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30
Aug
2008

祇園祭の星の王子さま

王子さまの魅力に感染…したい?

王子辞典 Prince Dictionary


タイムマシンラボ
¥ 1,554 / 太田出版
( 2007-02-01 )
通常24時間以内に発送

いづれの王子さまから始まったのだったか
…ハンカチ王子とか、「王子さま」ブーム。
テレビ映えのする美形男子には、
この呼び名を与える風習がしばらくつづいてます。

しかしながら、日本で伝統的に「王子」と呼ばれるものは、
じつは全然ちがうものでした。
いわゆる「疫病神」
…比喩ではなく、文字通り、
伝染病を運んでくる目に見えない鬼の魂魄。
それを「王子」と呼んで、お祭することが多かった。
コレラとか、鳥インフルエンザとか、O157とか、
プリオンとか、メタミドホスとか、
そういうのが、ほんとの王子さまです(-_-;)

日本各地に、「王子」の名を持つ地名が名残りをとどめる。
東京の八王子、神戸の王子動物園。
京都だと、岡崎の王子町、
下京の悪王子・元悪王子、左京の若王子、北区に福王子など。*1

みなさんのお近くにも、きっと「王子様」がおられるはず。
疫病がはやると、お祭りをして、荒神をしずめた、その痕跡。
「若宮」とか「今宮」と呼ばれることも。
「将軍」っていうのも、じつはこの系統だし、
ほんとに全国津々浦々、たくさんいらっしゃる王子さま。

八坂の悪王子神社2

父上は牛頭天王、母堂は竜宮のお姫さま

さて、王子というからには、父なる王がおられるはず。
それが、牛頭天王(ごずてんのう)。古くは武塔(ムトー)天王と呼ばれた。
祇園祭の祭神。祇園(ギオン=ギュウオウ・牛王)さん。

母君は、婆梨采女(はりさいにょ)。
前回の井戸の女神さまの記事で書いたように、
少将井とも言います。
大将軍=天王に対して、少将=王子。
井戸は、天王が王子となって再生する、母胎。水の女神。
八幡や若王子やマリア様のような、聖母子信仰の気配も合わせ持つ。

蘇民将来の伝説。
お話のあらましは、以下のとおり(この話ばかり書いている)。

牛頭天王は旅の途上、みすぼらしい乞食のなりで、
蘇民・巨旦の「将来兄弟」に一夜の宿を乞う。
兄で長者の巨旦は拒み、貧乏な弟の蘇民は粟飯でもてなした。

蘇民将来の家を発ったあと、牛頭天王は、竜宮城へ行きます。
そこの乙姫さんが、婆梨采女。
ふたりは結ばれ、八人の王子様が生まれましたとさ。
そして、天王は八王子を引き連れて帰還し、
巨旦の一族を疫病で滅ぼし、蘇民の子孫を繁栄させる。

だいたい、そんな長者話になっています。
「祇園牛頭天王御縁起」「ほき内伝」をはじめ、
各所に残る「祭文」に、この物語の
さまざまなヴァリエーションがカタられる。
どんどん尾ひれがついて、ものすごいことになっています。

「ほき内伝」というのは、陰陽道の秘儀書。
陰陽は星を読み暦を作り、方角と日々の良し悪しを言い当てる術。
南海を旅する天王は太陽であり、
王子たちは「疫病神」であるとともに、
それぞれ星宿の動きをあらわし、
占星術のアイテムのような複雑な占いの体系を編み出す。
八王子は、陰陽道の星の王子さまと言ってもいい。

天王・王子の凱旋は、「将軍」とも言われ、
各地に残る将軍神社・勝軍地蔵がその名残。
京都に平安京の四隅に将軍社があって、疫病にそなえ、
また将軍塚、将軍八神社や、十二将軍というのもある。*2

