YouTubeで神さまを捜す

written by overQ

やおよろず

神さまとは何か。
この問いに対して、宗教的に神学的に答えるんじゃなくて、まるでリンゴとは何かと訊かれて「ほらこれ」とリンゴを差し出すように答えることが…じつは、できます。
つまり、これが神さま。That’s it. 人類があまねく、神さまと呼んでいるもの。


身だしなみにかまわなくなった、ドーモ君…ではなく、スイス、トイフェンの祭り。たぶん「醜いクロイセ」と呼ばれる荒御魂。


オーストリア。ザルツブルク? Krampusとか、Perchtaと呼ばれるナマハゲな存在。聖ニコラス(サンタクロース)と一緒にやって来て、悪い子に罰を与える。


スイス、ルツェルンのファスナハト(謝肉祭)。こんなカブリモノ状態なのに、演奏のレベルが高い! というのも、じつは、かのルツェルン音楽祭の行われる場所。音楽祭とファスナハトは、たぶんつながっています。


もはやどこの国かさっぱりわかりますまい。たぶん、ブルガリア。クッケリКукериという、春を呼ぶ祭。


スイスのアペンツェル州ウルナッシュ。「自然のクロイセ」Silvesterklausと呼ばれるもの。

上に上げたのは、ヨーロッパのお祭りで、来訪する神さまたち。
冬至や新年、春のはじめなど、季節の変わり目にやって来て、太陽の力を復活させ、実りをもたらし、冬や疫病を調伏する…。
日本で言えば、歳神や蘇民将来の神さまがそう。
農村や狩猟民の年中行事として、世界中に見られる、きわめて普遍的で根強い風習です。

禍福をともにもたらす両義的な存在で、ふたつの顔と千の名前を持ちますが、根っこのところでは一なるもの…というのが奥義。
「文字」が登場すると、もっと安定した、ちゃんとした名前のある神に駆逐され、この手の神さまたちは鬼や妖怪・妖精の類いになって、草木の間に隠れ棲みます。
しかし、けっして滅びることがないのです。

ヨーロッパの土人たち

最初はアジアやアフリカを中心に動画を並べようと思ってたんですが。
調べてるうち気づいたのは、この手のものが今、いちばんパワフルなのはヨーロッパであること。アップされてる動画も大量です。

日本なんかは、特権的に民俗が残っているかと思っていたのだけれど、それは錯覚でした。ヨーロッパこそ、未開の土人が支配する闇の大陸だったのです。
トロブリアンド島にもアマゾンにもドゴンの村にも行く必要はなく、ヨーロッパが闇の奥。

キリスト教を布教しても、近代科学で教化しても、勝手な解釈でブードゥー化し、土俗の信仰と習合させてしまう、無知蒙昧の野蛮人ども(笑)。
八百万の神々が生き生きとしています。それに、この懐かしさは何だろう。なんか猛烈に悔しいです。
地域社会としての農村が、機能する実体としてちゃんと生き残っている。モノとヒトとモノノケが元気いっぱいに行き来しています。
マネーによってではなく、土人度によって測られる民度がここにあり。
とにかく、みなさん、じつに楽しそうです。

上の二つは、「美しいクロイセ」。
クロイセには、「美しい」「自然の」「醜い」の三種がある、と本には書いてありました。
「美しいクロイセ」には男女の区別があるらしいのですが、「女クロイセ」も、中の人は男性。かつ、酔っ払い(笑)。
でも、そもそも酒はこのような祭礼の時にのみ用いる霊薬で、仮面や着ぐるみと同様に、人が神になるための方法のひとつでした。


オーストリア、グラーツ。サンタクロースと一緒にやって来る鬼、Krampus。たぶんホラー映画とは相互に影響しあっていて、仮面は非常に洗練されています。怖かっこいい。


フランス、ビトリ=シェル=セーヌ。Turbul社という、パレードをおこなう会社の催し物…のような気がする。今回の記事は調べるのにかなり苦労しています。

壁画の宇宙人

ヨーロッパのペトログリフ(洞窟や大岩の壁画)には、「宇宙人」がときどき描かれています
角やアンテナが生えている、ヒトとも牛鹿ともクラゲともつかぬもの。
しかし、宇宙人だのUFOだのと奇説を立てる必要はなかった。
上の動画のように、まさに同じものが今もそのまま残っています。石器時代の風習が、今も生きているヨーロッパ(この表現はアジア・アフリカになされるものだったはずなのだが)。

これはブルガリアのクッケリという祭。クックという禍福あざなえる神の祭り。
クックはさまざまな姿を持つらしく、下のように、おしゃれなKKK(クークラックスクラン=クック??)みたいなのもあれば、ひょっこりひょうたん島みたいなのもあって、謎は深まるばかり。


イタリア、タラントの聖週間の儀式の一場面。クールです。デュアルになった門の神。そして帽子。烏帽子から死者の三角頭巾まで、神のよりつくしるしですが、正統な宗教儀式に深く取り込まれていても、なおこの土俗のイメージシステムがひそかに復元している点。


スロベニアのKurentovanje。読めん。


ハンガリーのBusójárás。ぜんぜん読めん。


オーストリア、ピーゼンドルフ。聖ニコラウスの集い。
サンクト・ニコラウスは、サンタクロースのこと。角の生えた神さまは、トナカイさんです。というか、鬼。トナカイさんの正体は、鬼。ワンピースのチョッパーみたいに、いろいろ変化(へんげ)するのです。


ドイツ、エルツァッハ(Elzach)のファスナハト Fastnacht


ドイツ、ロットヴァイルの、Narrensprung(阿呆祭)


スロベニア、プトゥイのKurent


クロアチアのZvončari


ドイツ、バイントのFasnacht。


上の二つは、ルツェルンのファスナハト。Guggenmusig Pilatusgeister。どんだけ手間・暇・金がかかってるねん!

