名曲をたずねて #002 「People Get Ready」
バラク・オバマは、鉄道でワシントンにやって来る。
リンカーンの1861年の就任式にならったもの。
でも、ここで思い出す…カーティス・メイフィールド(インプレッションズ)の名曲「People Get Ready」。
People get ready
there’s a train comin’
You don’t need no baggage
you just get on board人々は待っている
列車がやって来る
荷物はいらない
ただ乗り込むだけ
ワシントン大行進に深く感銘を受け、カーティス・メイフィールドが作った曲。
マーチン・ルーサー・キングが、あの「I Have A Dream」演説をおこなった、「ワシントン大行進 March on Washington」。
March on Washington for Jobs and Freedom。
20万人の人々がワシントン広場の塔のもとに行進した、アメリカの…というより人類にとっての歴史的一瞬。
行進のテーマは、「雇用、正義、平和 (jobs, justice, and peace)」。
オバマが何を「今」に重ねようとしているか。
歴史は過去ではない。今を生きているpeopleのこと。
People get ready
there’s a train comin’
You don’t need no baggage
you just get on board
列車の到来が歌われる。
カーティスの親の世代が、大恐慌の時代に経験した「移住」
…ホーボーと呼ばれた失業者たち、貨物列車に飛び乗って、街から街へ無賃乗車した人々の群れ。
列車は、移民の国アメリカそのものである。
いや、たぶん太古から人類は、「荷物も持たず、列車にただ飛び乗る」ことによって、この地上に広まり、ひとつひとつの未来を作ってきたんだから。未来という名のからっぽの列車に乗り込んで。
扉を開く「鍵」は、信じること(faith)。
何を信じるのか…それはもちろんDream。
あるいはlove、あるいはhope。もしそれを自分で生きなければ、もっとも空虚な言葉。
未来とは中身のうつろなものを、まず信じることから始まる。
Faith is the key
Open the doors and board them
There’s hope for all
among those loved the most信じることが鍵。
扉を開き、乗り込むための。
希望はつねに互いを
慈しむもののうちにある。
列車がやって来る。
そこには「答え」が乗っているわけではない。
希望と楽観より、むしろ現実と悲観という重い未来が詰め込まれているだろう。
もうずっと人類が背負ってきた、長く重い未来。
しかし、オバマは「希望のもつ、無謀なほどの大胆さ」を信じる。
The audacity of hope.
That was the best of the American spirit, I thought—having the audacity to believe despite all the evidence to the contrary…希望は大胆不敵。
それがアメリカの魂の最良の部分、と私は考えた…こんなにたくさんの「そうではない証拠」があるのに、それにもかかわらず未来を信じるということ。- Barack Obama “The Audacity of Hope”
ディーゼルの響きとともに、もうすぐ列車がやって来る。
…People get ready?
All you need is faith
to hear the diesels hummin’
Don’t need no ticket,
you just thank the Lord