群馬のお菊さん
柳田国男は、ふつうの研究者が何年もかけて取り組むような主題を、あっさり数行でやっつけてしまうことがしょっちゅうあって、「先生、勘弁してけろー」な気持ちにさせられるのですが、皿屋敷についてなら、こんなことを書いています。
小さい例でいうと番町の皿屋敷、あれは私などのくにでは播州皿屋敷といい、現に井戸もありお菊虫もいる。口拍子が似ているから作者があって、番町の方へ捲き上げられたものと皆考えている。ところが同じ言い伝えは土佐の幡多郡にもあり、また長州にもある。…そうすると関東方は頗る歩が悪いように思われるが、何ぞ知らんや上州妙義山麓の小幡一族には、ちゃんと足利時代からの同種口碑があって、信州松平藩の小幡家をはじめ、この一門の移住先では多くその怨霊を祀っていた。主人または主婦が惨虐で、召使の美女が怨みを含んで死んだという点は皆同じで、おまけにその幽霊の名は必ずお菊であった。
柳田国男「伝説」
- 柳田国男全集〈11〉民謡覚書・妹の力・伝説
- 著者: 柳田 国男
- 出版: 筑摩書房
- 価格: ¥ 8,190(古: ¥ 3,600)
- 発売日: 1998-05
- ASIN: 4480750711





