QnapShots #067 「月と鳥居」

written by overQ

バンクーバーオリンピックのシンボルは、イヌイットの石の道祖神「イヌクシュク inukshuk」。「ᐃᓄᒃᓱᒃ」という、イヌイットのつづりが、ちゃんと表示される。
イヌクシュクは、日本の道祖神と同じもので、道標であり、境界をしめす指標であり、旅人の守り神であり、外敵の侵入を防ぐもの。
このようなものは人類普遍らしく、ハイチのブードゥーで最初に召喚される十字路の神ロアは、やはりこの手の神さま。
ヘルメスもこの神の別の名前であり、千の名前を持つとか、千の顔を持つとか、こことそこに偏在するとかいう属性も等しい。

この神は閉ざされた門であり、門の前で逡巡していると、いつの間にか門の内側に閉じ込められていたり、門の中で安心しているつもりが、それはわずかに第一の門に過ぎず、無数の門が続くと冷水を浴びせられる。
入ることと出ることが同じであるという意味で、これは迷路の簡明な定義。
壁づたいにめぐるうちに砦の中へ導かれたり、完全な密閉のはずが内部に無限を抱えたりする。
この矛盾によって、内と外、敵と味方、鬼と神との区別そのものをなくすことで、難攻不落の城塞、破られぬ信仰となる。

「鳥居」もまた、そのような神の基本的な在り方(=無い方)を示したもので、魔をせき止める結界であるかと思えば、魔を呼び寄せる磁場でもある。
月は東に日は西に。しかし、宇宙には東も西もなく、中心は偏在する境界だという。ᐃᓄᒃᓱᒃ


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