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2
Sep
2008

その神の名は(園神韓神と蘇民将来、そして鵺)

その神をみやこに

園神韓神(そのかみ、からかみ)。

桓武帝が平安遷都のとき。
園神韓神という神さまがすでに祀られていて、
建都のため、これを取り除けようとしたところ、神託があり、
「長くこの地にあり、帝都を護らん」と。
こうして、韓神園神は、
大内裏に当初から祀られた、唯一の社となった。

延喜式によれば、

「宮内省坐神三坐 園神一坐 韓神社二坐。
春二月冬十一月丑日 祭之参議一人就祭所行事」

園神が一座で、韓神が二座。
合計、三座が宮内省にまつられた。

園神=婆梨釆女
韓神=牛頭天王と王子

なんだと思うのです。
この名前で呼ばれていたかどうかは、わからないけれど、
同じ型の信仰が、ここにあった、と。*1

ちかきだに 聞かぬみそぎを なにかその
        から神
までは 遠く祈らむ

ー少将内侍(「後拾遺和歌集」)

少将内侍は、少将(=牛頭天王とその王子)につかえる巫女。「うねめ」としての生き神、ハリ采女。
同じく、後拾遺和歌集の歌人である「少将井の尼」も、そう。

渡来人の神さま

平安京以前の神さま。
養老年間(717-24)に藤原氏の創建とする文献があるものの(「古事談」)、
むしろ山城国(京都)を開発した渡来人たち、秦グループの神であったはず。
韓神という名は、渡来系の神をあらわすのだから。
藤原氏はそれを祀る勢力を牛耳るように見える。
大内裏は、もとは秦川勝の邸があった場所だとも言われており(「拾芥抄」)、
あとで述べる、鵺神社との関係からも、
川勝(を代表とする渡来系の人々)が山城の地の中心部に、
お祀りしていた神さま。

京ができて、大内裏にまします神は天皇。
それでもこの古い韓神園神には、残される。
山城国の先住者にとってはあまりに重要な神で、
平安京の建設にあたっても、無視できない力だった。
天皇を天王・天神・天使として、受け入れるけれど、
この古い社だけは残しておいてほしい。
その要求は呑まねばならないくらいの、
平安遷都における帝と民衆の力関係を憶測する。*2

その神は、蘇の神

園神は、延喜式では「園ノ神」と送り仮名。
これは、「ソノの神」ではなくて、
ソの神」と読むんじゃないでしょうか。
つまり、「蘇の神」。蘇民将来の神さま。

韓神は、「韓神ノ社」と表記。
この韓神は古事記にも登場します。
大年神を父、イヌヒメを母として、生まれる子供。

その大年(おおとし)神、神活須毘(かむいくすび)神の女、伊怒比賣(いぬひめ)を娶(めと)して生める子は、
大國御魂(おおくにみたま)神、次に韓神。次に曾富理(そほり)神。次に白日(しらひ)神。次に聖(ひじり)神。

−「古事記」

大國御魂神に続いて、二番手に登場する韓神。
その次に、「曾富理(ソホリ)神」の名があり、
本居宣長は、これが園神だという説。

ソホリというと、日本書紀でスサノヲ尊が高天原から追放され、
新羅の曾尸茂梨(ソシモリ)に天下る。
このソシモリとソホリが関係すると言われます。

釈日本紀で、
「ソシモリとは、今の蘇之保留(ソシホル)か」
という解釈が出てくる。
ソシホルとは、現在でいえばソウル
つまり王都、金のやどる村落、市街。
新羅も、おそらく同語源(岩波文庫「日本書紀」の注釈)。

牛頭天王と蘇民将来伝説――消された異神たち


川村 湊
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川村湊さんは、さらに面白いことを見つけてて、
「蘇の村」というのは、いわゆるアジールで、
その領域に入れば、罪人もとらわれることなく、
日常権力の埒外の聖域となる場所だと。
新井白石が「蘇塗(ソト)」とソシモリの関連を指摘、
そして「蘇塗(ソト)」はアジールであり、
「魏志韓人伝」にもその意味で出てくる。

諸国各別邑有り。之を名づけ蘇塗と為す。大木を立て、鈴鼓を懸け、鬼神に事(つか)ふ。
諸の亡逃其の中に至るをば、皆之を還さず。其の立つるの蘇塗之義、浮屠に似たること有り。

−「魏志」韓人伝

追放され、旅の神となった素盞嗚尊(=牛頭天王)は、
その地に宿りを得る。
蘇民将来、蘇民将来。

韓神社の二座は、オオナムチ・スクナヒコナの、
国土開発、巨人・小人チームなんだと文献にはある。
これは、すでに、
「天王=オオナムチ、王子=スクナヒコナ」
だとわかりやすいのになと考えていたので、
たいへん都合がいい。
園神は、オオモノヌシとされています。これは難しい(・∀・)

鵺、うつほで流されるもの

鵺神社

韓神園神が祀られていたのは、
現在のNHK京都放送局のビルのあたり。
明治時代は監獄だったとか。
そして、その南隣に、鵺神社の小さな祠がある。

鵺とは、平安後期のいずれの帝の御時、夜な夜な宮中に現れた怪鳥。
源頼政が、頼光伝授の弓で射ち落とす。
その血を洗った池と、鵺神社が、NHKビルの南に整備されています。

