポール・サイモンの静かな名盤。通勤通学によく合うような気がします。あわただしいリラックスとひそやかな狂気が同居した、都市生活のサウンド。


My Name Is Buddy

3
My Name Is Buddy / Ry Cooder
2007年のライ・クーダー。これまでアメリカを横断し縦断し、音のテクスチャを織り上げてきたライ。このアルバムでは猫を主人公に、空間のみならず、アメリカの歴史をも縦横に織りこんでいきます。聴き応え・読み応えのある傑作。参加アーチストも豪華な、 Discover Americaな一枚。


Sea Change

4
Sea Change / Beck
ベックの季節は春…と思い込んでいます。ものうい春のうたた寝にぴったりの一枚。独り身のけだるい春眠向きか(淋笑) ベックはこのアルバムのあと、結婚したけど。


Monk Alone

5
Monk Alone / Thelonious Monk
60年代のモンクのソロを集めた2枚組。粒ぞろいで、どれもこれもモンク。ヘンテコなモンクぶりのあいだに、異様にリリカルなかわいいフレーズをシーズニング。そして、どの曲もエンディングのお茶目なこと。
投稿者 overQ : 6:35 PM | トラックバック


5ive Heavenly Jive

written by overQ
February 15, 2007

この頃よく聴いてる5枚。5ive Heavenly Jive
サイドバー用のコンテンツとして用意したものだけど、ブログの記事としても書いときますわね☆

James Brown / Make It Funky

先月なかばには遺体がいまだに埋葬されてないと伝えられていたけど、その後どうなったのか、JB。生き返ってしまったのではないか。
…そう、JBは不死身だ。信仰はそこから始まる。
生まれた場所も日もあいまいなJBだもの、じつは生まれも死にもしてなくて、「永遠」だけが彼のすみか。そう信じることにした。
ジェームス・ブラウンなんて、山田太郎のようなぞんざいな名前…僕らはさらに記号化してJBと呼んだ…あんなシロモノについて、呼びようも名づけようもない。つまりは、彼が「名づけ得ない何か」であったことは明らかだ。
JBを崇めよ。そこに音楽がある。パパ・レグバ。歌舞音曲の神。彼がクリスマスに死んだ偶然は、神話の一部。
JBは不死。あらゆるビートの影で黄泉がえり、男は叫び踊りつづける。無限夢幻にサンプリングされ続ける、JB音源。
ちなみに「産む機械」発言が話題になった時、私は「Sex Machine」を絶えず連想していました(;・∀・)v

Make It Funky: Big Payback 1971-1975Make It Funky: Big Payback 1971-1975


Polydor / Umgd
1996-07-23
在庫あり。

by AMAZ君(改)

Sergio Mendes / Timeless

セルメン。…しかし、このセルメンは、2.0である。
過去ではなく、未来の匂いを発散させるセルジオ・メンデス。
iPodで聞いた時、耳の中でこじんまり、ジュワッと心地よい。物体感のある、さわれるサウンド。ワーオ、ワーオ、ワ。

タイムレス(スペシャル・エディション)(DVD付)タイムレス(スペシャル・エディション)(DVD付)


ビクターエンタテインメント
2006-09-15
在庫あり。

by AMAZ君(改)

Paul Desmond / Bridge over Troubled Water

大好きなポール・デスモンド。「軟弱者ッ!」という彼の最大の魅力が遺憾なく発揮された傑作。
ゆるい、とにかく、どこまでも、ゆるい。音って、こんなに、耳の中で、愉しめる。噛めば噛むほど味の出る「瞬間」。ほわんと優しい気持ちになりたい時に、ぜひ。

タイムレス(スペシャル・エディション)(DVD付)タイムレス(スペシャル・エディション)(DVD付)


ビクターエンタテインメント
2006-09-15
在庫あり。

by AMAZ君(改)

Dee Dee bridgewater / Dear Ella

以前、jmさんに教えてもらったディーディー。
ブリッジの下を流れるウォーターは、トラブルではなく、スウィートハニー。約束のあの場所へ流れ着くにちがいない。
Ellaのたどった一音一音を楽しむように、DeeDeeは言の葉のひとつひとつを発音していく。