神の訪れ

そもそもは、世界中のお祭り動画を並べて、それらがいかに似ているかを示そうと思っていたのです。
しかし、調べてるうち、あまりにもヨーロッパ勢が元気いっぱいだったので、そっちが中心になってしまいましたが。

アジアやアフリカだと、観光化されてることも多く、文化財としてホールで公演したり、アートになってたり。外からきたお客さん向けになっていて、生きた土台を失っていることも少なくない。
たぶん地域地域では生き生きと行われてるものもあるはずなんですが、そういうものはYouTubeにはまだまだアップされにくいと思われます。


長崎くんち


盛岡山岸獅子踊

初めに考えていたことのひとつは「しし踊り」で、これとサンタのトナカイさんが同じであることを示せないだろうか、というプラン。
個人的に興味があったのは、播磨に伝わる「いささ王」という巨鹿の伝承。これの源を手探りしたいと思っていた。

春に来る鬼と同系の「神さま」としての、しし神。
海の彼方や根の国からではなく、天からでもなくて、森の奥や山から降りて来る「夏の王」「夏の女王」。
角が生えてるのが特徴ですが、もうひとつは「鈴」。鈴を鳴らしてやって来る。トナカイとしし神。しゃんしゃんしゃん。


ペルー。


ブータン。


パプア。


アフリカ、ドゴン。

ゆるキャラとコスプレ。このことも気になっていた。
来訪する異形の神の、現代日本のバージョン。
人類にとって、この風習が、途轍もなく根強い本能であること。
季節や自然の影響をほとんど受けてない場所でも、なお同じイメージシステムがやすやすと再現してしまうことは、大きな謎。

ゆるキャラ・コスプレよりひとつ前には、アニメや特撮で怪獣や宇宙人が「侵略」していた。あれがまさに、来訪する神。春来る鬼
それを守る正義のヒーローも、敵と同じように仮面の異人で、「鬼=鬼退治」の原則がしっかり踏襲されている。
追い払うものと追い払われるもの、福を持ち寄るものと禍をもたらすものは、本当は同一…という土俗の神さまの原則。
造形的にすごかったのは、ウルトラセブンの宇宙人たちと、エヴァンゲリオンの使徒…でしょうか。色使いやデフォルメが「神さま」的だった。
祭りの神さまの伝統を踏襲したわけでもないのに、仮面と着ぐるみでまったく同じことを再現した、怪獣や宇宙人たち。本能として、知っているとでもいうしかなさそう。

鬼=鬼退治の原則。
ウルトラセブンは宇宙人だし、仮面ライダーはショッカーによる改造人間。エヴァンゲリオンは使徒と同素材であり、バットマンはジョーカーから「お前と俺は同じ」と囁かれる。
そもそも、神=鬼は仮面をつけた地元民であり、つまり来訪するのは自分自身。何を追い払い、何を呼び寄せているのか。
われわれはこのモデルから一歩たりとも外に出たことはない。
ひこにゃんやせんとくんには、きっと「もうひとつの顔」がある。

サンタさんの旅の仲間

サンタさん(聖ニコラス)は大黒様やオオクニヌシ命や風神雷神と似て、大きな袋に禍福をのせて、ふらりとやって来る。
袋の中には、豊作と疫病、打出の小槌と異常気象が入っている。

サンタさんにはいっしょに旅するお友だちがいて、よく知られているのは、赤鼻のトナカイ。
その正体は、石器時代の壁画にも見られる「角のある異人」「アンテナ付きヘルメットをかぶる宇宙人」。二足歩行可能な魔族である。
森の奥で蘇る冬の王であり、逆に来訪する春のアラタマでもあり、オーディンとも呼ばれるし、ワンピースではチョッパーだし、私の地元・播磨では、イササ王の名で知られる巨鹿の王。

しかし、実物はそんな言葉で語られるものよりか、はるか彼方にパワフルです。
こんな恐ろしいものが、サンタと一緒に毎年毎年訪れていたとは。
これに追いかけられた日には、スープのお皿にニンジンを残すような悪い子も、おしっこ漏らしながら、「もうしません」と誓うこと、まちがいなし。
鞭を持って大地を調伏しながら悪い子を追い回すらしく、そのうえ、中の人は泥酔しており理性は失われているので、こんなものどもに追いかけられたり、お母さんがこれとベッドをともにしているところを目撃してしまったりしたら、どんだけ怖いか。ローズマリーの赤ちゃんか。

以下に示す、サンタのお供は、本には「シャープ」という名だと書いてありましたが、Buttnmandlという読めない名前であるようにも思え、結局、ラブクラフトが「名づけられざるもの」と呼んだ、あれのことではなかったのかと。


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