鵺は、その後、うつほ舟で淀川に流される。
流れ着いた場所で、荒神となって祟ったとされる。

この「うつほ舟で流され、流れ着いた先で荒神になる」というのが、
秦川勝の伝承と同じ
川勝もうつほ舟で流され、流れ着いた赤穂の坂越で、荒神となった。
そして、祀られて、能の祖神となります。
そもそも早良親王が、淡路に流される途上で餓死し、
怨霊と化して、平安遷都の原因となったのですが。
早良親王を支持していた勢力のことを思うのです。

「鵺=川勝」を演出し、平安京の底に、
秦の切り開いた地があり、その神の祟りのあることを
隠然とほのめかし、しかも「鬼=鬼退治」な位置につこうとする力。
能の岸辺に、それは流れ着いていく。*3

」は、世阿弥の作中でも出色の能。
物語は、旅の僧が一夜の宿を乞うところから、始まる。
(ここにも蘇民将来型が!)
蘆屋の里の地元の者に頼むと、
掟があってそれはできないと断られる。
「その代わり、あそこにあるお堂に泊まるがよいでしょう。
ただ夜な夜な妖怪が出没するかもしれません」
その妖怪が、討ち取られた鵺の亡霊。
鵺はここに至るまでの物語を語り、
僧の読経で、和泉式部を本歌取りしつつ、海に没する。

頼政は名を上げて、われは名を流す空舟に、
押し入れられて淀川の、よどみつ流れつ行末の、
鵜殿も同じ蘆の屋の、浦曲の浮洲に流れ留って、
朽ちながら空舟の、月日も見えず暗きより、
暗き道にぞ入りける、遥かに照らせ山の端の、
遥かに照らせ山の端の月とともに、海月の入りにけり
海月とともに入りけり

ー謡曲「鵺」(世阿弥・作)

鵺池に涌く井

鵺の池には、井形が組まれ、水がこんこんと沸いていました。
石は古いものと見え、いつから置かれたものか。
鵺神社の祭神は、鵺大明神,玉姫大明神, 朝日大明神。
天王、はり采女、王子の聖家族。

それからの園神韓神

醒ヶ井の観音寺

園神韓神は、文徳帝の齋衡二年(856)、
「名神」というもっとも霊験の
強力な神社の列に入れられたのに(「文徳實録」)、
現在は行方不明といってもいい状態。
のちに、韓神園神の三座は、
醒ヶ井高辻下ルに、ひそやかに移されたらしい。
観音寺に三宝荒神として祀られるものの、
韓神園神であったことは、ほとんど誰も知らないようです。
誰がいつ移したのかも、はっきりしない。
観音寺の人も、ここが園韓神社であったことは
知らないそうです。

このあたりには、道元禅師示寂の地があり、
また三善清行が退散させたお化け屋敷のあった場所。
今昔物語集・巻27「三善清行宰相、家渡語」。
あれはホラーでもほら話でもなく、何か事実をほのめかしたい。

今は植柳小学校になっています。
植柳小のよい子のみなさん、そこはお化け屋敷跡です。

清行が追い払ったお化け軍団は、
神泉苑の南のあたりに新たな住居をゆるされる。
醒ヶ井→神泉苑
この動きが、韓神園神とちょうど逆であることが、
大いに気になるところ。

どのような勢力が、それを行っているのか。
「お化け」とは何者なのか。
三善氏は百済からの渡来系。
三善清行(善相公)こそ、京の表と裏をつなぐ、後ろ戸
清行の息子は、修験の超能力者・浄蔵貴所で、
一条戻り橋で父を蘇らせる人。
そういうあたりでつながりあっている。
道元の勢力もそうなんだと思う。建仁寺は五条清水。

韓神園神を祀っていた人々の末裔は、
やがて祇園さんや天神さんの担い手となって、
この神さまたちを別な形で復活させたように思えます。

次回は、平安京以前の神泉苑界隈を妄想してみます。
たぶん「粟々(あわわ)」と呼ばれていた地。

岩神が祀られ、それはハリ采女をあらわすもの。
…さらに憶測度アップか(* ^ー゚)ノ


¶ Footnotes:
  1. 牛頭とは呼ばれてなかったかもしれない。
    この名前の文献登場は、わりと新しいから。
    牛には関係していただろう。
    天王とか、天神・天使とは、
    呼ばれていた可能性がある。
    すると、天皇とダブってしまうので、具合が悪い。
    そこで、韓神というよそよそしい一般名で呼ばれていると。 []
  2. 7世紀には聖徳太子のバックボーンであり、
    8世紀においてもまだまだ強い。
    播磨や近江とも結んだ広域ネットワークでもある。 []
  3. 祇園祭や道真天神信仰も、この隠然たる力の、
    別な形の発動であるかもしれない。
    怨霊というものが、この系譜そのものであり、
    御霊神社に祀られるのも八柱、
    韓神ソホリ神を含む、年神たちの系譜も、
    八の倍数で子孫を増していく。 []

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  1. 岩神、大井子、あははの辻。 | AZ::Blog - 2008/09/05 Friday 18:56:47

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