Dear EllaDear Ella


Polygram Records
1997-09-30


by AMAZ君(改)

The Beatles / Love

ビートルズ原理主義者にはかならずしも評判のよくないラヴですが、私は大好きです、ごめんなさい。
ビートルズ音源、自分でもアシッドなどのソフトでツギハギして、編曲=変曲を楽しんだことがあるので、ジョージ・マーティン親子の至福がわかる。いつまでもいじくっていたくなる、「全体でひとつの曲」たる、ビートルズ全音源。
「永遠の意味の、永遠に無意味の、永遠の遊び」とゲーテが音楽について評した言葉が、ぴったり当てはまる。
…にしても、いつになったら、キミたちは、オリジナル版のリマスターを出すつもりなのか?!

Dear EllaDear Ella


Polygram Records
1997-09-30


by AMAZ君(改)




猿田彦幻視行・勒 「フーチークーチーマンの伝説」

written by overQ
November 7, 2006

★犬神博士

夢野久作の驚異的傑作「犬神博士」。


死後すっかり忘れらていた夢野久作、そのリバイバルのきっかけは、鶴見俊輔さんが中学生の時読んだ「犬神博士」を覚えていたこと。
ところが周りの誰に聞いても、この作品を読んだという人がいない。実物の本も手に入らない。
つてをたどって、ようやく中島河太郎氏が本を所蔵していることを知らされ、ここからトントン拍子に全集出版までこぎつけた。

「ドグラ・マグラ」じゃなくて、「犬神博士」。
この作品から夢野を読み始めるのが正攻法…そう思ってたんですが、検索してみると、意外と読まれてないらしい感触。なぜ。
ドグラ・マグラのほうばかりが有名になっちゃったせいみたいだけど、ドグラマグラは奇書、そうとうな難物。実際、夢野久作はよくわからないというイメージが流布する始末(;・∀・)
で、まず犬神の宣伝から書き始めてみました。
犬神博士の作者が書いた作品として「ドグラマグラ」にアプローチするのが、のぼりやすく、見晴らしの良いルートと思います☆

その「犬神博士」。
「犬神家の一族」と「目羅博士」を連想してしまいそうな題名だけど、実は探偵小説ではないのです。
犬神博士という題名から想像されるような幻想的猟奇的作品というのでもない。

似た小説が見当たらない、と鶴見氏は言います。小説じゃなくて、むしろオイレンシュピーゲルなんかを思わせる。

主人公は7歳か8歳の少年。
年齢も名前も、性別すらはっきりしない、異能のお子様。牛若丸というか、悪魔くんというか、八犬伝8人目の剣士・犬江親兵衛ちゃんというか。
どこから来たのか、どこへ行くのか、わからぬ遊行の大道芸人。
血のつながってない父と母に拾われて、父の叩くパーカッションと母の三味線に合わせて、少女のふりで踊る。
エロダンスで警察に捕まるところから、話はどんどん転回。
地元の権力者、労働争議、民権運動、右翼の大物と、日本の深部のメカニズムを戯画化し、ひっかき回していく、謎の子ども。
路上からはじまり、路上に終わる、語り。
人間というより、なにか神のようなタッチを残して去る。

少年は猿田彦の化身なんだと思う。


★遊行の大道芸人たち

猿田彦にみちびかれ、サイの神と呼ばれる巨石のまわりで、なにやら妖しげな歌舞音曲のまつりがおこなわれていたらしいことがわかってきました。

猿楽田楽。


藤原明衡が平安後期に書いた「新猿楽記」。
この書物は、貴族ではない、京のさまざまな人々の生活をいきいきと描いた貴重な記録であり、また本としてもたいへん面白い読み物になっています。
書きぶりも工夫があり、ある大家族、夫妻と子ら、その妻・夫・愛人たち、総勢28名、
そのひとりひとりに、遊女・陰陽師・医師・相撲取り・ばくち打ち・兵士・農民など、当時のさまざまな職業に割り当てられて、面白おかしくその生態を語っていくもの
東洋文庫版は現代語訳・解説が充実しており、たいへん読みやすく面白いです。
現在の書物と違って、商品として書かれた本じゃない、まず書いてる当人が何より面白がって書いたのがありありとわかる語り口。

