奇書の旅#001 「福来友吉博士著・透視と念写」
毎度まがまがしいお話を…というわけで、奇書を旅するシリーズを始めてみるのです。
第一回の今回は、千里眼事件で有名な福来友吉博士の「透視と念写」。
大ヒットホラー「リング」のモデルとなった、明治末から大正初めの、透視・念写の実験の記録です。
□千里眼事件 – Wikipedia
この本、なんと福来博士じきじきの署名入り。
一緒に実験をした京大の今村博士に贈呈されたもののようです。
福来博士も手にした、本物。霊力を感じる。。
今は同志社大図書館にあり、以前は、下村孝太郎氏の蔵書だったらしい。(この本が旅したコネクションは興味深い。)
念写。
オウム事件以前はテレビでよくやってました。ポラロイドに念を送る超能力少年とか。
その元祖が、福来博士の一連の実験。
密封された写真乾板に念を送って、文字や風景を映し出す。デジカメだと難しそう。
ラジウムやX線が話題になっていた時代。
見えない何かが物質に影響する…そのことが異様に人々の胸を踊らせていた。
もしかすると、人間にだって目に見えるのとはちがう仕方で物を捉えたり、
放射線のようなものを発してフィルムを感光させたりできるんじゃないか。
「科学」の名において人々はそんな空想にふけっていた。
科学上の新発見は、意外と人間の妄想を刺激するもの。
「こんなことがありえてしまうのなら、あんなことも」とSF的連想力が活性化する。
当時の新聞には、連日のように、日本中の「千里眼」たちが報告されていたそうです。
「透視の事実たることは最早疑ふべき余地の無いことである。」
そう断言する福来友吉は当時、東京帝大の助教授で、変態心理学を専攻する文学博士。
人間の心の深層、意識の外側にあるようなものに興味を持っていた。
理科系じゃないんです。懐疑的に実験を行っているんじゃない。
学業のどこかの段階で、ヨーロッパの神秘思潮に、触れていたはず。
日本では「こっくりさん」などは民間のブームだけど、
ヨーロッパの降霊術は知識人や権力階級の社交的な場でたびたびブームに。
フリーメーソンのような神秘思想を背景にした秘密結社の伝統もある。
もともと科学とオカルト的なものとは、手を携えて進んできた。
世界のうちに隠された神意を見出す…という信仰。
ヨーロッパ文学を専攻して、ブレイクとかベーメの研究をしていれば、
「事件」もなく、大きな業績を残せたかなあ。。
振り返って言うのはやさしいけれど、自分が何をやりたいか、何に向いているのか、
何をやっているのかさえ、人生の途上ではよくわからないから。
死なないと、人は人の形にならない。
この本で、三番目の「能力者」高橋貞子のケースでは、
彼女自身の意識を越えた「霊格」なるものが登場。
英国の詩人イエイツが、催眠状態の妻の自動書記に、
人智を越えた世界からのメッセージを読み取ったのとよく似ています。
本書の表紙の赤色及び扇の模様は高橋夫人の霊格の指図に基きて工夫されたものである。
高橋夫人は「能力者」のひとり、名前は貞子さん。
「リング」の貞子は、ここから採ってるようです。井戸には落とされてませんが。たぶん。
ふっくらかわいらしい女性。髪型がAKIRAに出てくるミヤコさま風。
そういえば、井戸の方の貞子さんは、ダビング10を喜んでるんでしょうかねえ。
DVDでは苦労したにちがいない。今度はブルーレイだし。念写もデジカメだと難しい。デジタルに弱い呪い。。
以下の御影は、高橋貞子さん、御船千鶴子さん(服毒自殺、24歳)、長尾郁子さん(実験後まもなくインフルエンザで死亡)。
この本を出したあと、福来博士は、追放のような形で東大を休職。
どういう人縁があったのか、その後、高野山大学のほうで、研究を進めていく。
昭和になってからは、ヨーロッパのスピリチュアリストたちと交流、「透視と念写」の英訳も(Claivoyance and Thoughtgraphy 1928)。
晩年は土井晩翠や志賀潔と知己を得、心霊研究の会を立ち上げたり。この頃は少し幸せだっただろうか。
実験という方法ではアンチノミーに陥るだけ。それは信のこと…生きていくことのうちに見出さなければならない。
昭和27年没。83歳の長寿でした。不思議な人生。








岐阜県高山市の城山公園の登り口に確か福来博士の記念館があったような記憶がありますが、今も有るかどうか?高山市の方に問い合わせて見れば判るとおもいます。
検索してみると、こちらに紹介がありました。
http://underzero.net/html/tz/tz_298_1.htm
手作りな感じがただよう、ひなびた記念館のようですね。入場料200円。
福来博士は岐阜のご出身なんですね。
岐阜県図書館には、こんな展示も。
http://www.library.pref.gifu.jp/d_lib/predec08.htm