牛頭天王と蘇民将来伝説――消された異神たち


川村 湊
¥ 2,940 / 作品社
( 2007-08-28 )
通常2~4週間以内に発送

祇園祭で結ばれて

じつは、祇園祭の巡行ルートは、
蘇民将来と牛頭天王の物語を再現するもの。
川村湊さんが「牛頭天王と蘇民将来伝説」という本で指摘しています。
そこを足がかりに、妄想の大風呂敷を広げてみましょう。
この本にないことをなるべく書こうとしてるのが、
このところの記事なんです。

今はだいぶ変化してしまったけど、
そもそもは神泉苑に行って戻ってくるのが基本らしい。
神仙苑のお池が、竜宮城に見立てられる。
あははの辻あたりが逢瀬の場。

むかし、岩神さまがまつられていた地所。
今は中山(岩上)神社となって、肝心の巨石のほうは、
西陣に運ばれているのですが、
この岩神さまが女神さまだったというのが、私の新説。
そして、神輿はそこをターニング・ポイントに、
神の泉で新生した王子を乗せて、
東(日の出)へ戻ってくる。

出発点も、ほんとは知恩院前の瓜生石なのかもしれません。
あそこに、生った瓜(キュウリ)に、
牛頭天王は最初に降臨したと言われています。
瓜の中の神さま。

あ、ちょっと先走り汁が出てしもた…(゚ー゚;

「諸国図会年中行事大成」に基づいて、
むかしの巡行ルートのだいたいのところを川村氏は地図にしています。
大雑把に描いてみると。


大きな地図で見る

八坂神社から出発、東洞院でふたてに分かれる。
北上するオレンジ色のほうが少将井=ハリ采女(東御座…西御座?)で、
青色が牛頭天王(中御座)・八王子(西御座)。
いったん別れた後、神仙苑でまた結ばれて、
そこで王子が宿る。王子は、再生した父王でもある。

おおむね、そんなストーリーに見えます。
婆梨釆女が、神仙苑の女神から、
烏丸の井戸の女神・少将井へと変遷していく。
岩神さまが使えなくなったせいかと思う。

現在は、神幸祭・祇園祭・還幸祭と、
「行って、おまつりして、戻る」の三つに分けてあります。
下御霊とか今宮の祭も、そういうスタイルに整備されていますが、
主意は、神の再生の儀式ということ。

さて、ここまでは序章。
これから、祭りの原型を、平安京以前にまでさかのぼって、
探してみようというのが、考えている方向です。
最後の結論を先取りしておけば、
「韓神・園神」という秦川勝の祀った神が、
牛頭天王・王子と婆梨采女だということ。
そして、それは鵺となった。。

次は、「瓜生石」から出発してみます。


¶ Footnotes:
  1. 若王子は少し系統がちがって、
    熊野権現・十二所権現の流れにあって、
    仏教と習合しながら、整備され、
    天照大神、その子ニニギ尊をお奉りします。
    でも、大元の由来は、同じかもしれない。
    八幡さんも、じつは母子神として、根っこがつながる。
    御霊として祀られるのも、八柱。
    また福王子は、桓武帝の孫で、宇多天皇の母・班子皇后を祀り、
    平安時代でも母子神としての王子信仰が生きていた。
    天皇が天王であった平安京のはじめ。
    斑子女王の「斑」は、班女に通じること。 []
  2. 蘇民将来伝説では、前半の巨旦・蘇民兄弟に宿をこう話と、
    後半の竜宮城で天王と乙姫が結ばれ王子が生まれる話の、
    ふたつの別々な話が合成されています。
    後半のほうが、より本質的に思える。
    天王=太陽は、海(山)にいったん落ちて、
    再生して戻ってくる…というプロトタイプから発達した物語。
    一方、前半のみすぼらしい姿で旅する神のイメージは、
    別な意味で普遍性があり、路上の神の伝承は世界的に見出せる。
    「巨旦=古い天王、蘇民=新生した王子」であり、
    疫神となった一方を、荒魂(新魂)となった他方が倒す。
    そう再解釈されているでは。 []

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