新猿楽記、また今昔物語集や宇治拾遺物語に断片的に現れるのは、寺社で神楽のタテマエでおこなわれる、多種多様な大道芸の見世物。

エロと笑いを主題とし、歌舞音曲、コント、競馬、人形遣い、小人たち、猿回し、手品(唐術)、ジャグラー(品玉)、アクロバット、相撲、琵琶法師の物語、ブレイクダンス・ロボットダンス(無骨、有骨)。

ありとあらゆる出し物が工夫され、その面白さに人々は、「腹がよじれ、顎がはずれた」(腸を断ち、頤を解かずということなき)と言います。
京の町から貴賎を問わず、あらゆる人々が見物に訪れた。美しい少年踊り子に熱狂する僧たちの姿も書き留められています。 *1

出し物が終わると、熱狂した人々は、ひいきの猿楽師にこぞってプレゼントを投げ、投げるものがない人々は、服を脱いで投げる始末。

道俗男女、或貴賎上下、被物・禄物、雨の如く雲の如し。

帰り際には裸になり、その上雨でも降ったりしたら、泥の堀川を四つんばいで駆け回り、それを野次馬たちがはやしたて、とんでもないバカ騒ぎ状態になったと言います。


★ホンキイトンクウーマン伝説

貴族や僧侶以外の人々。
書き言葉の外部に存在していたため、あまり記録がなく、歴史に埋もれてしまいがち。記録ではなく記憶に残る人々。
それをあえて記述した点で、新猿楽記は貴重なもの。
いろんなことが、その記述から透けて見え、推測できます。

・陽石(おちんちんをかたどった石)のまわりで大道芸がおこなわれること。
・有名な芸人が何人もいたこと。京の各所で連日おこなわれていたこと。
・見世物としての集客力は絶大であったこと。
・寺社はこの見世物の盛況と連動して富を蓄え発展すること。
・聖天歓喜天・弁財天など性の匂いのする神がまつられているのは、この見世物とかかわってのこと。


猥雑と熱狂。カーニバル。

下品と荒々しさの中に、じつは繊細とケレンがあり、アート(芸能)の本質である、「力の流れ」の中でいかに巧みに振舞うか、瞬間瞬間のひらめきにいろどられていた。
超高速で回転するがゆえ、静止して見えるコマのように。

新猿楽記作者の藤原明衡はそれが読め取れたため、どの猿楽師がどんな特徴を持つか品定めをしています。
でも明衡はたぶん例外的な人で、貴族の多くは、自分で熱狂しておきながら、顰蹙の目で見ていたでしょう(笑)

新猿楽記で最初に語られるのは、老妻。齢六十。

夫はまだ40過ぎで「好色甚だ盛ん」。老妻が財産家の女だから結婚したものの、年が離れすぎてることに、今さら後悔している。妻の様子というと、

白髪たること朝の霜の如し。
面の皺に向かえば、畳々とたためること暮の波の如し。
上下の歯は欠け落ちて、飼猿の頬の如し。
左右の乳は下がり垂れて、夏の牛のふぐり(=キンタマ袋)に似たり。
化粧を致すといえど、敢えて愛する人無し。
あたかも極寒の月夜の如し。
媚び睦ぶること為すといえども、さらに厭うもの多し。

というすさまじい描写を畳み掛けます(´ヘ`;)

しかし、老妻は、あきらめない。

なお盛熱の陽炎の如し。吾が身の老衰を知らずして、常に夫の心のなおざりなることを恨む。

彼女はブードゥー呪術に血迷います。
狐坂の男祭に出かけ、アワビをおまんこに見立てて、叩きまわり舞い狂う。
稲荷山・阿小町の愛法の祈祷では、かつお節をチンチンに見立て、くんくん匂って喜び騒ぐ。
そこらじゅうの祭礼で乱痴気を演じ、その様子は毒蛇がうごめくよう。
恋慕の涙は、面の上の粉を洗い、愁嘆の炎は、肝の中の朱を焦がす。

明衡は大好きな猿楽田楽のノリのままに、調子よく文章をつづっていきます。
四六駢儷体の漢文で、罵倒と嘲笑が畳み掛けられていく。
これが最後のほうまで来ると、むしろ肯定と礼讃の響きを帯びてくる不思議

神楽と並行して、顰蹙を買いながらおこなわれた猿楽田楽。
神に捧げるゴスペルのそばで、眉をしかめられながら奏でられたブルース。
なぜだか、このふたつの歌舞音曲は、その卑しさとその光輝が、よく似ているようなんです。


★百太夫の伝説

遊行の大道芸人。
住処を持たず、路上を家、歌舞音曲を友として、チマタを遊行するものたち。
名も持たず、年齢も性も超越して、どこからかやって来て、どこかへと去っていく、世界の追放者。宇宙の孤児(outcast of the universe)。

犬神博士は彼らのなれの果て
相撲、競馬、能狂言、歌舞伎、あるいはお祭りの夜店、寅さんなんかも、この流れから出てきたもの。 *2
サルタヒコの子ら。

「犬神博士」の時代設定は明治の終わりくらいかと思われ、戦前くらいまではまだ旅の大道芸人は存在していた。
夢野久作は福岡の人。父は右翼の大物。謡曲教授を職としていたこともあり、禅僧として托鉢で大和路を放浪したことも。
処女作は童話「白髪小僧」。藍丸国王がこの世界で最初にできた石神の呪いを受け、白髪小僧として、ニセの王の君臨する世界を遊行する。犬神博士とかよう設定。
父の君臨する国で、遊行の中から、べつな人の道を探ろうとした久作。「犬神博士」は、久作が父に向けて投げつけた火炎瓶のような作品になっている。


新猿楽記で、明衡は、百太丸という猿楽師が、「高く神妙の思いをふるって」すばらしいと讃えています。
百太丸、百太夫、あるいは百神は、男根の隠語
遊女の好むもの 男の愛祈る百太夫(「梁塵秘抄」)

もともと百太丸がオチンチンのことで、それを名前にしたのか。百太丸がセックスシンボルとして伝説化して、男根を意味するようになったのか。
ともあれ百太丸といえば、セックスマシーンとしてつとに有名であったにちがいない。 *3


★フーチークーチーマン伝説

Gypsy woman told my mother
'fore I was born
You got a boy-child coming
gonna be a son of a gun
Gonna make pretty womens jump and shout
And then the world wanna know
what this all about

俺が生まれる前、ジブシーの占い女が
母ちゃんに告げた。
もうすぐ生まれてくるこの子は
すごい男の子になるよ。
女の子が跳ね回り、叫び狂って喜ぶような
大立者(son of a gun)さ。
世界がこれはいったいどうしたことかと
たまげてしまうくらいのね。


ブルースの定番、マディ・ウォーターズの「フーチークーチーマン Hoochie Coochie Man」
YouTube - Muddy Waters -Hoochie Coochie Man
フーチー・クーチーは、オチンコ・オマンコというようなブードゥーの隠語らしいです。黒人のデカマラ、Black Big Dickの伝説を歌う歌。

まさに百太丸=犬神博士伝説。
特別な子ども、sun of a gun、悪魔とも神とも知れない、とてつもない異能児が生まれてくる。
彼は世界を変えてしまう。

I got the black cat bone
and I got a mojo tooth
I got the John the Conquerer Root
gonna mess with you

黒猫の骨も持ってる。
呪いの歯も持ってる。
征服男根王ジョンも持ってるさ。
キミを夢中にさせるもの。

ブラック・キャット・ボーン。ブードゥーの呪物。
黒猫がいますな、これをお鍋に入れますな、茹でますな、猫は苦しみもだえますな、世界を呪って死にますな、
その骨に祈ると、どんな願いもかなう
…という、ブードゥーの動物イジメな恐ろしい呪物のこと。

不思議な一致なのですが、犬神博士の最初で、犬神の説明がある。
犬を地面に頭だけ出して埋めますな、食べ物を目の前において、ハァハァさせますな、しまいに犬は物欲しさに狂ってきますな、その狂気が最高に達したところで首をちょん切る、
この頭に祈ると、どんな願いもかなう
…という、民間信仰の動物イジメな恐ろしい呪物のこと。

みなさんを夢中=メチャクチャに(mess)させるもの、と言う。

ブルースと、日本の遊行の芸能民には、なぜか共通性がある。
もっと驚くべき共通性がある。


★パパ・レグバの伝説


ブルースの真髄、ロバート・ジョンスン。
彼はクロスロードで悪魔に魂を売って、一夜にしてギターの凄腕を手に入れた、という伝説を歌った。
この悪魔は、クロスロード=四辻に出現する点で、チマタの神・フナト(分岐)の神であるサルタヒコに似ている…とは、前にも書きました。

クロスロードの悪魔とは、ロアとも呼ばれ、ブードゥーのもっとも代表的な神レグバ Pa;a Legbaのこと。
扉や街道、運命の支配者。十字路に棲む、気まぐれなトリックスター。追い詰められた者に、逃げ場を指し示す神。
儀式で最初に呼ばれる神であり、歌舞音曲の神。五条道祖神と同じく、能の翁のような老人の姿をしている。
まさに、サルタヒコそのものなんです。 *4

人類が石器時代から親しんだ神。身近でもあり卑俗でもある神。
キリストやホトケさん・アマテラス、名前のある大きな、かしこまったカミサマがやって来ると、そっと端にどけられる神
名もなき神であり、さまざまに呼ばれ、そうであるがゆえに、不死である神。
今も日本中の路傍にころがる石神。Like A Rolling Stone.

京都の町の小さなものに目を凝らし、ひそかな声に耳を澄ますうち、そんな隅っこの神様の輝きに気づいた。そのときめきと吐息、さざめくささやきが聴こえるところまで来ました。


それにしても(=さるにても、猿似ても)、ブルースとの一致は不思議なくらい。
ブードゥー→ブルース→ロック、という流れと、
サルタヒコ→猿楽(歌垣)→能(和歌)、という流れは、とてもよく似てる。

これは神秘的なことというより、大地に叩きつけられるように生きる人々のうめきが、歌になるということなんだと思う。
フォークナーがノーベル賞演説で、immortable(不死の)、あるいは unexhaustible voice(尽きることなき声)と呼んだもの。
もともとは名もなき、文字を知らない人々のもの。それが書き留められ記録され洗練されて芸術になる。それにつれてパワーと魔法は失われていきます。

マディ・ウォーターズは、デルタブルースを都市(シカゴ)に持ち込みエレクトリックギターで演奏して、成功した大立者。
しかし演奏の合間にこんなことを言っていました。

男がブルースの気持ちになるのは、食べものがない時と恋した時。今でも、綿花畑で歌ってた時と同じ気持ちで歌っている。


[参考サイト]

夢野久作の世界

ポップカルチャーに潜むヴードゥーの影

ブードゥー教 - Wikipedia

Papa Legba - Wikipedia, the free encyclopedia


*1 : 宇治拾遺には、天皇の御前に、評判の猿楽師をまねく話が出てきます。ふぐり(キンタマ袋)を見せる芸が得意なんですが(;・∀・)、役人からそれをやるなと釘を刺されたのに、本番ではフグリ芸をやって大ウケをとり、役人がキーッとなるという笑い話。
*2 : 出雲の阿国、その「出雲」は出雲路幸神社と関わりがある。
*3 : 百万遍西の狭い路地に見つけた百丸神社
京都大事典で調べても出てこない謎の存在ですが、たぶん(竹下景子に1500点くらいの確率でw)、百太丸セックスシンボル伝説に関係したものと思われます。数メートル南にある「中地地蔵」という、これも謎の存在があり、二者の関係がわかれば、解明に近づけるかもしれません。中地って何なんだろ?
*4 : この二社の近似性は、はじめて気づかれたものだろうか? よく留意すべきことかもしれません。能の翁とレグバの近似性は、アートの深遠に達していると思います。老賢者。

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